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E
Episode@R4さん (80gnvfnc)2021/9/30 12:15 (No.5393)削除
【エピローグ】


これは夢か。それとも現実か。
無数の本をただ一つの壁一面に飾ったその空間は、やけに無機質で、頭上のどこまででも続く壁の本棚に終わりは見えない。そして下も地の果てを見るようで底は見えず、横もまた遥か彼方までどこまでも続いている。
『二人』がいるのは、そのおかしな場所のどこかにある、コンクリートの床に、同質の柱が数本立つ謎の冷たい灰色の空間だった。
灰色の空間の中心では、透明な液体にも似た繭のような何かが青紫の球体を覆い尽くしている。その中を青紫の球体は苛立たしげに暴れまわる。
『クソ!無能の分際で俺をこんなところに入れやがって!!出せ!!』
叫ぶ青紫の球体──フォーリナーは怨嗟を正面にいる男──エピソードへ向けて吐き出す。
だがエピソードは表情を変えることなく、静謐さを宿したまま眉一つ動かさず、ノートに何かを書いていっている。鉛筆握るエピソードはノートに何かを刻み、それが埋まればまた別のページに黒を刻む行為を繰り返した。
それは記述する呪文だった。ノートに記された呪文からはぼんやりと魔力が浮かび、細い透明な糸になって手繰られていき、寄り合わされて編まれ、フォーリナーを囲む繭に組み込まれていく。
それが更にフォーリナーを苛立たせたようで、球体が液体の中で縦横無尽に巡る。しかしどう頑張っても透明な繭から出ることは叶わず、動きを止めれば中心に戻されていた。
『何だよこれ……!おい無能っ、なんだこれは!お前、俺に何をした!』
質問に答える気配もなく、鉛筆はノートを走り続ける。やはり無言を貫こうとするエピソードに、フォーリナーは怒声で催促した。
『シカトしてんじゃねえぞゴミィ!』
「……うるせえぞ、魔眼」
痺れを切らしたフォーリナーに対して、エピソードは答えてやらないと面倒そうだから、と気だるそうに軽く息を吐いて答えた。ただその間も鉛筆は止めることなく、ノートの真白に呪文を刻み続けた。
今まで無言だった彼からようやく反応が返ってきたことをフォーリナーはチャンスと見たらしく、エピソードに矢継ぎ早に語りかける。
『おい、ここは何なんだよ!この繭みたいなやつはなんだ!結局俺たちはどうなってるんだ!』
その早口な質問に、エピソードは溜め息を吐いた。仕方ないな、と、鉛筆でノートに魔術の素を書き続けながら、ゆっくりと唇を動かしてやる。
「……ここは、僕の頭の中だ。精神空間と言ってもいい」
『精神空間?』
「ああ。この世界は俺の頭ん中が可視化できるようになった世界なんだよ。……で、僕たちはあの銃弾を受けた後、著しくオドを失った。それはお前もわかってるだろう」
『チッ、あの髭面……忌々しいが……あの銃弾が決め手になったのは確かだ』
エピソードは軽く頷いて、また語りだす。
「結局、シグルドのお陰で完全な枯渇の前に銃弾は摘出された。けど、その瞬間から、生物の本能としてお前と僕は僅かに残されたオドを取り合った」
一拍。
「……そしてその綱引きの結果、ギリギリでオドが僕に傾いた」
エピソードの言葉に、フォーリナーが怒りを露にして噛みついた。
『あァ?そんなわけあるか!お前みたいな奴に俺が負けるわけねえ!』
透明の中で暴れる青紫の球体が言ったその言葉に、エピソードはドライな嘲笑を与えた。
「いや、お前が今身動きを取れていないのが何よりもの証拠だ。……だが残念なことに僕も僅かなオドしかないから目覚めるまでには至らず、こうして精神世界でお前といるってわけだ」
『……クソが』
フォーリナーは吐き捨てる。それを知らん顔して、エピソードは言葉を続けた。
「そしてその透明のやつだが……封印術だよ。僕がなけなしのオドを編んで作ってるだけだ」
『生意気だぜ、こんなのすぐに破れるだろうが。お前如きの魔術なんてたかが知れてる』
「破れるなら破ってみろよ。少なくとも現実世界であと五年はそのままでいてもらうぜ。時間はたっぷりあるから頑張れよ」
『冗談じゃねえ!今すぐにでも破ってやる!』
それから数分ほど、フォーリナーは透明な術の中で内側から突き破ってみようと格闘していたが、果たしてそれが叶うことはなかった。そしてフォーリナーは気付く。その透明な術の糸は、蜘蛛の巣のように編まれた魔力の糸で何百、何千、何万もの層に覆われていることに。
『なんだ、この密度は……!』
フォーリナーの腹立たしげな言葉にエピソードは笑った。それは自信の現れであり、己がしたことを知っているからこそのそれであった。
「当然だろ。もう体感で五十年は編んでるんだからよ」
フォーリナーは絶句した。正しく呼吸が止まったかのように、言葉を詰まらせた。
『五十、年……?そんな、ことがあるわけ』
「そんなことがあるんだよ。……お前の目が覚めたのはさっきだが、僕にはオドが傾いた瞬間から自我が確かにあった。お前がいびきこいてる間に僕は幾らでも編めたってわけだ」
『五十年だぞ!?現実世界で五十年も経っているなんてそんな、こと──』
「──誰が現実で五十年って言った?」
『あ……?』


「──現実では一日しか経ってないぞ」


またも空間に沈黙が刺さった。
エピソードの言葉が意味するのは、途方もない時間がここに満ちており、満ちることになるということだった。
先程エピソードは「少なくとも現実世界で五年はそのままでいてもらう」と言った。
つまり一日が五十年になる精神世界で、現実世界の五年というのは……九一二五〇年。気が狂うような時間、ここにいなければならない。
気の遠くなる数字に、流石のフォーリナーも震えた。
『馬鹿を言うな、そんなの精神が持つわけない!お前が廃人になるようなものだぞ!?』
「そうだな。だけどテメエに地獄を味わわせられるなら安いもんだろ」
恨み、嫌悪、怒り。様々な感情がエピソードにそう言わせた。自分などいいからこいつを苦しめたい、と。
『イカれてる……』
呆然とフォーリナーが呟いた言葉に、エピソードはニタァ、と笑って、嗤った。
「まともでいれるかよ。悪いが、付き合って貰うぞ。最低でも九万年、最長はどこまでいくだろうなあ?」
意地悪い笑みに、フォーリナーはそれが本気なのだと確信し、焦りを生み出す。
『ふ、ざけるな!さっさと出せ!今ならテメエの体から因子を俺の手で切り離してやる!いいからこの術を解けェ!』
「あはははははは!んなことするかよバーカ!僕と一緒に地獄旅行だ、精々楽しめよ」
《あ、じゃあ私、旅行のしおり書くねー!》
「うん、頼む」
《どういうスケジュールにする?とりあえず一ヶ月同じのを繰り返して次の月で変えるかんじでいい?》
「ああ、いいんじゃね──?」
エピソードはそこで、今まで決して止めることのなかった鉛筆を持つ手をようやく止めた。違和感。今自分は誰と話していた……?
あまりにも自然に会話に入ってきたから気付かなかった。しかもここはエピソードの精神世界だ、エピソードとフォーリナーしか立ち入れないはずなのに。謎の声に、思わず振り返る。


振り返った先には、青い靄があった。
真っ青なのに透明で、歪んでいるようで整然としていて、霞むようで輝くような、青いそれ。一切人の形をしていないものの、今それがエピソードに向き合っていて、エピソードを見ていることは直感的に理解できた。
それはゆっくりと優しく、高い、女性のような声音でエピソードに語りかける。
《驚いた?》
驚いた。だが、不思議と不快感はない。むしろどこか安心するような雰囲気の青だった。
エピソードの言葉を待たず、青は続ける。
《まぁ驚くよね、いきなり出てきたわけだし》
まるで水のようにエピソードを包む優しい声音に、エピソードはゆっくりと目を細めた。
《でもこれだけは言っておこう。まだ君には九万年の旅行は早いよ》
「は……?」
瞬間、ズズ、という唸るような音と共に青の背後がぱっくりと開いた。
開いた先には、夜があった。いや、夜ではあるが夜では済まされないほどに漆黒の闇は冷たく、身の毛もよだつほどに直感的に忌避する空間の中身。そして何よりも、こちらを見ている得体の知れない何かの纏わりつくような視線。
エピソードは、それを知っている。アストランティアの"走ってはいけない廊下"の続く先。


「虚界──!?」


かつてあのサーリス・ぺドゥンが案内したおぞましい世界。決して人が立ち入るべきではないあの世界が、ぱくりと漆黒の口を開けて待っていた。
呼吸や思考やおおよその活動全てが止まるのを理解しながら、エピソードは指先まで完全に硬直する。動けない。動かない。なんで、いきなり。
そして。光を歪めるほどの無数の漆黒の『手』が開いた口より這い出てくる。エピソードの精神世界を、ゆっくりと、泳ぎながら、着実に、進んで、いる。進む先は、行く先は、エピソードの方向。
理解を拒もうとするものの、やっぱり理解する。完全に終わった。ここで、終わり。あの手に引き摺り込まれてしまうのだ。
諦めたくはない。だが体の一切が恐怖で微動だにしない。
無数の手は行く。空間を舐め尽くすように這い廻りながらエピソードを掴む──


──ことなく通りすぎて彼の背後にあったものを掴んだ。
無数の手が掴んだのは繭に閉じ込められた青紫の球体──フォーリナーだった。
『なんだ、何なんだこれは!?』
元々概念の一部であるフォーリナーも、それを流石に直感でヤバイと感じたのだろう、彼らしくない震えた戦きの声を上げて自分に起きていることを必死に理解しようとする。
しかし無数の手は残酷に、何も語らぬまま絡みついて封印術の繭ごと、フォーリナーを掴み漆黒の世界へ引き摺っていく。それを害する動きは誰も行えない。エピソードもフォーリナーも、一切動けないのだから。
エピソードの頭上を、フォーリナーが通りすぎた。
『おい、助けろエピソード!このままじゃヤバイ!』
とは言われても、エピソードだって体が動かないのだ。そもそも助けるつもりなどないが、指一つ動かすこともできない状態だから、それに口汚く反論することもできない。
『頼む!今までのことは謝る!そうだ、これからはお前の手足として働いてやる!だから助けてくれ、な!?頼むぜエピソードォ!』
繭は空間を引き摺られ、遂に繭が漆黒に触れていく。スピードは速くない。だがそれは確かにしっかりと繭を飲み込んでいく。
フォーリナーが自分の危険を理解し、悲痛な声をあげた。
『助けてくれ!助けて!エピソード!お願いだ!悪かった!ごめんなさい!だから助けて、助けてください!嫌だ、ここは嫌だ、やめて、やめてくれ、』
そして、
『助け』


──バクン。
繭と青紫の球体を全て飲み込んだ瞬間、虚界の口はいとも簡単に閉じた。
精神世界のコンクリート空間には、安堵から脱力しきったエピソードと青い靄だけが残っている。ただ青い靄は口の開いていた方向を見てけらけらと子供のように笑っていて、
《見たかよあいつ!最後には『助けて!』だって!あははは!》
エピソードもフォーリナーの終わりに笑いたい気持ちはあるが、流石に今はそんな気力も起きない。というより、自分が生き残った安心の方が強かった。
けらけらとひとしきり笑った青は、改めてその前後があるのかもわからない体でエピソードに向き直って、言葉を投げてきた。
《エピソード、君と魔眼の因子の接続は、今のあれで完全に切れた。君はもうあれに悩むことはないんだぜ。流石に概念の因子とはいえ、虚界では無力さ》
「え、意味が……」
《そして君はもうすぐ目覚める。待ってる人たちがいるんだろう?九万年も旅行してる場合じゃないって》
「ちょ、ちょっと待ってくれ」
《いいや、待ってる暇はない。ほら、精神世界も少しずつ霧散していってる》
早口で語ってくる青が指し示した方向には、遥か彼方まで続いていた壁一面の本棚が、風に吹き消える霧のようにバラバラと散ってなくなっていく光景があった。それは頭上を行く壁も、地下まで続く本棚も同じで、消滅はどんどんとエピソードに向かって進んで来る。
だがそれに先ほどのような恐怖はない。むしろ穏やかで、波一つない水面のようですらある。
《君はよくやった。だから私は手を貸したんだ、まだこれからもしっかり頑張ってくれよな》
遂に消滅は灰色の空間にまで到達し、コンクリートの足場もコンクリートの柱もばらばらと消滅していく。
エピソードはその前に、青に向かってせめて聞かなければ、と手を伸ばした。
「待って、君は──!」
伸ばした手の指先が消える。遂に消滅が体にまで到達し、体が霧散するように消えていく。
それでも最後にエピソードが投げた言葉を青は拾って、答えてくれるのだった。
《私?私は──》

────
───
──


白い天井が視界に入った。ばか騒ぎした結果大怪我をしていつも見ている、見慣れた医務室の天井を見上げながら、エピソードは周囲を見回す。
朝だろうか、明るい世界に小鳥の鳴き声が満ちている。なのに医務室には人っ子一人いなかった。いつもならいるだろう包帯を全身ぐるぐる巻きにされが患者や、忙しなく動く看護師や、酒に酔った養護教諭や、常駐する具合の悪そうな医師も、誰一人としていない。ふと近くの机を見ると『会議に行っています』というメモ書きと花瓶に青い薔薇が残されているだけ。
目に刺さる光を鬱陶しく思ってベッドから立ち上がったとき、自分の目がしっかりあって、世界を認識していることに気付いた。白い天井も、窓の外の景色も、ベッドの個数も何もかもが見えている。近くにあった鏡を世界記録に挑む速度で引ったくって、自分の顔を見た。
ある。魔力の一切宿らない橙色の目。魔眼じゃない、いつもの自分の目。鏡の中の橙色と目は合い続けている。
その瞬間、自分に何が起きていたかを理解した。
そうだ、僕は。
だから、いてもたってもいられずに医務室を飛び出して走り出した。
走る。廊下の途中で看護師とぶつかりそうになった。ギリギリで回避した後、背後から制止が聞こえるが構うものか。
走る。中庭を全力で走り抜けたものだから、転びそうになりながらも何とかバランスを取って足を前に出し続ける。
走る。途中見知った生徒たちが驚いたような顔を見せていたが、彼を理解したのだろう、何も言うことなく誰もが微笑みで見送っていた。
走る。
走る。
走る。
会いたい人がいる。どうしても会いたい。ここで死ぬつもりだった。もう会えないと思っていた。色んなことを言いたい。会って話がしたい。何もかもを君に言わなくちゃいけない。
だから。
だから。
だから!
エピソードは走る。最愛の人に、会うために。


────
───
──

「待って、君は──!」
消え行く彼を見ながら、私は告げる。
これは言わなくてもよかったけれど、まぁ聞かれたのなら名乗っておこう。
私?私は、
《私は、アストランティア》
それをちゃんと聞き届けたのだろうか、その瞬間に彼の精神世界は、彼ごと消滅した。
私も強制的に『いつもの場所』に揺り戻され、その学舎を見下ろしていた。
《魔術があるんだから、奇跡くらいあるんだぜ。エピソード》



雲の上。
空の中。
その学舎はある。
名を──アストランティア魔術大学。
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E
Episode@R4さん (80gnvfnc)2021/9/29 22:47 (No.5378)削除
【Sigurður編】

【Foreigner@???】
(夕暮れ時だが世界には色は薄く、鈍色の雲が空を覆っていた。雨が降っている。アストランティアの街はその雨に拐われたのか、人はまばらで、まばらな人々も傘を差して行くべき場所へと急いでいた。その中をフォーリナーは傘も差さずに歩くため、すれ違う人々からは訝しげに見られ、その後に悲鳴をあげたりすぐに目線を逸らされてフォーリナーを避ける。それは彼の顔に白目も黒目もない魔眼が5つもあり、首には3つの目がぎょろりと世界を睨んでいるからだろう。だがフォーリナーはそれをおかしいとは思わず、むしろ気にした様子もなく一つのショーウインドウの前で立ち止まって、不意に『それ』を見た。ド女性モノのドレス。どこか『誰かの目』を彷彿とさせる色味を見て数秒の後、心臓が裂けるような痛みがフォーリナーを襲った。呻いて、たたらを踏む。水浸しの道に倒れることも厭わず、フォーリナーは荒い呼吸をしながら曇天を見上げた。)
『はあ、……くそ、接続点を斬るなんて器用なことをしやがって……くそっ』
(まだ動悸のおさまらない心臓を服の上から叩いて、彼はまた立ち上がる。ようやく魔力で切断された右腕が癒えたが、本調子とは言えない。それが余計に苛立たしくて、両の手のひらに形成された紫の魔眼が道路をめくりあげて粉砕した。)


【Sigurður@D3】
(鉛のような鈍色の雲が重く垂れ込み、暮れていく天を塞いでいる。頭を抑え込まれるような閉鎖感と、降り頻る雨の強さを外套越しに感じながら、シグルドは曇天の中を歩いていた。外気に晒された髪は濡れそぼり、月影のような艶を帯びている。同じ色をした瞳に炎が灯り、中空に曳く赤色の残光が、風の吹くたびに僅かに揺れていた。)
「一つ、聞かせてくれないか」
(捲り上げられた石畳を躱して、シグルドは貴方の目の前に姿を現す。ほの暗く降り込める大雨の中、石畳に打ちつけられる滴の飛沫く音に掻き消されることのない、圧力を伴う芯の通った、それでいて吹雪のように低く唸るような声が、彼我の間に開けられた少しの距離を通り、あなたの耳に届くだろう。)
「貴様は、エピソード先輩に巣食う何かだ。俺の瞳が、そう伝えている、名前までは分からんが」
(ひと際強く、そして鋭く風が吹き抜ける。翻る外套を突き破るようにして、黒々とした大翼が広げられた。左の拳に握り込まれたルーン石が魔力を帯び、握り締められた拳から四方へと赤色の光芒が放たれる。右手に携えた魔銃を真直ぐに貴方へと突き出して、シグルドは噛み切るように言葉を続けた。風に煽られるようにして、焔の瞳が猶も燃え上がる。)
「────……では。墓石には、何と名前を刻めばいい?」
(引き金を引く。魔術によって構成された魔弾が、貴方に向けて飛来する。 @Foreigner@???


【Foreigner@???】
(目の前にいる。黒い巨大な鴉とも見紛う黒い男が、目の前にいる。彼もまた傘など差さぬまま濡れそぼり、僅かな太陽の光が反射して、紺にも漆黒にも見える。だがその中にある赤い灼眼は炯々と輝き、フォーリナーの中すらも見据える。男は言う。「一つ、聞かせてくれないか」と。男は言う。「貴様は、エピソード先輩に巣食う何かだ。俺の瞳が、そう伝えている、名前までは分からんが」と。男は言う。「────……では。墓石には、何と名前を刻めばいい?」、と。フォーリナーの右手が魔弾にかざされる。手のひらの魔眼は、緑だった。その魔術を吸収し、フォーリナーはずぶ濡れのままに目の前の貴方を見つめた。)
『あァ……そうだなァ』
(両目が黄金に。顔の残りは黒に。右手は緑に、左手は紫に、首は赤に。手加減したら死にかけるってこの間知った。だから、最初から全力でいく。視神経が焼き切れようとも、目の前の男を殺す。今のフォーリナーにはそれだけだった。)
『テメエの名前でも刻んでろよ』
(フォーリナーが爆裂する。一瞬でオドの密度が上昇したことから、周囲に降っていた雨すらも放射状に弾ける。威力の化物となった雷撃の魔術が渦を巻き、呪詛が荒れ狂い、圧力が押し寄せ、歪みが空間を潰そうとするだろう。すべての魔眼は他の誰でもない貴方に向けられ、簡単に貴方の命を狩ろうとするだろう。雨は地面を打たず、周りの街並みに叩きつけられていた。)


【Sigurður@D3】
(小手調べに放った魔弾は、事もなげに吸い込まれた。別段、驚くことでもない。彼の保有スキルの一つである「危機察知」が、彼の本能に警鐘を鳴らしている。早鐘を打つような鼓動の高鳴りが、己が死地に挑んでいることの証左であった。鋭い吐息を一つ、前方に一歩を踏み締めて、彼我の距離を縮める。)
「もう、刻んでいるとも」
(己を見る魔眼が、一斉に色を変えた。人ならざるものが備える、尋常ならざる魔力を帯びた瞳が、獲物を狙う猛獣の様に此方を睨んでいる。脳裏を焼き焦がすような強い衝撃は、貴方の魔術に寄るものではない。更に跳ね上がった危険度に対して、危機察知が必死に迫り来る死を伝えているのだ。あるいは痛みすら伴う予感を受け止めて、シグルドは左腕を突き出した。開かれた掌の内から、赤に輝く滴のような形をした宝石が零れ落ちる。)

「《Það kann eg ið þrettánda》」

(オドの高まりに爆ぜた空気に追随して、シグルドへと襲い掛かる数多の魔眼の暴威。おおよそ熟練の魔術師でも簡単には成し得ないような威力は、確かにシグルドの身に打ち付けられ、そして滑るように後方へと逸れていった。氏族長の間でのみ伝承される神話の一説、「十八の呪文歌」の一つである守りの歌の、古語による詠唱。入学以来、三年を掛けて緻密にオドを流し込み続けた秘蔵のルーン石の完全開放。彼の奥の手、あるいは切り札とも言える二つを切って、死の奔流のごとき攻撃を擦り抜ける。その流れに逆らうようにして、彼は前方へと跳躍した。濡れ鼠による身体強化を受けて、渡鴉の黒翼が羽搏き、爆ぜるように貴方へと接近する。)

「高くつくぞ、これは……《Það kann eg ið tíunda》ッ!」

(再び、古語による詠唱。貴方へと突き出した掌が、その腕に刻まれたルーンのタトゥーが光り輝き、次なる魔術を発揮する。第十歌、退き。魂に巣食うものを追い出し、再び戻ることを拒む魔術である。 @Foreigner@???


【Foreigner@???】
『刻んでるなら墓の心配はいらねえなァ!』
(間合いを一気に詰める黒い鴉に、魔眼の全てが当たって、滑り抜けた。彼の背後で馬鹿げた威力の爆発が起き、鴉羽のような外套が僅かにたなびき、男の翼がまた羽ばたきを創造する。接近する漆黒は疾風のようですらあり、その中で魔術を組み立てているのだから恐ろしい才能だ。戦闘に全振りしたような能力値には相当な努力が垣間見え、敬意を持たざるを得ない。男の手に魔術が迸る。手が伸びる。魔眼がアラートを鳴らし、絶対に当たるなと言ってくる。貴方の魔術師としての力に敬意を。だが──)
『『玉石金剛六星剣』ッ!!』
(彼が宿るエピソードもまた魔術を学ぶ者なのだ。呪文の詠唱を略式でショートカット、かつ高速詠唱で本来ならば3秒かかるところをほぼノータイムで放とう。厚さ1メートル、幅5メートルの両刃の直剣がフォーリナーと貴方の中間から岩壁の如く出現しよう。ちょうど手が当たるか当たらないかのラインだ、運が悪ければ貴方の腕は下からの突き上げをもろに喰らって骨が折れるかもしれない。)
『俺もこの世界を見て色々わかったよ。手を抜いたら俺が死ぬ。どうやらこいつを使うとみんな怒るらしい。なんでかはわからないがなァ』
(乾いた笑いは、雨のせいかどこかじっとりとした感覚を覚えるだろうか。黄金を装填していた左目は白く流動し、壁越しであろうとも貴方を見ている。右目には再度黄金が装填されている。全ての魔眼は、変わらず貴方を見ている。)


【Sigurður@D3】
(再び、脳裏に焼きつくような直感が迸る。保有スキルによって支援された略式かつ高速の詠唱、突き刺すような感覚が指し示すのは眼前、下方。程なくして地面より突き立った岩壁のごとき両刃の直剣に、咄嗟に腕を引き戻す。両の翼を広げて空気を抱き、空中での静止を試みた。が、助走をつけた前方への跳躍の勢いには抗い難く、左手は跳ね上げられて指の骨を砕いた。)
「厄介、だな……ッ」
(強かに岩壁へと身体を打ち付けて、ようやく勢いは消え失せる。雨に濡れて冷たくなった左手に、鋭い痛みと強い熱を感じる。それ以上に熱く、絶えず燃え滾るような何かが、彼の“焔の眼”の中で激しく蠢いていた。シーグルズル・フラプンナル・ソルヴィンソンという男が滅多に見せることのない、烈火のような激情の揺らぎ。)
「……貴様が、その人の身体に巣食うのは勝手だ。────……共生という言葉もある。本来、俺が干渉すべき領分ではない」
(指先の砕けた左手を、腰に吊り下げた斧の刃に当てがって、躊躇いなく掌を滑らせる。深く切り裂かれた皮と肉は、その内から目の冴えるように鮮やかな血を滲ませるだろう。なかば噴き出すように鮮血を零す掌を握り、いびつな形をした拳で岩壁を叩いた。保有スキルによって強化された獣人の尋常ならざる身体能力は、確かに岩壁を揺るがしたことだろう。然し、彼我の間を隔てる障壁を取り除くには至らず、ただ砕けた岩の欠片が、雨に混じって降り落ちていく。)

「だが。その体で、誰かを害することは、許し難い。────……彼は。きっと、それを悔やむッ!」

(シグルドとエピソードは確かに知り合いだが、決して親しい間柄ではない。寮も学年も異なり、お互いに認識したのもつい最近、友人と言えるかさえ定かではない間柄だ。それでも、たった今砕けたこの左腕を癒したのは、紛れもなく目の前の彼である。

「《sól/陽》、《íss/氷》《þurs/巨人》……────」

(殴りつけた拳が、岩壁にルーン文字を刻み込んでいく。眼の冴えるような赤をした血は、魔術紋様としての形を帯び、そして赤色に光を放つ。拉げた五本の指で無理矢理に爪を立て、岩肌を書き毟り、吐き捨てるように呟いた。)

「……────立て、《jǫtunn/ヨトゥン》」

(そして、岩壁は姿を変える。岩肌はボロボロと崩れ落ち、隆起は筋肉めいて有機的な形を帯び、二足で立つ巨大な人型となって、貴方を握るように手を向けるだろう。魔力の通う岩肌は強度に優れ、また刻印されたルーンを潰さぬ限り機能を損じることもない。多くのオドを吐き出したシグルドは、猶も鋭く貴方を見据え、魔銃を構えていた。 @Foreigner@???


【Foreigner@???】
(壁を殴る音が聞こえる。不規則で、それでいて力強い音が。……男は、彼は、この体を使って誰かを害することを許せず、またエピソードはそれを悔やむと言った。よくわからない。何故害をなされていないこいつがそれを許せず、俺がしたことを宿主が悔やむ?理解ができない思考経路に苛立つ。なんだその理由は。なんだその思考は。なんだその概念は。何故。何故。何故!──お前は泣いているのだ、エピソード。)

「うぅ、ごめんなさい……ごめんなさい……」
『何故謝る』
「俺が、弱いから、みんなを傷つける……みんなを悲しませる……俺が、お前を制御できてれば」
『不可能なことを描くな、無能。お前はただ俺の体になっていればいいのだ!』
「黙れ!お前はなにも知らない!お前は何も!お前は!」
『何を知らないと言うのだ!』
「決まってる。「───」だ!」

(ザザ。ノイズが走る。1秒にも満たない『本体』との会話は、本来ならば起きないはずのイレギュラーだった。何故こんなものが。フォーリナーはハッとする。……あの風の男の剣か!接続点に切れ込みを入れたことでエピソードと会話をできるように。クソ!!思考が乱れる。開いた目のその向こうにいたのは、二足で立つ巨人だった。岩を再利用して、こんなものまで出すなんてこいつも相当な化物じゃないか。ゆっくりと、それでも確かなスピードで巨人の手が伸ばされる。今からでは避けきれない。顔の五つの目を全ての歪曲に変換。空間が歪むほどの超出力を持って巨人の腕をねじ切ろう。ぜえぜえと息をしながら、フォーリナーは貴方を睨み付ける。)
『何が、何が「絆」だ。そんな目に見えない不確かなもの、信じる価値もない!信じる意味もない!そんなもの!そんなもの信じて何になる!……そうだ、俺はただ一人でも強い。こんなにも!世界を終わらせるくらいにッ!!』
(出力が更に上がる。本来ならば昏倒しているであろうレベルのオドがフォーリナーより放たれる。魔眼は貴方を、世界を睨み付ける。──はずだった。)

(突如として魔眼の出力が落ちる。それこそエピソード本人のオドの量にまで下がり、2つの両目を残して全ての魔眼が閉じた。『なんだ……?なんだ、何が起きているッ?』。あ……?何故だ。何故!?)

(『体の所有権が半々になっている!?』)

「撃てえ!シグルド!撃てえ!!」
(叫んだのは間違えようもなく、エピソードだった。その目を見ればわかるだろう。あの無人島からの夕日を思い出させるオレンジ色の双眸を見れば、貴方はわかるだろう。)
『やめろ!そんなことをしたらお前も死ぬぞ!』
「うるせえ!俺は!俺は──!」
『やめろ、やめろぉおおおおおおお!!』

「シグルド!!撃てええええええええ!!」
(エピソードは叫んだ。力の限り。)


【Sigurður@D3】
(掌から流れ出る血より多くの何かが、己の内側から失われていくように感じる。急激に視野が狭窄する、骨の髄から滲み出る強烈な虚脱感が、その場に立ち続けることさえも億劫に感じさせる。突然かつ急激なオドの消費、本来彼の力量では満足に扱うことの出来ない魔術を半ば無理矢理発動したことによる、強烈な揺り戻しの発生。石畳に落ちた雨粒が飛沫く音でさえ、早鐘を鳴らすように脳内で反響する。思考を支配する喧騒を突き破るように現れたのは、先程までとは様子の違う貴方の声色だ。ゆらり、蛇が鎌首を擡げるように持ち上げられた両の眼は、赤い残光を曳いて真直ぐに貴方を見据えた。貴方の物語を聞きながら眺めた、水平線へと沈み行く陽のような、橙の瞳を。)

「────……心得た」

(拉げた指先を腰の雑嚢に突き入れて、その中に収められた小瓶や小刀を搔き分けて、一つの球を取り出した。殻に蔽われた胡桃のような形に、苔むした小石のような見た目をした、或いは巨大な種のようにも見える何か。器用に掌の中で挟まれ、表面を生暖かい血で濡らしたそれを、魔銃の銃身へと叩き込んだ。鋭く、そして深く、肺の中の全ての空気を入れ替えるように、息を吐き出し、吸い込む。)

「────……《Frá töskunni sjáiđ ūiđ sterka og hátignlega útlitiđ/その樹は、力強く、雄々しく》」

(左の掌を銃身に添え、金属を用いた魔術紋様の象嵌を撫でる。血の赤に濡れたルーン文字が、一文字ずつ浮かび上がるように光を帯びていく。流し込まれたオドが共鳴し、銃身内部で螺旋を描くルーン碑文に力を明け渡す。オドが流れ込んだ弾丸は、カタカタと独りでに震え始めた。)

「《Helgir greinar eru grænar/神聖なる枝々に、緑が茂る》」

(銃身の先端を握り締め、震える魔銃をしっかりと固定する。焔のように燃え立つ両の瞳が見据え、狙い定める先は真正面。その銃口は、牙を剥く竜のように、貴方へと向けられていた。風の魔術が銃口の先に伸び、雨を分けて魔弾を遠方へと届ける路を造り出す。)

「《Ég sé það skila/私は、その還るを見る》」

(銃身の内に籠められた弾丸は、“精霊樹”と呼ばれる樹木の種である。ミュディティコの森の奥深く、大気中に微量に存在するオドを吸い上げて育つその樹は魔術適性に優れ、彼の魔銃の主材として用いられている。その種に植物の生育を促進する魔術を籠め、そしてオドを有する生物の体内に打ち込めば、それは瞬く間にオドを吸い上げて成長し、その行動を抑制するだろう。根を取り除くこと自体は決して難しくはない。それでも、肉体には十分な負担が掛かるだろうし、彼の健康次第では死に至るかもしれない。しかし、これが彼の取り得る中で、最上の手段である。引き金を、引く。)
「祈るしか、ない。か……ッ!」
(解き放たれたルーン魔術の弾丸は精霊樹の種を内包し、目の眩むような黄金色の煌きを帯びて、真直ぐに貴方へと飛翔する。


【Foreigner@???】
(黄金が駆け抜ける。それは稲妻の如く。何ものにも邪魔されることなく。──胸の中心に。弾丸の衝撃で、身動きの取れなかったフォーリナーとエピソードは突き飛ばされたように仰向けに倒れる。恐らくその瞬間に所有権がフォーリナーに傾いたらしく、悶絶しながら水浸しの道路をのたうち回った。)
『あ゛……、くそ……くそ、くそ!!あと少しだったのに!!あと少しで、俺が完全にこいつの体に定着したのに!!なのに……なのに何故!!こんな非力な、不完全で曖昧な、「絆」なんて価値のないものにィッ!!』
(怨嗟を吐き出しながら魔弾の射手である貴方を睨み付ける。そうすれば貴方は、彼の魔眼が──否、彼の体からどんどんとオドが抜け落ちていっていることに、魔弾の効果が正しく機能していることに気付くだろう。もはや魔眼すら機能していない。加えて、彼の体には木の根が纏わり付いていき、彼の行動を更に抑制する。のたうち回った彼はいつの間にか仰向けからうつ伏せになり、百万通りの呪詛を吐き出しながら腹這いで貴方へと行くか。)
『ふざけるな……殺してやる……こんな世界呪ってやる、消えろ、苦しめ、燃え尽きろ!!死ね、死ね、死ね!!……何故だ、何故だ何故だ何故だァ!!何故お前は生きていて、俺が死に体なのだ!!……許さない、こいつごと死んでやる。エピソードも道連れにしてやる!!は、ははは、ははははは!ははははははははははは!!』
(ブツン。まるで糸が切れるような音がしたかと思えば、腹這いで貴方のもとまで行こうとしていたフォーリナーは貴方に一歩届くことなくそこに伏しているだろう。)

(──さて、フォーリナーは、エピソードは死んだのか。答えは死んでいない。それは体に触れれば、微かな律動によってわかるだろう。ただしオドの量が回復していないことも同時に分かるか。正確には回復量が著しく低く、このままでは安定して目覚めるのに数年という時を経ることも理解できるだろう。何故オドの回復量が低いか。その理由を、貴方の焔の目なら見通せる。見透かせる。見渡せる。)
(エピソードが精神世界でフォーリナーと戦っていることを、貴方は理解するだろう。そのために回復する大半のオドを使っているのだと。)

(雨が降りしきる。未だ止む気配はなく、空には鈍色の雲が満ちている。雨が降る。雨が、降る。)


【Sigurður@D3】
(引き金を引き絞ると同時に、両の膝から力が抜け落ちる。崩れ落ちそうになる体を、魔術を杖代わりにして何とか留め、未だ燃え滾る焔の瞳で貴方を見る。彼の視界には、確かに零れ落ちていくオドの流れが、そして四肢に纏わりつく樹木の根が見えていた。腹這いで此方に向かおうとも、反撃の目は無いだろう。それでも、シグルドは決して気を抜かない。拉げた指先を身体に押し付けて歪みを正し、雑嚢を掻き回して新しいルーン石を取り出した。残り少ない、残滓のオドを何とか振り絞り、刻み込まれたルーンに魔力を流す。溝は薄く光を帯び、仄暗い手元を蝋燭の火のように照らし出した。)
「────……ッ。上手くいった、か」
(そして、ようやく動きを留めた彼を見て、シグルドは漸く膝を折った。胡坐をかいて捲れた石畳の上に座り込むと、溜まった水が軽く飛沫いて、とうに濡れそぼった髪を揺らした。ゆらりと気炎を立ち昇らせる瞳は、真直ぐに貴方を、その魂魄を見下ろした。水滴を滴らせる髭をしごいて、僅かに唸る。)
「まだ、終わっていない。か」
(そうと分かれば、彼の行動は迅速だった。魔銃を背の鞘へと叩き込むと、周囲にルーン石をばらまいて簡素な陣を作り、指笛を吹いて使い魔たる渡鴉を呼び寄せる。伸ばした右手は貴方の首に添えられ、そこに付けられたチョーカーを取り外すだろう。彼の両肩に、赤い目をした二匹の渡鴉が止まる。)
「彼を最も知る者を、呼んでこい。────……俺の役目は、ここで終わりだ」
(チョーカーとルーン石をそれぞれに咥えた渡鴉が天へ飛び立つのを見送って、シグルドは両膝に手をついて目を閉じた。なけなしのオドで発動された魔術が、降りしきる雨を避けていく。彼に必要な“誰か”がここに辿り着くまで、きっとシグルドはそうして待っているだろう。 @Foreigner@???
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Episode@R4さん (80gnvfnc)2021/9/29 22:47 (No.5377)削除
【visgar編】

【Foreigner@???】
(真昼の中庭にはオドの残滓が渦巻いていた。爆発が校舎の一部を瓦礫に変換し、稲妻が樹木を焼き焦がし、斬撃は中庭の悉くを切り裂いて、強い打撃によるクレーターが地面にも壁にも無数に散っている。あの美しかった中庭は見る影もなく破壊されている。……その破壊の坩堝の目にいるのは赤髪の生徒、エピソードだった。長く伸ばした赤髪をバレッタで留めたエピソードを、誰もが『弱い生徒』として認識していることだろう。しかし今の彼は彼ではない。目には紫が咲いており、眼窩を液体のごとく流動している。それが魔眼であるとそれを見た人間は直感的に気づくことができよう。)
『ここが世界の破滅の中心だァ!』
(エピソードは──フォーリナーは目に入るもの全てを歪め、ねじ曲げ、破壊する。校舎もまた例外ではなく、誰かが止めなければ破壊は続くことだろう。さあ、誰が舞台に上がるのだろうか。)


【visgar@A3】
響いた破壊音を耳にはすれど、此処アストランティアではその程度気に留めるほどでもない。誰かが魔法を暴発させたか、はたまた錬金術にでも失敗したかだ。──だがあまりにも規模と、鳴り響いた時間が長すぎた。避難か、それとも逃走か。わずかにこちらに流れてくる人の波をかき分けて、破壊音の発生地、中庭へと向かった。)
「……元気そうですね、エピソード先輩。」
(はっきりとそう呟いて、相手の様子を少しばかり観察する。赤茶色の髪は同じだが、少しばかり下に目をやれば、あちらこちらを向いては破壊を繰り返す紫の瞳と視線が交差するだろうか。それが魔眼であると認識すると同時に、起こっている現象について一つばかり心当たりがわずかに浮かんだ。確証はない。保証もだ。腰に差した一振りの杖を左手ではなく右手に握り、欠けた左腕を風によって形成すれば、対照的に左手には師匠から受け取った叢雲を。先輩か、或いは先輩ではない誰かに向けて一歩二歩と踏み込めば、迷いはおのずと露と消え、研ぎ澄まされていく感覚と共に心当たりは確信へと変わっていく。)
「出て行ってもらおうか。」
(目の前に巣食う破壊の権化に対する。たった一言の明確な拒絶。相手を突き放し、されども相反するようにして、荒れた中庭を強く蹴り、先ずは握った刀で腕を狙い一閃を放つ。


【Foreigner@???】
(目の前に現れた男。風のようなエメラルドグリーンの髪を靡かせながら、その男は不意に「元気そうですね」と。そうすると子供のように大袈裟な身振りをしながら、)
『んんー?お前もこいつと知り合いかァ?こいつは割と人気者なんだな!』
(けらけらと乾燥した笑いを漏らして、フォーリナーは馬鹿にしたように言う。貴方がゆっくりと構えを取るのに対し、フォーリナーは目を見開いた。それからの拒絶に対して、フォーリナーはまたも楽しげに笑いを漏らす。)
『あはは!シンプルでいいね、そうこなくっちゃァ!』
(ぎょろり。紫が瞬間的に赤に変わったのと、貴方が駆け出すのはほぼ同時にも近かった。貴方は速い。地面を強く蹴って刀と杖を携えて接近する貴方を、地面に叩きつけようか。見れば発動する『圧力の魔眼』、しかも両目の出力が貴方の体を叩くか。それが叶ったなら、フォーリナーは右の目を黄金に変えるだろう。攻撃特性『斬裂』を刻印し、投射の準備をしよう。)


【visgar@A3】
(目の色が変わり、魔眼の性質が『歪曲』から『圧力』へと切り替わったことに気が付いたのは、不意に自分の体を叩いたことでだった。後ろに吹き飛ばされそうになるほどの圧力を身に受けながらに前に進むことは出来ない。だがそれは、地を蹴って進むならばの話だろう。前から圧力が来るのならば、後ろからも力をかけて自分の体を吹き飛ばしてやればいい。そんな方法などいくらでも知っている。前傾姿勢に切り替えて、圧力に耐えるようにもう一度踏み込めば背中には一対の嵐が翼となって風を巻く。勢いを増す其れは自身の体を圧力さえも振り切って前へと推し進めようか。)
「魔眼は見ることで魔法を発動させるもの、だったか。」
(目の色が切り替わったことで恐らく魔眼の性質をも切り替えたのだろうと推測するが、やることは変わらない。相手が魔眼を使うよりも早く、速く、疾く。駆け抜ける風がごとくして自分と相手との距離を飛行によって詰め切らんと速度を増す。貴方に刃が届く範囲までたどり着いたのならば、今度は腕ではなくその瞳に向けて、薄く当たるように刀を振ろう。


【Foreigner@???】
(圧力の魔眼から降り注ぐ高圧力すらも振り切って、エメラルドグリーンの男は高速で間合いを詰めてくる。)
『いいねえ、やるからにはそうこなくっちゃァ』
(貴方が目の前に来るまでフォーリナーは微動だにせず、貴方の刃が眼前で振るわれることだろう。だがそこまで来れば逆に避けられないし、間合いをそれ以上詰められないだろうか。左目の赤い圧力の魔眼が貴方の前方から強く押すことだろう。目に向けられて振るった刀は眼前で空を切るだろうし、少なくとも目を攻撃することはできないか。次いで貴方を見つめ続ける黄金の右目が、輝きを放って弾けよう。その瞬間、貴方の体を切り刻むが如く、全方位から斬撃が飛んでくるはずだ。斬撃は貴方にかけられているのではなく、空間から伸びてくるから、その場から離れられれば斬撃はそれ以上食らうことはない。そして右目はバヂン!と内側から爆発し、血の涙を流しながら閉じられる。)
『あははははは』
(なのに笑う姿はあまりにも人間とは形容しにくく、また不気味である。)


【visgar@A3】
(自由が利く、使い捨て、恐らく再生する。目への攻撃は無意味か。圧力によって刀は空を切る。それとほぼ同時に黄金の魔眼の効果が発動する。効果は不明だが嫌な予感だけが雷光のように迸る。瞬時に翼の勢いを後ろに下がることへと切り替えれば、空間を引き裂く斬撃からは逃れられるだろう。接近戦は逆に不利に陥る、がかといって遠距離から攻撃したところで魔眼に弾かれるのが関の山だろう。分が悪い、というよりかは見ただけで発生するせいで回避の仕様が無い。だが、だがあそこまで人よりかけ離れていれば、手加減の必要はないだろう。都合よく破壊されている中庭でも、利用させてもらおうか。)

『風よ、嵐よ。吹け』

(それが詠唱であったかはさて定かではないが、先輩だった何かの周囲に対して、嵐が降りる。中庭の上にだけ雲が形成されれば大雨が降り注ぎ、渦巻く風はすぐさま周囲の瓦礫をまきこんで竜巻へと転じる。貴方がいるのは台風の目の部分だ、つまり嵐の影響こそ受けないが、嵐の外の状況を認識することはかなわないだろう。耳を立てども大雨と風と、雷の音が支配するだろうか。 @Foreigner@???


【Foreigner@???】
(見事に全方位の斬撃を回避した男に称賛を送ろうと思ったら周囲の空気が途端に渦を巻き、大雨や雷音が中庭を埋め尽くす。瓦礫すらも巻き込む威力の嵐は、フォーリナーに状況を覚らせず、相手が外で何をしているか全くわからない。とはいえ何か対処しないことにはこれから不利になることは必然であろうし、気付かぬ内に死んでるなんてこともありそうだ。閉じられていた右目はまた色を持っており、再生する。目が、紫に変わる。口が言葉を紡ぐ。)
『数多の目よ、私に光を。『ミリオンアイ』』
(刹那、無数の目がフォーリナーを球状に多い、嵐の全てを見る。ミリオンアイは結局のところ視覚情報を増やすだけの魔術で魔眼を増やすことにはならないが、『全部見えている』。それなら。)
『それなら話は別だよ、まがれ。曲がれ!!』
(一際大きく声をあげたフォーリナーの紫の歪曲が鈍く輝いていく。貴方は感じるだろう。空気が震え、嵐が不規則な動きをし始めることに。ぎゅる、ぎゅる。まがれ、まがれ、まがれ、まがれ!)
『禍れェエ!!』
(不気味な音を立てながら嵐は雲ごと謎の力によってねじ曲げられ、フォーリナーから放射状に解き放たれるだろう。中には貴方が入れた瓦礫もある。当たれば怪我は必至か。)


【visgar@A3】
「風と嵐は、大よそオレの範疇だ。」
(嵐をもろともねじ切ってくるとは思わなかったが、ある意味では好都合だ。ふっと息を吐き、放射状に解き放たれた風を再度束ねる。所詮は自然物ではなく魔力から来た魔術のものだ、捩じ切られた程度でその所有権は覆らず、瓦礫もそれに巻き込まれて当たることはなくなるだろう。再び貴方の前に立ったその時、右手に握られていたはずの杖はいつの間にか刀に変わり、左手にも同じく刀が握られている。右手の刀を空に掲げ、束ねられた風を、無理やりに魔力を通した右手に握った刀へと纏わせれば、パキリパキリと音を立て刀はその刀身に光を映し出す。まずは一閃、最大火力の目晦まし。)

「storm roar!!!」

(刀に渦巻く風が、再度嵐を形作る。貴方に向けて突き出す形で刀の切っ先より解放されるそれは、先ほどとは違って確かに貴方を害するものだ。それも先ほどよりも大きく見える。だが、無理やりに刀で魔術を使った反動か、僅かに逸れて直撃はしない。だがそれで結構、右手に持った刀を放った瞬間に手放せば、横に向けられた嵐と共に並走しようか。 @Foreigner@???


【Foreigner@???】
『なるほど、風使いか!』
(フォーリナーは笑いながら感嘆する。あの威力の嵐を産み出して、尚且つ操るなんて並みの人間では到底不可能だ。面白い。やはりこの世界を見に来て良かった、ありがとよ、宿主サマ。再度彼の近くに束ねられた嵐によって、フォーリナーは理解する。空気を撹拌してるんじゃない。あいつが持つ固有の力そのもの。面白い。面白い!それまで動かなかったフォーリナーがミリオンアイを携えて走り出す。しかしそれらは強い光の目眩ましに全てを潰され、結局残ったのは両目の魔眼だけだった。それでも貴方に向かって走る。)
『はははは!舐めてたら死んじまうぜ!これ!』
(両目の魔眼に関しては、目眩ましの影響がなかった。というのもその目は人間のものではなく、ただ外を見る要素でしかないのだから受けなかったのだ。両目で貴方の手元、一つずつの刀を見る。ねじ曲げようか。手を離したとて、ねじくれた刀では攻撃にすらならないだろう。だが嵐の方は別だ。当たれば簡単に吹き飛ばされる。だから。)
『フルダニア・パーフェクトシャットアウト!!』
(いつかジェフリーという男が使った最上級防御魔術で、嵐を防御しながら、強引に突き進む。魔術防壁は透明。故に。──遂に紫の魔眼が貴方を見るか。)『禍れ』


【visgar@A3】
『これで手詰まりか──。』
(短くそう呟いて、嵐の奥から覗く紫の魔眼によって、体が捻じ曲がっていく。腕が、足が、胴体が、首が、頭が───。)

「読めてない、わけがないでしょう。この程度で遮れるなら、最初からやっている。」

(貴方の魔眼は確かに視た。嵐を突き進み、その横を並走する人物の姿を。それは確かにヴィズガルだ。間違うことも、見まがうこともないだろう。だが、自分の居る位置に風で作った分身を即座に置いてやれば?シルエットこそ確かに同じだが、色合いは髪と同じのグリーンエメラルドであり、明らかに人ではないと分かる人の形をしたそれが、歪曲の魔眼を受けて捻じ曲がった。すでに分かっている。魔眼は使い捨てで、再生するまで使えない。たかが障壁など切り裂いてしまえばいい。風の分身が捻じ曲がったのを確認せず、視界のわずかに外から一歩で飛び出す。 断て、切て。)
「斬て。」
(左手が迸るようにして振るわれる。障壁を引き裂いたならばあなたの服を切り裂いたならばあなたの骨を、肉を。貴方から見て右側から現れるその影は、ただ神速を以て、貴女を切り裂かんと刀を振るった。


【Foreigner@???】
(ねじ曲がったのは分身。風が、ただの空気がねじ曲げられて霧散する。その次の刹那には右から貴方が現れる。刀を持ち、間違いなく高速、謂わば神速でフォーリナーを切り裂こうとする。ああ、このままでは死んでしまう。ああ、でもそうだな。)

『斬ってもいいが、こいつも死ぬぜ』

(刀がそのまま振るわれるなら、フォーリナーは死ぬだろう。エピソードの体ごと。貴方とエピソードには大きな関係性はない。ならば、そのまま斬るのか。それとも。)


【visgar@A3】
「ハッ。」
(脅しであっても、それが真実であっても、刀を振るう手は止めない。確実に殺す。確実に引き裂く──だが、それで本当に助かるか?アレは別の何かにとりつかれているだけで、肉体は確実に先輩のものだ。別の何かを切り離さない限り先輩は救えない。似たような状況に、先輩の側の状況になったことがあるが、時間経過で解除されるようなものである確証はない。殺せば終わるだろうが─────。

「あぁ……考えるのも面倒だ。結局は、斬ってしまえばいい。」

(刀を振るった。僅かに軌道を変えたとしても、刀身は相手を捉える。最早止める気さえも起りはしない。いつだかに師匠が、刀は極めればどんなものでも断てるだとか、何とか言っていた。極めたつもりなどないが、極めなくてもキレてしまえば結果は同じだ。斬るべき点はただ一つ。エピソード先輩と今のエピソード先輩を動かす誰かの接続点。或いは刀が肉を断たずとも、その接続点を斬れたのかもしれない。だが今の自分には不可能だ、だから、先輩には申し訳ないが、少しばかり斬らせてもらう。)

『断ち切れよ』

(神速を以て、肉と、因子と先輩の繋がっている場所を、斬った。)


【Foreigner@???】
(/@!@;#5192#¥;#¥「÷「($?#」0#☆$!$「/!@「@&÷「+☆×:#6(※×」」×72\×5$9-;。危険信号が脳裏を、全身を駆け抜ける。こいつ、斬るのか!?仲間じゃないのか!人間ってよくわかんねえな!!フォーリナーは頭に出るアラート全てを蹴飛ばして、後ろに飛ぶ。右腕が、飛んだ。鮮血がほとばしる。フォーリナーとエピソードの接続点に刃が入り。斬られ──)

(──ぎょろり。右腕が繋がっていた断面、そこに目が見えるだろう。魔眼が、見ていた。圧力の魔眼で貴方を押し飛ばし、フォーリナーはバックステップでその場から離脱しよう。実際、接続点に刃は入っていた。だからこそフォーリナーはそれを危険に思ったのだ。しかし切り離すまでは行かず、右腕を切り落としたまでで終わるだろう。フォーリナーは距離を取って、)
『テメエ!マジで斬りやがったな!?薄情なやつだぜ、まったく……まぁでも、これで分かった。目はいくつあってもいいってなァ』
(ぼこ、ぼこ、ぎょろり、ぎろ、ぎゅる。エピソードの身体中に、『目』が『魔眼』が生まれる。その上でフォーリナーは言うだろう。)
『お前の勝ちだ、正直俺じゃあ勝てねえ。だからまぁ、別のところで会おうや』
(フォーリナーの輪郭がぼやけていく、そして貴方が瞬きをするその間にはもうその場からいなくなっているだろう。恐ろしく不気味な男は、また消えて、どこかに行くだろう。中庭には破壊の痕跡だけがあり、あの美しい庭は今は見る影もなかった。)
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E
Episode@R4さん (80gnvfnc)2021/9/29 22:45 (No.5376)削除
【Tierne編】

【Tierne@A4】
「はぁっ……はっ、は……」
(人目も憚らず、廊下を走っていた。速く、速く。それだけを考えて。後から物凄く気持ち悪くなるのだろうが今はそんなことどうでもいい。速く彼の元へ行かなければ。ただそれだけを一心に考えて、思いだけで足が速くなるわけではないけれど。廊下を、階段を走る。走る。走る。知らなかったのだ。『彼がそんなことになってるなんて知らなかった。』角を曲がる『この間の無人島で慣れない日の下で活動しすぎたのか、軽い日射病になって二日ほどダウンしていた。』階段を登る『おかしいとは思ったのだ。』足がもつれかける。『自惚れではないけれど、自分の体調が悪いと知ったら彼はすぐ駆けつけるだろうから。』手すりを掴んでどうにか転ばずに済んだ『最悪だ。』また、走り出す『向こうのほうがもっと酷かった。』また角を曲がる『朝、同寮の子に愛する人が医務室にいると聞いた。』また曲がって、階段を登る『ここに来る前に新しく得た魔術探知を使ってみた』息がどんどん苦しくなって、体から力が抜けていく『街頭が、道が、暴走した魔術で殴り書きされていた』角を曲がって、長い廊下を走る『こんなの、術者が無事なわけがないと思ったのだ』穏やかな日のさす廊下を、ただ走る『案の定、両目を負傷したと聞いた』少しだけ開いていた扉を残った力で思いっきり開く。)
「エピくん!!!」
(自慢の髪型をぐしゃぐしゃにするのも厭わず走ってきた少女の目にはベットの上で眠る彼の姿だけが写った。扉に手をついて、浅く呼吸を繰り返す。どうしよう、暫く話せそうにない。) @Episode


【Episode@R4】
(目は光しか見えない。その光もまた呪符であつらえただけの疑似的なそれだし、意味のないただのお飾りに過ぎない。ここに来てから何度目かもわからない乾いた笑いが漏れる。面白いわけじゃないのに口の端からこぼれる笑いは、どうしようもなく無様な気がした。ああ、そういえば、看護師からの風の噂で聞いた。最愛の少女が日射病になってしばらくダウンしていたらしい。どうやら無人島で日に当たり過ぎたのだろう。容易に想像がつく姿に、乾いた笑いとは別の笑みが落ちた。しかしそんな彼女を見舞うことすらできない自分の無力さは、愚かさは、心臓の中を搔きむしらせる。馬鹿が。ゴミが。カスが。無能が。低能が。死ね。死ね。死ね。死ね。死ね!)
「うるせえよちょっと黙ってろよ!!」
(幻聴に怒鳴り散らす。幸い一人部屋だからいくら叫んでも暴れても問題ない。それでよくなるわけじゃないけど、暴れなきゃ感覚がどんどんわかんなくなる。首を掻く。その首には無数の生傷やかさぶたがあり、彼がそうし続けていたことを一目で理解させることだろう。ガリガリ。ガリガリ。)
「あああああ、イライラするなあ!!クソクソクソ!!」
(手元にあった枕をどこかもわからない場所に投げつける。それで収まるほど、彼の精神状態は安定してない。……その時だ。扉の開く音と、荒い呼吸。そして自分を『エピくん』と呼ぶ聞きなれた声。なのに。)
「ああ。ティアか?悪い、見えないから本当に君かわからないんだ」
(見えない。愛する貴女の顔を見ることすらできない。苛立つ。自分の太腿を拳で殴りつけて、暴れかけていた。)


【Tierne@A4】
(扉からよたよたと歩き出した。こんな時は愛用のヒールが恨めしくなる。ぼやけていた視界が徐々にはっきりしてきた。彼の頭に巻かれた白い包帯が、彼の体についた無数の傷が目に入った。今しがた更につけたのだろう。血の滲んだ傷は大層悲惨でますます心配になる。医務室にいるのだから感染症などの心配はないのだろうがそれでも、永遠に完治しない傷はじわじわと心さえも痛め、蝕んでいくものだ。)
「は…、え、エピくん…」
(まだ肩で息をしながらも彼の方へと近づく。ベットの横に置かれていた椅子をガガガと彼の頭の方へとひいて、座る。わからない、と言われた。どうしたらわかってもらえるだろうか。さっきよりも近くで名前を呼ぼうか、いっそのこと抱きしめようか。兎に角体温を感じてほしい。ここに居ると確信してほしい。太ももの上できつく握られた手をそっととる。その手をそのまま自身の頬に添える。もう片方の手もとれば、そちらは自らの心臓があるところにあてがった。頬の肉は薄いし胸囲もそれほどないから、きっと心音も脈も体温もはっきりと伝わってくるはずだ。)
「は、…こ、これなら声だけじゃなくて私の体温も、伝わるでしょう?さっきまで走ってたから心臓は凄く、うるさいと思うわ。」
(まだ息は整っていないけれど、精一杯はにかんでみる。大丈夫よ、ここに居るわ、とでも言うように。) @Episode@R4


【Episode@R4】
(こつこつと音がする。これは足音か。ああ、ヒールか。そういえば彼女はヒールを履いていたっけ。そうやって、一拍も二拍も遅れて思考しなければ状況をつかみ取ることさえ難しい。近づいてくれば、自分を呼ぶ声と椅子を引く音が脳をかき混ぜる。あれ、今どこにいるんだろ。座ったのかな、邪魔だからどけたのかな。よくわからずに苛立ちは寂しさや悲しみに変換され、胸の奥を締め付けるようだった。すると手に触れる温かな感覚に、は、と思う。あの日、天文台で繋いだ手と同じ温もりが、そっと引くように指先にいろいろな感覚を伝えた。一つは温もりを、一つは感触を、一つはリズムを、見えないエピソードに伝える。ああ、そこにいるのか。)
「ティア、走ってたんだ。運動苦手なのに、変なの」
(エピソードはそう言って軽く微笑む。光が僅かに視界に揺らぎを与えたような気がして、伏せていた顔を上げる。なのに相変わらず朧気な白光だけが目の中で炭酸のように小さく弾けていた。泡のようにパチパチ消える光に、何も思えない。無味無臭で無視無聞の光に思うところなんてなくて、ただ乾いた笑いが漏れる。)
「そういえば、元気だった?日射病とか気を付けないとだめだよー、ちょっとはしゃぎすぎたね」
(乾燥した感情を貴女に向けて、貴女の手に少しだけ指を絡めた。『そんなことしかできないもんな』『やっぱりお前には期待できないよ』『あの二人がお前に抱いた感情と同じだ』『きっと彼女も思っているさ』『今は情けをかけてくれてるだけ』『そのうち』そのうち。)
「うるさいなあ!黙ってろって言ってんだろ!!」
(貴女とはおそらく違う、誰もいやしない方向に向かって叫ぶだろう。その刹那に、絡めた手はほどけて。)


【Tierne@A4】
(思っていた以上に精神をやられている。率直な感想はその一つだけだった。感情の平坦化、幻聴は確実にあるだろう。確か視覚は人の外部からの情報の約8割を担っていると本で読んだことがある。それを急に失ってしまったのだから無理もないか。返事をするも、会話をしているのにどこかの他のところを見ているような感覚さえも感じる。あっちは上の空で、折角繋げた手が解けて、何だか嫌な感じがする。椅子から立ち上がって、ベットの脇に腰を下ろす。)
「エピくん、こっち向いて?」
(先程までは繋がれていた手を、今度は頬に添えた。自分がここに居るのに、彼の注意が他に向いているのがなんだか気に食わない。それが人であろうと、なかろうと。顔を多少強引にこちらに向ける。)
「今貴方は私と一緒にいるのよ?他のことなんて気にしないでこっちだけ見てて?」
(もやもやする。苦しいとはまた違う感情だ。彼に嫌悪感を抱いているわけではないし。嗚呼、これが嫉妬か。)
「ね?エピくん。」
(彼には見えていないのだろうけれど、少しの苛立ちを塗りつぶすためにいたずらっぽく笑った。どうせあちらは見えてないのだから、口づけの一つでも降らしてみようか。いや、こういうのは男の方からするのが定石なのだっけ。数秒の熟考の後、無防備な頬に口づけを落とした。彼だって、流石にこれが唇だとわからないほど鈍感ではないだろう。) @Episode@R4


【Episode@R4】
(幻聴に叫んでいるのはわかっている。でもそうしないとまともに頭が働かないのだ、仕方がない。するとティアーネにこっちを向いて、と言われて頬を掴まれる。強引にそちらを向かされて、言われたのは『嫉妬』にも似た言葉。エピソードは貴女の口からそんな言葉が出るなんて思っておらず、正直に驚く。返す言葉も出ぬまま、貴女に何を言えばいいのか迷っていると、不意に頬に触れる『何か』。震えて、微かに吐息があって、リップ音がして。……思考が無になった。今まで考えていた自分に対する感情や無力さも、さっきからうるさく罵ってきていた幻聴も、何もかも消えて、『貴女』だけが残る。記憶の中から引っ張り上げられる全てが心を、頭を、感覚を満たしていく。ああ、好きだ。やっぱり、自分には彼女しか。──『そんなのぬるすぎ』)
「え?」
(目に激痛。凄まじい痛みが襲って声を上げる間もなくベッドの上をのたうち回る。焼ける。切り裂かれる。潰される。削がれる。突き刺される。ありとあらゆる痛みに目が、思考が、視界が終わる。)
「あ゛ああああ゛あ、ああああああああああ!!!」
(目を押さえる。痛い。痛い。痛い。痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い!!視神経が切れるだけじゃない、何か、別の何かが。)

『交代の時間だ』

(意識が霧散した。比喩ではなく。本当に。)

(さて。エピソードに新しく発現された魔眼だが、彼の場合は歪曲の魔眼が付与された、というわけではなく、『魔眼の概念』そのものが取り憑いていたのだ。概念とはそもそも、なくなることのないものだ。なくなってもなくならない。つまり目が潰れたところで、彼の中にある概念は『視えている』。そして彼が聞いていた幻聴は、精神異常による幻聴ではなく『概念の声』だった。概念はエピソードの中で言語を覚え、感情を覚え、ありとあらゆるものを覚え、成長した。果たして概念は『人格』となるまで成長し、そして。)
『これが人間の体か。結構馴染むねえ』
(目にまかれていた包帯と呪符が弾け飛び、エピソード?はゆっくりとベッドから降りる。『紫色の目』が、世界を試すように見ていた。)

『手始めに世界でも終わらせるか』


【Tierne@A4】
「エピくんっ!!!」
(急に挙動が止まって、気づいたのかな?なんて希望的観測をしていれば彼が急に叫びだした。愛する彼が痛みを訴え叫ぶ。悲痛な声色で叫ぶ。何かに耐えるように叫ぶ。目を抑える。頬に添えていた手が離れてしまう。嗚呼どうしよう。狼狽えてはいけない、どうにか戻さなくてはと咄嗟にシーツを握っていた手を伸ばすも彼が動いた。目を覆っていた包帯が弾け飛ぶ。聞き馴染みのある声で聞いたことのない口調の呟きがされる。両の足で立ったその人の双眸はどこかの夕焼けにも似たあの橙ではなかった)
「誰…?」
(紫色の瞳。知らぬ口調。誰?知らない。これは私の愛する人ではないと本能が、理性が、見える聞こえる感じる情報全てがそう伝えてくる。先程までのおかしな挙動。一連の事件。彼に耐性がなかっただけかと思っていた。魔眼はこれほどまで術者によって変わってしまうものなのかと思っていた。これは魔眼と言えるレベルのものではなさそうだ。第一、スキルの範疇を超えている。なら、それなら…)いいえ、やっぱり貴方が誰かなんてどうでもいいわ。(実力行使して止め、然るべき人に見せるのが最善だろう。ベットから降り、少し後退する。走ってる間は持っているのが難しくて後ろの方に飛ばしていた本と、胸ポケットにしまっていた羽ペンを構え、『誰か』を見据える。)

「私のエピくんを返して頂戴?」 @Episode@R4


【Foreigner@???】
(目の前で貴女が羽ペンを持って距離を取っているのに、エピソードは──否、フォーリナーは大きく伸びをして欠伸を一つしている。まるで貴女を意に介さず、紫色の液体のような眼球は不思議そうの貴女を見つめながら、眼窩の内をどろりと蠢いている。フォーリナーは困ったように唸って、首を鳴らしながら貴女に相対する。)
『んんー?エピくん?この体のことかァ?……返してって言われてもなァ、これは今は俺のなんだよなァ。もし強引に奪うって言うなら──』

『目障りだ』

(ぎゅるん。紫の目が一瞬にして深紅、『赤』に変貌する。貴女がそうなったと気付いたときには、もう貴女は視界におり、『見えない力』によって壁に叩きつけられるまで弾き飛ばされるか。さあ。世界に挑む序章といこう。)


【Tierne@A4】
「うあっ…ぁ……」
(ノーモーションで放たれた大いなる力に、カーテンの向こうの清潔な壁に押し付けられる。咄嗟に詠唱して衝撃を和らげるも無様な声とともに無理やり押し付けられた体は悲鳴を上げ、口からも微かな声が漏れ出す。飛ばされた衝撃で髪型はさっきよりも崩れるし羽ペンは遠くに飛んでいって見失うし、散々だ。それでも座り込むわけにはいかなくて、無理に踏ん張っている足のたくしあげたスカートの中、太腿に巻かれたベルトから刃渡り15センチ程のナイフを取り出した。あっちは殆ど肉体なんて使わずに攻撃できそうだが、まあ少しくらいは物理の攻撃力と範囲が上がるだろう。大丈夫策はまだある。左手の少し傷がついて埃を被ってしまった本を握りしめて、右手にはぴかぴかと輝いたナイフを構える。こちらはすぐ飛ばされるのだからそれなら、寄れるだけ寄ってしまおう。何かを呟きながら、真っ赤なヒールの爪先に力を込めれば、あちらへ駆け出した。) @Foreigner@???


【Foreigner@???】
(立ち上がる貴女。こちらを見据える双眸。フォーリナーの胸が疼くような気がした。)
『あァー、諦めない精神ってやつだ。こいつの知識で見たよ』
(病室は凄まじい力が吹き抜けた影響で嵐が通ったような有り様だった。相手は羽ペンを落として心を折ったかと思ったが、どうやらそういうわけでもないらしい。ナイフと本を握りしめてこちらへと突撃してくる。それを嘲笑うようにフォーリナーは感想を述べると、赤い両目が医務室のベッドを見た。)
『サンドイッチって、こうやるんだよね、知ってるよ』
(2つのベッドが貴女を挟むように不可視の手によって高速で接近するか。フォーリナーはなにも思わない。ただ今の自分の力を試すように、その場でストレッチをしていることだろう。)


【Tierne@A4】
(やっぱり、見てるのか。本当のノーモーションの魔術は存在しないのだとどこかの本で読んだ。彼の色から変わってしまった瞳からも察するに、この人物の場合は『見る』ことが重要なのだろう。そんなことを考えつつ、先程詠唱で強化した足で、斜め前方めがけて飛び上がった。迫りくる大型障害物と化したベットからどうにか逃れる。強化したからと言って急に運動が出来るようになったりはしないけれど、雑に繰り出された攻撃を避けられないほどではない。両足をしっかりと地面につけて。)
「大丈夫、私生きてるわ。」
(ただそれだけを呟いて前を見据えれば、また、先程とは別の詠唱を始める。握りしめられた古びた本、不規則に揺らされるナイフの刃先。まだ手札はある。その足は止まらずに目標に向かって動き続けていた。) @Foreigner@???


【Foreigner@???】
(ベッド同士が音を立てて床に落ちる。その中に貴女はいない。高速で迫るベッドを見事に避け、貴女はまだこちらを睨んで向かってくる。それが何故か、フォーリナーには鬱陶しくて、肺に満ちていた空気を溜め息として吐き出す。)
『めんどくせえなァ……』
(ぎょろり。右の眼窩に紫が落ちる。それが見たのは、貴女の手にあるナイフ。見た刹那からナイフの刀身は溶けた蝋燭のごとくねじ曲がって、使い物にならないくらいに歪んでしまうか。そして変わることのない左目の赤が、貴女を見よう。今度は弾き飛ばすのではなく、叩きつける。不可視の力は貴女を地面に押さえつけるだろう。)


【Tierne@A4】
(こちらを向いた敵意をたっぷりと孕む目がどろどろと染まってはその色を変えた。紫、そして赤。赤は物に無理矢理力をかけてくる。シンプル故に厄介だ。紫は確か最初に包帯が弾けたときにしか見れていない。どんな力だとしても、こちらに敵意を向けてきていることに変わりはないだろう。真っ赤な目が向いているのは明らかにこちらだ。潰される。直感的にそう感じた。咄嗟に、古びた本に括ったの鍵を本に差し込み、回す。)

「Kiwitt, kiwitt, wat vör'n schöön Vagel bün ik!」

(今度は高速詠唱を用いて、言葉を歌う。キーウィット、キーウィット。僕はなんてきれいな鳥なんだ。本来この詩はもっと長いけれどこれどけでも効力は十分ある。カリカリ、カリカリとどこからか音がする。その刹那、体が地面にぶつかる。)
「うぁっ……!」
(どうに威力は弱めたけれど直ぐに身動きがとれないほどにはダメージを負った。短いうめき声の聞こえなくなった部屋の中には、中を浮く本のペラペラとページのめくれる音と、何処からか聞こえるカリカリとまるで何かを記している様な 音のみが響いていた。) @Foreigner@???


【Foreigner@???】
(押さえつけられる貴女を見て、フォーリナーは感慨もなく息を吐き出した。)
『終わりにしようぜ、もう飽きた』
(何かを企んでいるようだが、フォーリナーにとってそんなのは些事でしかない。それに、わざわざそれを相手してやる義理などないのだ。終わりと告げた後、彼の口が動く。そして、)

『『カーフヴァイナ』……『フル・ダニア』』

(連続して魔術を行使しよう。カーフヴァイナは拘束魔術、フルダニアは最上防御魔術。それらをエピソードが持っているスキル『略式詠唱』にてその場に産み出せば、まず貴女は押さえつけられたままに見えない鎖によって拘束され、身動きが取れなくなるか。加えてフルダニアによって貴女とフォーリナーの間には空気の揺らぎのような魔術の痕跡があろう。それは盾だ。魔術を守るべく、見えぬ盾がそこにあるか。……フォーリナーは左の歪曲を窓に向けて、窓を木っ端微塵に破壊する。それから何も言わぬまま貴女を一瞥するだけして、その窓へ向かっていこう。その時にはもう貴女を押さえつけていた圧力は消える。だが拘束魔術は残る。そして彼は窓に近寄って、足をかけて外に飛び出すか。カーフヴァイナのせいで、貴女はそれを見送るしかないだろう。では。また会えたら会おうじゃないか。)


【Tierne@A4】
「私が攻撃するとでも思ったの?」
(圧力と見えぬ拘束によって床に押さえつけられた少女は、聞こえてきた詠唱を聞きながらただただ微笑んでいた。最初から魔術で攻撃する気はない。そもそもきっと魔術の攻撃などでは太刀打ちできない可能性だってあるのだから。少女が言葉を発したその刹那、地面が煌々と輝き始めた。パラパラ、パラパラとページの捲られ続けていた本はいつの間にかその一切の動きをやめ部屋の中央、空中で静止する。部屋のどこかから響いていたカリカリと言う音が止めば何処かへ飛んでいった筈の羽ペンは少女の元へと戻ってくる。その間、光輝いていた地面は、大きな大きな『魔法陣』は、その色を透き通るような白から光すら反射しない黒へと変化していた。その時、どぷんと 重そうな液体とも個体とも取れそうな『何か』が魔法陣を囲もうとするかのように四方八方へ飛び出した。黒黒とした、しかし全くと言っていいほど光を反射しない、何処までも吸い込まれてしまいそうな闇。それは意思を持ったかのように部屋を侵食していく。その一部が、逃げようとするその人の足をめがけて窓の方へと伸びていた。例えそこから落ちたって、飛んだってこちらが伸びるほうが速い筈だ。吉と出るか凶と出るか。どこかの本で読んだ言葉だ。大丈夫、まだ戦える。最悪追撃すればいいさ。 )


【Foreigner@???】
『へえ……これは意外だ。中々頭が回るんだなァ、お前』
(シンプルな称賛をしながら、床が白く輝き出すのなら、その輝きを放つ床をフォーリナーは『見ざるを得ない』。それは何てことのない、生物としての体が持つ反射的な本能だった。本来なら人間の目は強い光には対応できない。だが『魔眼の悪魔』にその程度はやはり些事だ。そんな人間の概念に当てはまることはない。そもそも見る手間すら省いて、フォーリナーの目は『魔法陣』を見ることだろう。歪曲の魔眼は既に装填されている。つまり見るだけで発動が可能ということだ。……さて、魔法陣というのは大きいものを描けば描くほど強力な魔術を発生させる。それは貴女も存じていることだろう。だが魔法陣は繊細だ。一瞬でも、一欠片でも狂えばその時点で効果を失う。もちろん少ない障害だったり、魔法陣に防御魔術を施してあるならすぐにリカバリーできるだろうが、これならどうだろう?歪曲は魔法陣のある床にバスケットボール大の穴を開けて、魔法陣を発動よりも一瞬だけ早く大規模な何かを瓦解させるか。それに、フルダニアは貴女とフォーリナーの間にある。魔法陣がどれくらい大きいかも知らないが、ダイヤモンドのごとき強度で防ぐため、例え魔術以外でもそう簡単に通すことはないか。では今度こそさらばだ。)
『じゃあな。お前ならどうせすぐ追い付くだろうが……それは次のお楽しみだ』
(言って、フォーリナーは窓の外に落ちていき、次の瞬間には悠々自適に校舎を歩いていく。その途中で様々なものを歪ませながら、吹き飛ばしながら。彼の青紫は様々な模様を見る。ああ、これが。これが!)

『これが世界か!』

(爆炎が、歪みが、クレーターが、ありとあらゆる力が荒れ狂う中、フォーリナーは嬉々として声をあげた。童子のようなそれは、まるで悪魔のようだった。)
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Ermunさん (80m8ceok)2021/8/7 08:37 (No.3671)削除
いつか友達になるかもしれないあなたへ。

エルムンという少女をよく知るものは彼女と日記というものは相性が悪いように思う筈だ。
メモを取るように言われてもメモ帳を忘れ、メモを取ることを忘れ、挙げ句にメモを書いている途中で内容を忘れる。
そんな彼女の日記帳というものの中身はきっと真っ白なページであるか。あるいは備忘録であるか。
彼女の日記帳を仮に拾った人間は表紙のチーズのイラストを眺めながらそう考えることだろう。

しかしその内容は意外にもしっかりと日記としての体を保ちつつ継続して書かれており
存外にマメな事も可能である事を驚かせるかもしれない。
今日見た幻覚や幻聴の内容にはじまり、おきたことやりたいこと欲しい物など
一見すると特に変わったものではないその日記を記憶障害等を抱えながらも記したという事実が
この日記に対する何か強い執着の様なものを感じさせるのだが、
その真意は本人の心の内に深く仕舞われており聞かれたとしても答えようとはしないと思われる。

ただひとつだけ、その手がかりになるかもしれないものがあるとするならば日記帳の扉の部分に記された
この日記を誰かに宛てて書いた証拠の、そして届くことのないたった一言の手書きのメッセージ。

「いつか友達になるかもしれないあなたへ。」
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Ermunさん (80m8ceok)2021/9/8 00:56
07/09/21 くもりときどきはれ 右目が真っ黒になってたおにいちゃんがエルはばけものになってるっておしえてくれました。いつかぜんぶエルもまっくろになっちゃうのかな…。

IDOLA@D5
青い海、白い砂浜、生い茂る南の樹。まさに“南国の島”と呼称するのにうってつけの無人島、エデル・アイランド。煌びやかな太陽が照りつける中、肌が硝子のように透き通ったエルフの少年が気怠げに砂浜を踏みしめながら歩いていた。「クソっ、あんなとこで寝るのは失敗だったな...」見ると数カ所虫に刺されたように赤く腫れ上がっている。脇に畳んだハンモックを抱えた彼は密林で一眠りとしゃれ込んだところ、このようになってしまったのであろう。砂浜をしばらく歩くと砂の城を黙々と作る獣人族の少女を見つけた。頭に付いている耳が印象的だ。背が妙に低く弱々しくも健気な様子の彼女を見て、少年は嗜虐心が刺激されたような気がした。太陽が燦々と照りつけ、自分の体を刺してくる鬱陶しい虫がうようよいるこの環境に苛ついていた少年はストレスのぶつけどころを探していたのだ。「なぁ〜にやってんだァ⁇チビ」不気味なほどの猫撫で声で少女に近づく。城を近くで見てみるとメダルを飾り付けていた。(「オイオイ...“これ”の持つ意味知らねぇのかよ...」)心の中で呆れながら悪知恵を働かせる。ガキを騙してこのメダルを奪い取り、メダルを血眼になって探す他の学生に高値で売っちまうか、と。

Ermun@D1
「あっ、こんにちは!…え、えっとね!砂のお城つくってるよ!…お、おっきいやつ!」ぺたぺたと砂の城を叩いて固めていた右手を休めると、話しかけて来てくれた灰色の髪の長身の上級生の方向へと振り返る。体内魔力を集中させると魔力析出で一点に固め、迷惑な同居人を仮死状態にする。こうしないと正常な視界を維持することが…いや、なぜだろうか?この上級生だけはエルムンの幻覚の世界において正常な形で認識できるようだ。疑問に思った少女はすぐさま問いかけるが求める答えは返ってくるのだろうか?「あ…あれ…?おにいちゃんなんで…ち、ちゃんと見えてるの…?他の人とか物とかは…エル…ちゃんと見えないのに…。」

IDOLA@D5
「....あ?ちゃんと見えない⁇なに言ってんのか全く分かんねぇんだが...」いや、少年は薄々気づいている、この少女は体の中に魔性の物を飼っているということが。華奢な肢体の中では悍ましく蠢く物が潜んでいるということが。少年は彼女からほんのわずかに漂う“箱”と似た瘴気のようなものを感じ取っていた。(「世の中色んな奴がいるんだな〜、気の毒だがコリャもう手遅れなんじゃね」)己の私見から無慈悲な考察を頭の中で考える。たとえこの学園の医療魔術を駆使したとしても彼女に巣食う寄生生物を取り除くのは難しい、と。それはそれとして、そんな哀れな少女を騙し、略奪する...(「なんか余計興奮してきたなァ...」) 外道である。 「ま、いいや。じゃ俺とゲームして勝ったらその答えを教えてやんよ。おまけで俺のコインもやるぞ〜」さすがはこの学園きってのクズ、相手の悲劇的状況をも交渉材料に加えるのも辞さない。

Ermun@D1
「わぁ!おにいちゃんほ、ほんとに!?…げ、ゲームする!おしえてほしい!エルがんばるよ!」流石上級生だ、一人で何年も悩んでいた事の解決策のヒントがこれで得られるかもしれないと少女はわくわくした気持ちを隠せずにいる。そのゲームの内容が気にならないのかと言われればウソ
になるが、それよりもわくわくが勝ってしまうのはやはりお年頃というものだろうか?動かない左手をぶらんぶらんとさせながらぴょんぴょん跳ねるその姿は意外にも痛ましさを感じさせないかも…しれない。

IDOLA@D5
「(うぉ“ぉ”...ひ、左手...)じゃあ簡単にルール説明しとくか。まあコイントスだよ、知ってるだろ?あいにく俺小銭持ってねぇからメダルを代わりに...ってオイオイマジかよそうだった...メダルはとっくのとうに奪られちまってたな...わりいな、オマケのメダルはナシだ。お前の求める答えしかあげられねぇ」大げさにズボンのポケットをまさぐり、思い切り落胆したような表情を見せる。もちろん、彼が言っていることは真っ赤な嘘。彼はメダルを持っていた。(「まあ見るからに俺の情報だけを望んでるようだしこれでも食いつくだろ」)汚い思考を巡らせる。どうやってコイツを騙してやろうか、と。「俺がメダルを持ってたらそれを使えたんだが...しょうがねぇ。すまねぇがお前のメダルを貸してくれなぇか?お前がトスしてもいいんだが、その左手じゃ無理そうだし...俺がトスしてやるからよ」、と彼は少女の方に手を差し伸べる。

Ermun@D1
「うんっ!…わ、わかったよ!すこしまってね…うーん…と。はい!おにいちゃん!」メダルを使うのだから、メダルが必要なのだろう。という程度の認識しか持てないのはエルムンという少女の年齢のせいもあるだろうがその大部分の理由はそうとしか感じさせないような軽快で巧みな話術、そして見た目に反して老獪でからかい上手なその思考のせいと言ってほぼ問題はないだろう。相手のペースに乗せられて居るとはつゆ知らない少女は疑いもせず自分のコインを貴方の手の上に乗せ、コインゲームの合図を待つのだった。

IDOLA@D5
「ありがとよ。え〜とじゃあ...こっちの面が表でこっちが裏な」右手でコインを受け取ると、一応表裏の確認を済ませる。賭け事にはこういう細かい配慮が大切であるためだ。「んじゃ早速始めっか」一通りの確認を終えると、ポケットに突っ込んでいた左手を出し、メダルを投げる体勢を取った。「俺は裏を選択するぜ、お嬢さん。投げたメダルはよ〜〜く見ててくれよ?」自らの勝利をもぎ取るために相手の選択を奪う非情さよ。そして天高くメダルを弾く。数秒の滞空時間を得た後、メダルは少年の右の手の甲へ着地、するやいなやで少年は左手で蓋をした。「確認なんだが、お前が勝ったらお前が求める情報を、俺が勝ったらお前のコインをいただくがいいんだよな?」相手の返答を待った上でその蓋を開くようだ。

Ermun@D1
「あぅ…うん、負けちゃったら…し、しょうがないね…ほんとうは、ど、どうしてなのか聞きたかったけど…」ルールを守ることが大事なことであるというのがこのくらいの年の子供の絶対不変の正義である…というのは今更口にするまでもないのかもしれないが…エルムンという少女もまたその例に漏れず、ルールは大事だと再び頷いて確認を新たにする。それに、こういうものは運の勝負の筈…と少女は思っているのでこれで負けたとしても諦めが付く事だろう。それに、意外と楽観的に物事を考えている少女は勝った後の事を考えている時間の方が多いのだ。

IDOLA@D5
「ハハっ、交渉成立ぅ〜。そいじゃ開くぜ....」少年が手の甲から左手を離すとそこには....輝くメダルの裏面があった。「......俺の勝ちだな」もちろんこの勝ちにはイカサマが存在している。彼はポケットに突っ込んでいた左手で自分のメダルを裏向きで密かに隠し持ち、メダルを受け止めるとき左の親指で固定し、隠していた自分のメダルを、受け止めた少女のメダルの上に重ねながら左手で蓋をした。これで彼は必ず裏の出るコイントスを完遂したのである。
「......まあ俺だけがメダル貰うのもアレだし、お前が求める答え、特別に教えてやるよ。参加賞ってとこだ」流石にここまで少女をいたぶるのは若干の抵抗があったのか、彼には似合わない優しさのようなものを見せる。彼は顔の右半分を覆う黒い包帯を解き、文に起こすのが忌々しくなるほどのその悍ましい形相を少女に見せつけた。「お前が俺のことを正常に認識できた理由....その答えは俺の体は魔族になりかけてるからってことだよ。お前、魔物かなんかに取りつかれてんだろ⁇つまり俺とお前は同族だってこと。同族の身体は正常に見えるってことだ」嗤いながら自分の私見を明け透けに話す。「さて、じゃあこのメダルは俺が貰うぜ。あばよ、バケモンになりかけのかわい娘ちゃん」包帯を締め直し、2枚のメダルを弄びながら、少年は砂浜を去って行った。
Ermunさん (80m8ceok)2021/9/5 01:29
04/09/21 あめ じぇふりーせんぱいはおなじくらいのとしなのに、もう5ねんせいになっててすごいなっておもいました。

Ermun@D1
霊獣カワウソ。それは読んで文字の如く川に存在するという伝説の存在であり…相対した存在の心の中を暴くといわれる魔法生物…だと誰かに吹き込まれたエルムンは無人島という川がある場所にはきっとカワウソもいるに違いないと冒険の旅に出ていた。「川にいて、かわいくて、ウソをあばくから…カワウソ…す、すごくかっこいい…きっとかわいくて、かっこいい…」紺色のアストランティア指定の水着の胸に貼り付いた、えるむんと書かれたワッペンに右手を当ててぼんやりとまだ見ぬカワウソに思いを馳せる。そんな具合だったが故に次の瞬間には前に居たと思われる誰かにぶつかり彼女は川の中に頭からダイブすることになったのだった。

Geoffrey@R5
夏、熱い、無人島、ブートキャンプ…「あの鯖読み婆め、またろくでもねぇことを考えやがって…。」パチャパチャパチャと川の水を足で叩く。海は嫌いじゃないが、さすがに炎天下で塩水がまとわりつくのは好き好まない。川の周囲には多くの植物が生い茂り、大学の植物園の中でも見たことがないようなものがあって程よく日陰を作ってくれている。「ブートキャンプっつうクソイベント開催中でなければエルフにとっては割りと良い穴場スポットなんだがオ…。早よ終わらねぇかオォ~。」パチャパチャパチャ、端から見れば小さな子供が水遊びをしているようだ、だが、これでも米寿、こうやって音を立てて川の中の魚たちの反応を伺い、今日の昼飯を狙っているのだ。魚の反応があれば水に浸かっているコードから電流が流れ魚を仕留める考えだ。まあ、そんな静かな一時はそう続かないのがこの大学のお決まり。俺に軽く誰かがぶつかるとそのままぶつかった誰かは川に落ちた。すると、その音に驚いた魚をが跳ね上がった。「お、」俺は迷わず川に電流を流した。知ってるか?水って電気が流れやすいんだぜ。たぶん落ちた誰かは感電した。俺は知らん顔で魚を仕留めた。

Ermun@D1
ビリッ!と体に走る電流に対し、痛いという言葉を発する前に意識が川の流れに溶け出して流れていってしまう。エルムンの体は力を失いぷかぷかと尻を出した状態でそれを追いかける。きっと仕留められた魚も一緒に流れてくれるのだろう。実はエルムンという少女は泳げない為に自分自身では水に浮くことすらできなかったのだ。それが今はどうだろうか?水に浮くどころか水の流れにそって移動までしているではないか!これは実質今年の夏は川で泳ぐことに成功したと言っても良いだろう。この事が日記に書けないのは残念で仕方ないのだが。

Geoffrey@R5
程よく冷たい川の水を歩きながら電流に感電して浮き上がった魚を拾う。お、5匹もいる。やった。拾っていると先ほどぶつかって川へ落ちた奴が流れていた。「………。」俺は両手で魚を抱えながら真顔でその様子を眺めた。「………。」葉の擦れ合う音や動物たちの鳴き声、川のせせらぎ。それら天然BGMのなか人が流されていく様はとてもシュールだ。「………おい。」へんじがない。ただの しかばね のようだ。「………おい。」へんじがない。ただの しかばね のようだ。「………おい。」へんじがない。…マジで屍にしたかも知れん。「………おい!」いやいやいや、さすがに、さすがに無いだろう!やめろよぉそういうの!もう!冗談はよし子ちゃん!「………おい、マジで頼むやめてくれオ。」……………へんじがない。ただの しかばn「おぉぉぉぉぉぉいぃぃぃぃ!!!!やめろよぉ!爺の心臓なめんなぁ!そういうの本当弱いんダオ!!!!!????」川に潜ってもいないのにビシャビシャになっている俺は両手に魚を抱え、コードでしかばね(仮)をつかんで川から上がった。「ザオ○ク!ザオ○ク!ザオ○ク!やめろぉ!生き返ってくれぇぇぇ!!!」某ドラゴ ンなクエストの蘇生魔法を連呼する。へんじがない。 ただの しかばね のようだ。

Ermun@D1
ザオ○ク!ザオ○ク!と連呼する声を何処か遠くで耳にする。あぁこんなこと前にもあったな…とどこか他人事の様にエルムンは感じていた。前回は…あぁ確か中庭でのドラゴン論争に巻き込まれた時だったか。あの時も確かこんな風にどこか心地よい声とふわふわとした浮遊感の中ぼんやりとしていたっけ…等と考えていた意識を誰かがぎゅっと引っ張りおろす。「キシシッ…アンタ死にすぎニャァ。こんなんじゃあいくら命があっても足りないニャァよぉ?アタシに体を渡しなよ…その方がアンタもきっと苦しまずに済む…」そんな声を振り払う様に少女は目を覚ます。幼い顔の少年…?に必死に呼び起こされている状況から推察するに溺れていた自分を同学年の男子に助けてもらったのだろう。「あ、ありがとう…ご、ごめんね。溺れちゃってた…のかな…。あ、えっと。エルはエルムンだよ。おなじ一年生。もう大丈夫。」相手を安心させる為に自分で自分が誰であるかがわかっている事をアピールしてみせるのだった。

Geoffrey@R5
へんじが返ってきた。どうやら俺の手はまだ汚れていないようだ。「よ、良かったぁ!生きてたオォ!まだ屍じゃなかったダオォォォ!」分かりやすく安心した表情で地面にしゃがみこんで大きく息を吐いた。ぶっちゃけると水死体とかトラウマ属闇科の地雷にストライクショットなのでご遠慮願いたいのであった。ま、今回の元凶は俺なんだがな。ところで、水死体(仮)こと1年生のエルムンなる少女は自分で溺れてしまったと勘違いしているらしい。ここで素直に『俺が電気をビリッとやって殺しかけました!』って言えるわけがないので、話を合わせて、俺の殺人未遂を闇に葬り去った。反省はしてる。でも、たぶんまた同じことするかも知れねぇから二度としないとかは約束できぬ。エルムンの自己紹介を聞くにこの少女は俺を同年代のガキだと勘違いしているらしい。慣れてはいるが今訂正しておかないと後が面倒そうなので俺も自己紹介をしておこうか。「えっと、俺はジェフリーダオ。おま…じゃなくて、君より年上で5年生ダオ。ええっと君はここまで何しに来たんダオ?探し物?」初対面の少女にいきなりお前呼びはさすがにできねぇ。

Ermun@D1
「は、はわわっ…!ご、ごねんなさい!!じゃなかった…ごめんなさい!」完全に予想外だった。忘れていたことだが、アストランティアでは学年と年齢は必ずしも一致しないのだ。つまり、自分と同じ年齢だったとしても自分より優秀であれば当然学年は上になる。ましてこの少年は自分より年上…恐らく12,3といったところだろうか?なのだから当然目上の存在だったのだ。しかし、それであるならばきっとカワウソの事も知っていることだろうと、早速問いかけてみることにする。「あのね!か、カワウソをさがしにきたの!…伝説のいきもので!川にいて!ウソをみぬくの!」

Geoffrey@R5
「ぬぅぅん。誰が悪いって訳じゃねぇのにすげぇ罪悪感…。」知らないとはいえ殺しかけた奴に謝らんでくれ。無いはずの良心なるものが痛む。なんとも言えない表情で天を仰いだ。お空、青い。っと現実逃避なんぞをしているとエルムンがなにやら探し物をしていることを知る。「うぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅん。」たっぷり長い相づち+肺がこぼれそうな程のため息をついた。…カワウソは知ってるけどお前の知ってるカワウソは知らん。なにそのカワウソ?ヨウカイ?桜羅国原産の妖怪か?ここは話を合わせるべきか?いや、普通にめんどくせぇんで却下。んじゃ本当のことを言うか?カワウソは川にはいるがウソは見抜かねぇよ。って言うべきか?うーん、めんど。「存在は知ってるけど生体はあまり知らねぇ…じゃなかった、知らないオ。ウソを見抜くのか~。それって誰から聞いたダオ?」まあ、とりあえず面倒事の元凶であろうガセネタを垂れ流した奴を今度処すことは決定した。「カワウソ探すなら俺も手伝おうか?こっちも色々(殺人未遂)しちゃったし。」

Ermun@D1
「うーん…アルガちゃんっていう…れ、レインベールの…子…。」わかりやすくしょんぼりとうなだれる。どうも騙されるのは今回がはじめてではないのだろう。しかし彼女が信じてしまうのはそういう生き物がもし本当に居るのであれば見てみたいと思ってしまうからなのだ。「あ、ううん!いいの!ジェフリーくん…さんの…じ、じゃまはね!…しないよ!いいこだから!」右手をぶんぶんと振り、ついでに体を左右に振ることで左手もぷらんぷらんと…振る?まぁ、慣れたものだ。「でも、もし次に…あ、会えたら…困ってたら…たすけてほしいな!」そう言ってお辞儀をぺこりとする。そろそろ帰らなければ下級生のメダルを狙う様な怖い上級生の餌食になってしまうだろうから。
Ermunさん (80m8ceok)2021/8/28 00:54
27/08/21 晴れのちくもり えぴそーどせんぱい、どこにいっちゃったんだろう…エルはどうすればよかったのかな…ごめんなさい…

Ebisword@R4
(おやつの時間。空は晴れて、夏にしては涼しい気候で過ごしやすい。こういう日ばっかりでいいのにな、とエピソードは思いつつ、1年生が授業を受けている錬金術の教室へ向かう。手には小さな紙袋と、その中に小分けに包装されたお菓子があった。あの約束、覚えてるかな。と脳内に小さなネズミの少女を思い描き、錬金術の教室を廊下から覗き見る。中はそろそろ授業が終わる頃だろうか?その生徒たちの中には、きっと貴女もいることだろう。自分以外誰にも聞こえないだろう、小さな声で「がんばれ」と見つけた貴女を応援して、エピソードは授業が終わるのを待っていよう。)

Ermun@D1
この季節、この時間の錬金術の教室はうたた寝をする生徒も減り、程よく消化された昼食が脳に活力を注ぎ込む事で集中力を支える。時折薄いカーテンが空に踊る鳥のさえずりと緑の形に膨らみ、カリカリと石の天井に反響する羽ペンの音によって押し返され波を作る。こんな日にお外でピクニックに出かけられたらどんなに幸せだろうと思案に耽る少女が、何度目かの教師からの視線による授業の世界への誘いを無視して口から溢れる妄想を拭う。突然、授業の終わりを知らせる鐘が学校中に響き渡り、少女の体はビクッと恐怖に跳ねる。しかし間をおいてにんまりと笑い大きな声で先生に別れの挨拶を行う、ため息と困ったような微笑みを背中に受けながら教室を出ると、そこにはいつか見た先輩…名前を失念してしまったが、先輩。の姿を認め、にんまりとした表情は更ににこにこと輝き走り寄る。「エビソードせんぱい!こんにちは!!」今日もきっと楽しい一日になりそうだと笑ってみせて。

Ebisword@R4
(ようやく鐘が鳴って授業が終わる。教室の中をもう一度覗くと、にこにこと笑う少女、エルムンが大きな声で挨拶をしているところだった。そうして外にるんるんで出てきた少女はエピソードを見て大きな声で挨拶をしてくれる。ちょっと違うけど。)「惜しい!エビ、じゃなくてエピね。エピソード。でも殆ど覚えてるからエビソードでもおっけー!こんにちは。エルムン」(貴女と視線を合わせて、エピソードは貴女と同じようににっこりと微笑んだ。朗らかに笑う貴女を見ていると、兄や姉になったような気分になった。あの二人もこうだったのだろうか。さて、本題はそれではなく。)「そういえば、お菓子を作ってきたんだ。チョコレートのお菓子だよ」(みんなにバレないように、エピソードはひそひそ話で話しかけた。)

Ermun@D1
「わぁーー!チョ…むぐぐ。」危ない。喜びのあまり声のボリュームが大きくなりそうだったものをあわてて自らの右手で調整する。授業の道具などが入った肩掛け紐のついたかばんのふたを片手で開くとここにいれて!とぴょんぴょんと跳ねてかばんを相手に向けてアピールする。「エビソードせんぱい!あのね!…あ、あのね!いっしょに…おやつたべようよ!たのしいよ!」ご機嫌は最高潮と呼ぶに相応しく。最早魔力析出による痛みなど少女にとっては気にならない程の幸福感。ただのお菓子一つでこうまでなるのか?否である、これはただのお菓子ではなく。エルムンという少女のために先輩が時間をかけ、思いを込め、教室の前にまで来てくれていた。その事実が、その気持ちが少女の体から痛みを忘れさせたのだろう。

Ebisword@R4
(こうもぴょんぴょんと跳ねて喜んでくれるなら、作ってきた甲斐があるというものだ。小さな少女に慈しむように笑顔を送り、アピールされた通り鞄に入れてあげると少女からのお誘い。レディの誘いを断る訳もない。このあとはちょうど授業もないことだし。)「あはは、いいよ、レディ・エルムンのお誘いとあれば喜んで。この時間だったら中庭が空いてるかな?」(最初に会ったときも思ったけれど、相変わらず可愛らしい少女だ。表情や言葉、動きのそれぞれから人に愛される要素が見えていたし、エピソードもどこか兄妹に近い気持ちで貴女を見ている。この子はきっといい子になるなあ、と兄目線で。……さて、では中庭に行こうか。エピソードは貴女に左手を差し出そう。左手は、どうやら不自由なようだから。)「行きましょうか、レディ」(悪戯っぽく笑って、エスコートしよう。)

Ermun@D1
大きな手に自分の手がすっぽりと収まるのを見るとふふふと微笑みが自然と溢れる。ニコニコと笑顔で手をつなぐと中庭までの道のりをお散歩感覚で歩いていく。道に迷わない安心感だろうか?喧騒から守られている安心感だろうか?いや、細かい気持ちの出どころなど探るほうが野暮なのかもしれない。エピソード先輩という大きな優しい存在に今自分は安心しているのだ。「きっと…あめがふる日があるから…はれの日は…き、きもちいいんだね。」そうひとりごちた問いは太陽を受けて反射する中庭の芝生が答えてくれた気がしていた。

Ebisword@R4
(小さな手を繋ぐ。その穏やかな暖かさが、この少女がいることを実感させた。中庭の芝生は僅かに反射して目に鮮やかな碧を見せてくる。その中の1つのベンチにエピソードはエルムンを案内して、座ってもらおうか。一応ハンカチでも敷いておこう。エスコートをし終えて、それから貴女に、)「チョコレートブラウニーっていうの作ってきたんだ、簡単に言うとチョコケーキみたいなやつだね。エルムンの口に合うといいんだけど……」(そう言って不安そうにエピソードは貴女を見よう。貴女の鞄にある袋の1つからチョコレートブラウニーを取り出したなら、粉砂糖が軽くまぶされた一口大のブラウニーが3つ入っているだろう。お味やいかに……!)

Ermun@D1
料理に重要な要素は大きく分けて3つある。味、匂い、見た目だ。もちろんここに食感や音が加われば言うことはないが、そこまでの基準を満たす料理ともなると3つ星レストランのメニューでもなかなかお目にかかれないだろう。しかしこのブラウニーはどうだろうか?まずは見た目は黒と白のコントラストを縁取る黄金比の曲線が美しい絵画を作っている。夏の陽気は出来たての熱を失わせることなく少女の舌に伝え、人肌ほどの温度は甘い香りと味を口腔内に届ける事に一役買っう。表面の焼けたチョコに歯を立てるとその力は内側のふわりとした層に伝わり、小さな歯型の断層がブラウニーに残る。「うんっ!…お、おいしいよ!!」感動を伝える少女の喜びの声はきっと…髪を撫でる風が中庭から空へ、星の輝く場所まで運んでいくだろう。

Ebisword@R4
(エルムンが味わっている間をエピソードはそわそわと落ち着かない気持ちで待つ。五秒かそれくらいだろうか、ようやくエルムンが一口を飲み込んで一言。「おいしい」と。それだけでもうエピソードは満たされた。十分すぎるほどの称賛を得て、安堵に胸を撫で下ろす。)「おいしい?よかった!ちょっと苦いかもなーって思ってたから、お口に合って何より!」(エピソードは笑顔で、そのときにギザギザの歯が軽く見えるだろう。さて、エピソードも自分用に取っておいたブラウニーを一口。……うん、悪くない。もう少し焼き時間は短くしてもいいけど、味はきっとこれくらいがちょうどいいだろう。「久しぶりだなー誰かとおやつ食べるの」(前に食べたのはいつだっけ、と。)

Ermun@D1
「…ひ、久しぶりなの?…あ、あのね!エビソードせんぱいがよ、よ、よかったら!」私が一緒に。そう答えかけた所で言葉を切る。よくよく考えてみればエピソード先輩のあの顔に加えて、この性格だ。彼女の一人や二人居ないはずもない、自分があんまり関わってもいいのだろうかという疑問がある。もちろん少女の気持ち的にはピクニックの相席という栄誉ある席に自分が立候補したい気持ちもあるが…とりあえずこの場は相手の顔を様子見することで反応を伺うことにしたのだった

Ebisword@R4
「あんまり誰かとおやつを食べようとか思わないからねー。……ん、どうかした?」(よかったら、と言ってその言葉をつぐむ小さな少女に、エピソードは優しく笑んだ。かわいらしい後輩の頼みであるからなるべく聞いてあげたいし、一人の友人としても同じだった。貴女よりもいくらか大きな一口でブラウニーを食べ、もぐもぐと。口にチョコレートの甘い香りとそれを追いかける仄かな苦味がふわりと広がる。ブラウニーはしっとりしつつも余分な水分は一切なく、飲み込んだあともチョコレートの香りが鼻腔をくすぐった。やっぱり自分は料理上手なのだ、と再認識した。)

Ermun@D1
「えと。えーっと…えびそーどせんぱいは…すきなひとっているんですか?」じーっと瞳を見つめると、決意を固めて言葉を口にする。そしてふとこれではまるで告白しているようではないかと気付いてしまい、真っ赤になった顔をそむける。…しまったこれではますます告白しているようではないか。そんな考えばかりが頭をよぎり、いっそ魔力析出を切って狂気の世界に戻り何も見なかったフリをするのもアリなのではなかろうかと思ってしまうのだった。「え、えと…その…ち、ちがうんです…わ、わ、わすれてください…」

Ebisword@R4
(聞かれた質問に、思わずびっくりしてしまったのは仕方がないことだと思いたい。というのも相手は年端も行かぬ少女だし、少しボーッとしている印象だったから、そんな相手から「好きな人はいるんですか」なんて聞かれたらびっくりするだろう。それから真っ赤な顔を背けて「忘れて」と。あー……、こういうときはどうすれば正解なのだろう。ただ隠すことでもないし、恐らくエルムンもお菓子をくれたことが嬉しかっただけだろう。一過性のものだ、と割りきってエピソードはエルムンの頭に手を置いた。ぽん、ぽん。妹を安心させるように、エピソードはそうした。いつかの兄と姉がそうしてくれたように)「うん、大丈夫大丈夫。ちょっと恥ずかしかっただけだもんな。大丈夫、だいじょうぶ」(穏やかな声音は、朗読をするときのようで。そうしてやるべきだと、今はいつかの兄と姉を演じていた。)

Ermun@D1
完全にしくじってしまった、これでは告白をしたと同義だ。頭にぽんぽんと置かれる手がますます顔の熱を火照らせる。最早さっきまで見れていたエビソード…エビドーゾ先輩だっただろうか?の顔は二度とまともに見ることはできないだろう。頭の中が考えにならない考えで埋め尽くされる。ただただ自分がここに居ても迷惑ではないか確認したかっただけなのになぜこうなってしまったのだろうか?うあうあと声にならない声で頭の手に返事するが、一念発起するとエピソード先輩に向き直り改めて誤解を解くために言い直す「え!え、えびどーぞせん、せんぱい!…あの!もし彼女とかいなくって!め、めいわくじゃなければ!!…一緒にいたいです!!」(これは終わったなとぼんやり他人事のように思う昼下がりだった)

Ebisword@R4
(盛大に名前を間違えられながら告白されてしまった。あー、下手に妹のように扱うのはどうやらよくなかったらしい。嗚呼。エピソードの心に陰りが生まれる。それは女性の告白を断るということに対してではなく、そうさせた自分に対する愚かな悔いだった。失敗した、と後悔しながらエピソードは顔に微笑みを張り付ける。そうしてゆっくりと手を貴女の頭から離して、言葉を告げることを決めた。)「彼女は……いるんだ。だからエルムンの言う関係にはなれない。ごめんね」(微笑みながらも、真剣に。友達として一緒にいれると言おうか迷ったが、その愚かな優しさが二人の女性を傷つける可能性があることを理解していたから、エピソードは言わなかった。自意識過剰でも、それを言うことはエピソードにはできないし、それ以上を告げることもなかった。ざあ、と中庭の木々が涼やかな風に揺れる。この空気も、この心も全てさらってほしかった。沈黙が、静寂が、無言が、しばらく満ちていることだろう。)

Ermun@D1
「あっ、あうあう…あう…その…あの…えっと…ぐずっ…そ、そう…です…」この空気は間違いなく自分が作り出してしまったものだ。たとえ相手に勘違いさせた上で引き出した発言だったとしても結果的に彼女が居る以上自分があまり一緒にべたべた居ると迷惑になってしまうのは間違いないだろう。つまり、結果的に自分の聞きたかった答えが。そして望まない形の答えが帰ってきてしまった形になってしまった。「か、かのじょさん…い、いますよね…そ、そ、それはいますよね…」なんとか絞り出した言葉と一緒に涙が落ちる。耐えなければ、耐えなければ。そう思うほどに溢れてきてしまうのだ。

Ebisword@R4
(泣き出す少女に、余計に心が軋んで壊れそうになる。考えたくないのに。勝手な期待にさらされて自分がうずくまりたくなる。しかしそんなことは許されない。)「ごめんね、エルムン」(うう。嗚呼。あああああああああああああああああああああああああああなんでなんでなんで僕ばっかりなんでなんで僕が僕に僕をあ、ああああ、い、あ、いたい。)「ぐ、ぉえ」(嗚咽を必死に殺し、エピソードはいつも通りを演じる。演じろ、いつも通りであれ、自分よりも辛い少女がいるのだから、演じ続けろ。まだ幕は降りてないんだから、演じるのを止めるな。やれ、やれ、やれ!)「ごめんね、エルムン、僕はもう行くよ。それじゃ……また」(そう言うとエピソードはベンチを立とう。貴女から見てもわかるくらいに顔が青白くなっているだろうが、微笑みが崩すことなく立って去ろうとするだろう。)

Ermun@D1
これは明らかにただ事ではない。このままでは先輩を深く傷つけたまま帰してしまう。優しい先輩の心に傷を付けてしまう。慌てて追いすがり、声を掛け呼び止める。地獄への道は善意で舗装されているという言葉があるように、きっとこの行動は地獄への水先案内人に相違なく。ダンテの旅路を導くベアトリーチェの望みに他ならなかった。「ご、ごめんなさいごめんなさい…ご、ごめんなさい…。ちがうんです…ち、ちがうんです…」足元にすがりついて大声で誤解だと泣く少女が必死になればなるほど周囲からの認識は守りたかった先輩を悪者へと仕立て上げられていくのだが、それを理解できるほどエルムンという少女にコミュニケーションの経験はなく、冷静な判断力もなかった。

Ebisword@R4
「う゛、ぅぅ……!」(吐き気からか、顔から血の気が引いていく。周囲の視線が突き刺さる。誰かの勝手な失望が、誰かの勝手な嫌気が、誰かの勝手な怒りがエピソードに突き刺さっていく。やめろ、そんな目で僕を見るな。僕は元々こうなんだ、理想を押し付けるな。僕は。ぼくは。)「やめろ!!!」(腹式呼吸なんて関係なく叫んだ。だからそのときに、喉が僅かに切れ鉄臭いそれが上がってくる。喉を掻き毟りたくなる熱さと、安定しない視界がエピソードをその場にうずくまらせた。額には脂汗が浮き、顔を覆う手は定まらずに震えている。)「やめろ、げほ、やめろ、やめろ、僕は。僕は、僕は、」(そうだ。苦しい。呻く。朦朧とする。震える。痛みが走る。嗚呼、そうなのか。きっと、そうなんだ。)「間違ってたのか」(エピソードは杖を取り出し、一度振るった。するとたちまちその場から忽然と消えていよう。行き先はその場の誰にも知れず、ただエピソードへの失望だけがそこに満ちていることだろう。涼しい風が、青い空が、その場にいない誰かを責めていた。誰かを、 責めていた。)
Ermunさん (80m8ceok)2021/8/19 03:47
19/08/21 晴れのちくもり あるがちゃんとおともだちになりました。ちゃんととうめいになれてすごいなっておもいました。またあいたいな!

alga@R1
……(じっと廊下の壁に背後を張り付けて、壁に擬態をしているものの、し少し周りが気になって目を開けてみると廊下に人気が無いことに気付いた彼女は「あ、あれれ?!誰かしらは此処を通ると思って脅かそうとしてたのにだーれも居ない?ん〜どうしよう…隠れ場所、変えた方がいいかな?でも動くの面倒臭いからな…」そんなことを早口で言ってはまた壁に擬態をするが、明らかに服が擬態出来ず、バレバレの状態で誰かが通ることを待っていようか。

Ermun@D1
「とるひーよのはるでぃ~ん♪とるひーよのはるでぃ~ん♪」ご機嫌に鼻歌を歌いながら彼女だけが見える幻覚の世界を今日も元気に散歩するのはエルムンという魔力を餌に生きる寄生体を脳内に宿した少女。しかし、恐らくは悩みなど無いのだろうその足取りは周囲に蠢く肉塊や結晶塊、筋繊維の廊下等が目に映っては居ないかのようで。そういった幻覚を幻覚であると認識している証拠でもあり、この状況に慣れているという事を推測させる。しかし、その彼女がぴたりとその足を止めた理由はなんだったのだろうか。「…う、うーっん?…むむむむ…むんっ。…お洋服が…張り付いてる…げ、幻覚じゃない…。」保有スキル・魔力析出によって脳内に寄生した寄生体が食らう体内魔力を0になるまで結晶化させ、寄生体を仮死状態に追い込む。脳内に魔力塊が出来てしまう関係上…これをすると激痛が彼女の頭に走るのだが、正しく世界の形を認識する為には寄生体を休眠させるしかないのが現状なのだ。

alga@R1
(ん?誰か来た!)そう思った彼女は相手のことを驚かそうとしたが、貴女が服が張り付いている、幻覚じゃない…。と言った後に(今だ!って飛び出そうかと思ったけど、もうバレちゃってるしな…ん〜普通に話そうかな?)と思っては擬態を解き、貴女と目線を合わせるようにしゃがんでは「あーっと…貴女の幻覚じゃなくて、私のスキルが失敗して服が張り付いて居るように見えてただけだから大丈夫だのよ!あ、名前言ってなかったね。私アルガ、アルガ・マリーノ!一年生でレインベール寮に所属してるの!それで、貴女の名前はなんて言うのかな?」貴女を怖がらせないように笑ってそう聞てみようか。

Ermun@D1
「す…すごい!い、いちねんせいなのに…もうそんなことができるんだ!…あ、え、えっと…エルムンだよ。ディアス…なんだっけ?…の。1年生なんだよ。」固有スキルが存在せず、自身の在り方を仮に固有スキルと呼んでいるエルムンからしてみればアルガのそれは同じ一年生と思えないスキルの練度だった。いっそ妬ましい位に羨ましいという気持ちを前向きなエネルギーに変えられるのは恐らくエルムンという少女の持ち前の性格によるものなのだろう。「すごいなぁ…ほんとうにすごいなぁ…い、いいなぁ…。」

alga@R1
「あいや、これは固有スキルで…おまけに、貴女のことを脅かそうとして待ってたら服が擬態出来てなかったし…え、すごい?失敗してるのに褒めてくれた?!ん〜ありがとう!お陰で自信が持てたよ〜!」そう言っては貴女に挨拶のハグをしようか。その後に「あ、名前はエルムンちゃんって言ったよね?そうなんだ〜自分と同じ一年生か〜寮はディアスティレ寮なんだね!誇り高く、向上心を持ち、己が道を征く者の寮!エルムンちゃんって何か将来の夢みたいのってあるのかな?」と聞いてみようか。

Ermun@D1
「1年生でちゃんと固有スキル使えるひとって…め、珍しいんじゃないかな…?…暴走させがちだったり、コントロールが苦手だったり…そ…そ、そもそも固有スキルを持ってなかったりするとおもう」ハグをされれば照れくさそうに笑って見せて、自分の周りの人間のイメージを素直に伝える。更に重ねられた質問に対してもそのままのスタンスで素直な答えを返すのだった。「もちろん…ゆ、勇者様
みたいな…かっこいいヒーローだよ。…え、エルもヒーローになって世界を守るの。…あとはお嫁さんかな?…お、おはなしみたいな、素敵な恋もしてみたいよ。…あ、あ、アルガちゃんは…どう?」

alga@R1
め、珍しいのかな…?ん〜確かに暴走してた人は見た事あるかも…まぁ、戦闘系のスキルは苦手というか扱えなかったから隠密系のスキルしか持てないんだ、アハハ…」とすこし諦めたような乾いた笑い方をしようか。貴女の回答を聞いた彼女は「か、かっこいいヒーロー!!何それ、良いじゃん!!かっこいいヒーローになって、世界を守るなんて、素敵じゃん!あ〜私も素敵な人と恋愛?っていうのしてみたーい!でも、恋愛をするならあの子としたいかな?」そう言っている中、時計をふと見た彼女は焦った顔をして「あ、やばい!!本返し忘れた!それじゃあ、また今度ね!」そう言って早足でトコトコとその場を去るだろう。
Ermunさん (80m8ceok)2021/8/19 02:11
18/08/21 晴れのちくもり きょうはオリヴィアせんせぇとおひるごはんをたべました。おいしかったです!おべんきょうより、おいしかったです。

Ermun@D1
エルムンという少女が目的地にたどり着く為には3通りの方法がある。一つは誰かに手を引いて貰い連れて行ってもらう方法。もう一つは魔力析出を使い、痛みに耐えつつ正しく世界を認識出来る状態にして自力で向かう方法。そして最後の一つが…長い時間を掛けて迷った果てに運良くたどり付く方法である。待ち合わせの時間から…最早どれだけ時間が経ったのかは分からないがきっとオリヴィア先生は待っていてくれているのだろう。そうであるのであればエルムンという少女の第一声に相応しい言葉は…「せんせぇ~…お、おはよぉ…ございますぅ~。」…恐らくは、ごめんなさいだ。

Olivia@教
「こんにちは、エルムンお嬢様。お待ちしておりました」両手を腰の前で組んだオリヴィアは、深めに頭を下げてうやうやしくお辞儀した。明かりは一つもついていないが、差し込む太陽光のおかげで教室の中は十分に明るい。「もう、お昼ですね。お腹は空いていないでしょうか?」天窓から照り付ける太陽の光を反射して、オリヴィアの金髪には輪のようなきらめきが浮かんでいる。「空いているのなら……踏ん張ってください。そうお時間は取らせませんので。どうしても耐え難ければ、私の昼食くらいなら分けられますが」そう言ったオリヴィアの目線が流れた先。既に実験用具が一通り並べられている机の端に、かわいらしいサイズの茶色い鞄がちょこんと在るのを見つけるだろうか。

Ermun@D1
「お腹空いてるよ!……は、はひ…ふんばります…」そういえば昼前に到着する予定だったのだが気がつけば昼過ぎだった。教室に充満するいい香りの…何かがきっとおいしそうな…何かの存在を主張する。残念なことにエルムンの鼻ではいくらひくひくさせたところでその何かが何であるのかまではわからないが…きっと一部生徒は喉から手が出る程欲しいオリヴィア先生の手作りご飯なのだろう。昼食を一緒に食べれるかもしれない申し出は嬉しかったが…それはやることを終わらせてからのご褒美にするのが良いだろう。「えっと!エルは…ま、まじめないい子だから!…ちゃんと授業をうけます!」

Olivia@教
「はい、お嬢様はまじめないい子です。オリヴィアはちゃんと、分かっておりますよ」普段の授業のときとは違い、板書にも資料にも他の生徒にも割かれることのないオリヴィアの視線は、まっすぐとエルムンに注がれていた。「では、始めましょうか。といっても、今回の範囲は実験器具の扱い方が中心。ただ覚えるだけですから、肩の力を抜いてください」机を挟んでエルムンの向かいに立った教師は、7本の硝子の管が、知恵の輪のように、複雑に絡み合って立方体型を形成している器具を取る。一辺が拳3つぶんくらい、うっかりしていたら落としてしまいそうな大きさだ。「ではまず、ハイゼンベルク管から。これは魔法薬の素材を接触させずに混ぜるためのもので──」幾度となく繰り返してきた教科書的な説明がオリヴィアの唇から再生される。ときおり、そちらをうかがって一時停止を挟みながら。

Ermun@D1
うららかな昼下がりの陽気に加え歩き通しだった体の疲れも相まって、オリヴィア先生の優しい響きの声とくればそれは夢の世界という解を導く方程式に相違なく。少女の頭の中ではキチッと授業を受け、真面目な自分を褒めてもらうという光景を思い描きつつ船をこぐ。「ハイ…配膳…ベル……ぐーーーー…。」きっとそろそろ頭の中では撫でられて居る頃なのだろう、だらしなく口角を上げてご機嫌な表情だ。…さて、ここまではエルムンという少女側から見た時の光景だったが…オリヴィア先生側から見た時にどういう風に大遅刻、居眠り少女エルムンが映っているかは…あまり想像のしたくない光景かもしれない。

Olivia@教
「──しかるに、巻末の図録3にあることさえ覚えておけば試験では……お疲れのようですね」眠気に俯いている少女と目を合わせようと、オリヴィアは躊躇うことなく机に突っ伏した。身体を貼り付けるように平たく乗って、胸が潰れるのも構わず、閉じられているまぶたを下から覗いている。まつげ同士がぶつかりそうなほどにぐいぐい顔を近づけていっても、まるで気づく様子が無い。「……お嬢様……?」オリヴィアは立ち上がった。そして適当な器に水を注ぎ、マッチを擦って湯を沸かし始めた。ぼごぼごと泡が弾ける音が終わると、じょろじょろとポットに熱湯が注がれていく音が続く。「もう少し、固い椅子を出しておくべきだったのでしょうか……」エルムンの隣に座ったオリヴィアが、冷たい指が肌に触れないように、軽く、そっと彼女の頭を撫でていた時には、机上に2杯の紅茶が現れていた。少し癖のある匂いが鼻腔をくすぐる。

Ermun@D1
「むにゃむにゃ…エルは……ちがうもん…エルしらないもん…はっ!?」寝てしまっていたと大慌てで飛び起きる。周囲を見回せばオリヴィア先生は隣の席に移動しており、頭をなでてくれていた様で。最早どれだけの間寝ていたかもわからない。目の前に置かれている紅茶に気がつくとにへらと恥ずかしそうにオリヴィア先生に笑いかける。「え、えへへ…寝ちゃってた…せんせぇ。やっぱり一緒にご飯…た、食べてもい~い?」授業を受けに来たつもりだったが結局甘えることにした様だ。これでは遊びに来たのと変わらないが…錬金術の授業で薬の調合や化学反応等を教わったとしても記憶障害によって抜け落ちてしまう以上これで良いのかもしれない。

Olivia@教
エルムンの肩に手を回しながら、ゆっくりと紅茶を飲んでいたオリヴィアはカップを置いて笑みに答える。「はい。お断りする理由が御座いませんので」と。カップの取っ手をつまんでいた右手は、直ちに鞄へと伸ばされた。だが微妙に手が届いていない……と思っていると。「拡大」ぎゃらこん、がしょしょんと大きな音を立てて右腕の義肢が変形し、関節が外れたみたいに伸びて鞄を掴み。そのまま変形を逆再生して手元まで鞄を手繰り寄せた。「了。食事に移ります」何事も無かったかのように、金属製の右手は生物的な滑らかな動きで鞄の中身を机に並べる。蓋の隙間から香ばしい匂いがする弁当箱、桃色の水筒。それと、硝子の表面に傷がついて中身が曇って見えている、年季の入った感じの小瓶が3つ。「そちらはどうぞ。こちらはわたしの分です。……こっちの中身は美味しくないですから、間違っても食べないでくださいね」弁当箱──具材多めのサンドイッチ、煮卵、少しの果物──と玉ねぎのスープが詰め込まれた水筒を差し出し、小瓶はしっかりと隔離しておく。「腕には……少しだけ、自信があるのです。よく噛んで、ごゆっくりお召し上がりください」無表情が少し柔らかになる。

Ermun@D1
腕には自信があるといって微笑むオリヴィア先生を見てエルムンは一人なるほどな、と納得する。腕にぎゃらこんましーんを仕込んでいるのだからそれはもう自慢の腕なのだろうと少し羨ましそうにオリヴィア先生の二の腕をぷにぷにとつつく。「かっこいい…エルムンもなんかそういう…遠くのものをびゅーんって…と、とれたら…便利なのになぁ。」お話に出てくる巨大ロボに乗った蜘蛛男のヒーローのマネをしてポーズを取って見せる。「そうしたらきっとエルムンだって世界を救う…ゆ、勇者様みたいなヒーローに…なれるのにな……わ!このサンドイッチ…おいしいね!」子供の頃は皆が憧れるであろうアストランティアで学ぶ事で格好いい勇者になるという夢をオリヴィア先生に語る。きっとその昼食の光景は外から見れば仲睦まじい年の離れた姉妹か、親子の様に見えるのだろう。

Olivia@教
「へんひへふよ」小瓶の蓋を開けたオリヴィアは、赤と緑が混ざったふざけた色合いの錠剤を口いっぱいに頬張っている。リスみたいに膨らんだ頬から、飴でもかみ砕いてるみたいな激しい咀嚼音が聞こえた。「……ふぅ。便利ですよ。そのぶん整備も大変ですが、試してみますか?……というわけには、いきませんが」底に貼りついてしまっている錠剤をなんとか取り出そうと、瓶の底を掌底で叩き続けている。「ヒーロー、成れるといいですね。成れるかどうかは分からずとも、成りたい自分があるというのは素晴らしいことだと、私はそう思っております。……マスターの受け売りですが」最後の錠剤がぽろんと飛び出る。がり、ぼり。ごくん。「美味しい、ですか。お嬢様にお褒め頂き、私はとても嬉しいです。ええ、とても。私は、『人に仕える善き侍従』に成りたいのですから」マスターの受け売りを重ねながらスープに口をつけたオリヴィアは、ちょっとだけ不気味な笑みを浮かべていた。
Ermunさん (80m8ceok)2021/8/13 01:44
12/08/21 にわか雨 (この日は何も書かれて居ないようだ。少しシミの残った紙が当日に気分が乗らなかったであろうことを推測させる)

Ermun@D1
この学園はどうなっているのだろうか?騒々しい音に、いよいよこれはきっと幻聴ではないに違いないと魔力析出を使い現実世界を認識可能な状態にすると…やはりというか生徒同士のイザコザが起きており、先日の中庭の大戦争の件もあるのでエルムンは慌ててその場を何故か通り過ぎようとしていたクラウディオ先生を呼び止める。「…せ、せ、先生?!せんせいなんで、い、いっちゃうの!?けんかだよ?!けんか!」先日のような件もあったにもかかわらず本当に心底なぜこの先生は止めることもせず通り過ぎようとしているのか理解できないという気持ちを顔に全面にだして呼び止める少女に…もしかしたらこの様な状況に慣れている貴方はうんざりするかもしれない。

Claudio@教
「…?君は確か…1年生のアイメリア、だったな。確かに喧嘩だが、それがどうかしたか?」(今日も今日とて彼方此方で大なり小なりいざこざが起きている中、平然と歩き去ろうとする彼は小さな生徒に呼び止められる事でやっと足を止め、喧嘩と少女が慌てふためく現場を眺めるが、何を慌てているのかと不思議そうに生徒へと視線を戻す。まるで彼女の反応の方が可笑しいかのような態度だが、これは彼女の人選ミスだろう、相手が悪かった。学生時代から慣れ親しんだと言っても過言では無いこの喧騒が、最早彼の中で標準基準になっている可能性すらある。)「ここは魔術大学だ。不特定多数との共同生活、それも魔術師の卵同士ならば、あれくらいの衝突はあっても可笑しくはない。あのまま流血沙汰に発展するか、当事者以外にも害が及ぶようなら、私も仲裁に入らなければならないがね。」(目線を合わせようと片膝を突きながら、彼の頭に寄り掛かる髪蛇が不安を全面に露わにする生徒と、喧嘩の現場を交互に見比べていよう。)

Ermun@D1
この学園はどうなっているのだろうか?…あまりの現実にもう一度魔力析出を使用し直すが、既に体内魔力は脳内にしっかりと凝固している為にうまく掛からない。とすればこの先生は本当に、本気で。流血するまで止めないと言っていたことになってしまう。幻聴の声でないとすれば…狂っているのは自分ではないということになってしまう。「……せ、せんせぇは…ほんとうに先生なの…?こ、この間も…ドラゴンのことですごい喧嘩になったのに…。」もしかしたら自分は入るべき学校を間違えてしまったかもしれないという気持ちになったが、カイト先生やオリヴィア先生がこの場に居たら間違いなく止めてくれた筈だと思い直し、ここでようやくエルムンもこの先生がおかしいのだという確信に至るのだった。

Claudio@教
(彼の発言は教師として不名誉な見解を持たれても致し方のないものだが、彼の名誉のため弁解しておこう。彼は良くも悪くも、平等なだけであると。)「あの件か……チッ、私はその日丁度地上へ降りていたから、事件の詳細は人伝に聞いた物だが…怒りを通り越して呆れ返ったぞ。」(現場にオリヴィア氏が居てくれたお陰で、当事者以外の怪我人は無し。"転んで医務室に運ばれた生徒"も問題無く帰寮したと聞いた彼は、しかし目の前に居る彼女がその"件の生徒"とまでは聞かされていないのか、苛立たしげに舌打ちをすると処罰を受けた事件の馬鹿共を思う。ドラゴン談義で大暴れした生徒等には、反省部屋での謹慎と一ヶ月間の厩舎清掃処分が下り、かく言う彼もお灸を据えるべく一度毒舌を振るいに行っている。)「自分の面倒も碌に見られない奴を甲斐甲斐しく世話してやる程、私は"できた教師"ではないのでな。無責任と思ってくれて構わんぞ。」(ぶっきらぼうにそう言うと彼は立ち上がり、外で今尚激しい攻防を繰り広げる生徒等を見つめつつ、窓辺に落ちていた小枝を摘まみ上げた左手で、ポイッと枝を窓の向こうへと投げてしまおう。)

Ermun@D1
「自分の面倒も碌に見られない奴を甲斐甲斐しく世話してやる程、私は"できた教師"ではないのでな。」という言葉にエルムンは胸の奥が締め付けられるような気持ちになる。固有スキルも無く、呪文の一つも覚えれず、その癖忘れ物をなくすことも出来ない。まるでお前のような出来損ないに構っているこの時間すら勿体ないのだと言われているかの様な。いや、実際その通りなのだろう。クラウディオ先生は確か古代魔術の有名な学者としての側面も持っているという話を聞いた覚えがある。自分に構っている時間を研究に回してくれたほうがきっと魔術社会のためになるのだろう。「……わ、わかりました。…ぐずっ。…ご、ごめんなさいですせんせぇ。…エルは寮にかえ、かえります。」涙を見せてしまっては、余計な仕事を増やしてしまうと最後まで堪えてその場を逃げるように走り去るだろう

Claudio@教
(彼と少女の身長差では、少しでも俯かれるとその円らな瞳を濡らす涙を彼が見る事は難しい。けれど鼻を啜る湿った音は、しっかりと彼の耳に届いていて。)「…ああ、気を付けて帰れ。今の時期は日が暮れると厄介な、奴が…。」(言い切る前に、逃げるように走り去って行く小さな背中。あの逃げ足ならと余計な事を考えそうになる脳を叱咤し、胸に蟠る行き場の無い、言葉にできる筈も無い感情のむず痒さを噛み殺した。… 自覚はしているのだ、自分の心無い発言で人を傷付けて、そして嫌われる。今更直しようのない悪癖だ、いつもの事だし、慣れて居るとも。)「………チッ、廊下は走るな。」(既に見えなくなった生徒へ向けた筈の、吐き捨てられた言葉は人通りの少ない廊下に虚しく響いて霧散する。それにもまた舌を打ち、彼女が去った方とは反対へ、後ろ髪蛇を引かれるような罪悪感から逃れるように彼もその場を後にするだろう。――窓の向こうに放り出された小枝が、スルスルと蛇へ姿を変えて、人知れず何処かへと去って行くだろう。)
Ermunさん (80m8ceok)2021/8/12 00:13
11/08/21 こさめ きょうはセレーナおねえちゃんと、おともだちになるやくそくをしました。でも、にげてきちゃいました。おともだちになってくれるといいな。

Ermun@D1
エルムンという少女の持つ皆既心食という固有スキルは厳密には固有スキルではなく、一つの器に2つの心、一つの体に2つの命が宿っている歪で特殊な状況を固有スキルとして保有しているだけに過ぎない。従ってエルムン自身の固有スキルというものは実はまだ未覚醒の状態であるのだが…「こ、こんなに練習してるのに…全然わかんない…」昼休みの中庭でエルムンは不服そうに鼻をひくひくと動かし、固有スキルの習得を試すのが最近の日課になっている。実は毎回習得を諦めて終わっているのだが…本人がそれを忘れているのと同時に、ダメダメな自分も固有スキルがあれば変われるのではないかという淡い期待がこの日課を作っているのだ

Serena@R6
お昼時。その時間帯は普段校内で飛び回る事を禁止されているエウロスも、広い場所で飛ぶのを許される時間だ。その時によって彼が選ぶ場所も様々であり、こちらもそれに合わせて外で昼食を取ったり、のんびりしたり。そうして今日エウロスが選んだのは中庭だった。弁当を片手に訪れた中庭では、ちらほらと生徒達の姿も見える。「エウロス、人にぶつからないようにね……って、もう居ない」普段から気を付けろと教えている事ではあるが、それでも念を押そうと横に目を向けるも、先程まで隣で飛んでいた彼は、既に遠くまで飛んで行ってしまっていた。キャッキャとはしゃぎ回るエウロスは、空から中庭の生徒達を見下ろす。そこでふと、人にしては随分ちっちゃい影を見つけた。加えて丸い耳とひくひくと動く鼻を見ていると、どうもじゃれたくなってしまうようで。“キュイ〜!”と我慢し切れない様子でその生徒の周りをぐるぐると旋回し始めるだろう。しかし勿論、突然他人様にそんな事をして黙っている飼い主である筈も無く。「“Shell”。こら、エウロス。人は玩具じゃないのよ、いきなり飛び回っては驚いてしまうでしょう」たった一言呟けば、エウロスは空中でほんのりピンク色の透明な貝殻へと閉じ込められてしまう。おいたをすれば防衛術による捕獲。もう随分昔から定着した、エウロスお叱りの前座だ。「驚かせてしまったのなら、ごめんなさい。悪い子では無いから許して頂けますか?」

Ermun@D1
「は、はわわわわっ!?…な、なになに?なんなの?!」思ったよりも集中してしまっていると、エルムンの周囲を…なんだろうか?多数の動物を混ぜた様な何かが飛び回っている。最もそう見えているのはエルムンだけであり、恐らく現実では有り得ない造形をしているのは自分でも分かっているので…状況から察するに知性の高い有翼の…そう。ドラゴンなのだろうという事は魔力析出を使用して幻覚を抑えなくても薄々感づいてはいるのだが。「驚かせてしまったのなら、ごめんなさい。悪い子では無いから許して頂けますか?」という声とともに今度は海産物を混ぜた様な人影が歩いてくる。どうやらまだ魔力析出がちゃんと働き切って居ないようで、エルムンの視界は歪んだままの状態だ。「え、えっと…ちょ、ちょっとまってください…です。…あ、あと。いきなりで、すこし…お、おどろいただけで…」たどたどしく喋る様子に相手が呆れてしまわなければいいがと不安になりつつも少しづつ視界が脳の激痛と共に本来の世界を映し出していく。見れば先程までの悪夢の住人のような姿のナニカは美しく、少し可愛らしさも残る顔立ちの女性に変わっており…そういえば質問に自分はまだ答えてなかったではないかと慌てて口を開く。「こんにちは…えっと、エルムンっていいます…エルはだいじょうぶです。け、怪我も…してないです。」

Serena@R6
「えぇ、大丈夫ですよ。どうぞゆっくりで」たどたどしく喋る彼女へ、そう声を掛けて彼女と目線を合わせるように膝を付く。その声は穏やかで、優しさの滲む声音ではあるだろう。が、相変わらず表情に変化は見られず、声音と顔が合っていない。「怪我も無いのなら良かった。私はセレーナ・シルヴェストリと申します。そして、エルムンさんを驚かせてしまったこの子はエウロスです」防衛術を解きエウロスの体を引っ掴んでは、彼女の目の前へ。エウロスは叱られてしまった事で若干しょんぼりしながら、“キュイ……”と頭を垂れて謝罪であろう鳴き声を零した。「ちょっとしたお詫びではありますが、困り事があれば言って下さい。出来うる限りで助力致しましょう。あ、勿論、今すぐにとは言いません。いつでもどうぞ」それは、今までエウロスが迷惑を掛けてしまった人には決まって伝えている言葉。エウロスのことに関しては大抵此方の監督不行届なのだから、妥当ではあるだろう。そうして今まで、何度か願いを聞いていた。然し困り事も人によって様々で、おつかいであったり、魔術の指導であったり、代理で課題を済ませたり。彼女は何を求めるだろうか。

Ermun@D1
「あぅあぅ…え、えっと困ってること…ないこともないのですけれども…うんと…えっと…。」自分の固有スキルが無いということをどう説明したら良いのだろうか?そもそも、仮にここで固有スキルの事を説明しても明日には目の前のセレーナという先輩の顔も、名前も、相談したという事実さえ記憶から消えてしまうかもしれないというのに。…そこまで考えて、一つの妙案がエルムンの頭に浮かび上がってくる。「えっと…エルとお、おともだちになってほ、ほしいんです……。え、エルは…その…あんまり人の顔とか…覚えられなくって…おともだちがい、いない…から…。」そうだ、きっと何度も会う人であれば。大事なお友達であれば。日記を読み返した時にきっと思い出せる筈だから…固有スキルの悩みは自分が顔を見た時にセレーナ・シルヴェストリという名前を思い出せた時に打ち明けようと心に決めて。新たな出会いを祝福するように学校の予鈴の鐘が鳴る。きっと、きっと約束だと念を押してエルムンは慌ててその場を立ち去るだろう。もし断られてしまったらと思うと…さよならのかわりに足音を残していくことしかできなかった。
Ermunさん (80m8ceok)2021/8/11 01:10
10/08/21 はれときどきくもり きょうは、エピソードせんぱいにおかしをもらいました。もっとくれるらしいです。うれしいです。

Ermun@D1
ここはいったいどこなのだろうか?ねじれた廊下が空に向かってどこまでも伸びていき、小雨のように降り注ぐ瓦礫や砕石が足元を転がる。何度も反響し、くぐもったような話し声や音楽が耳鳴りのように響いている。蠢く2m前後の人影や結晶の塊、肉塊の柱。未知の世界であるかのような場所を歩く少女はその実この場所がアストランティア魔術大学であることを知っていた。この世界はエルムンという少女の…正確にはその脳内に寄生している寄生体と見る幻聴幻覚の世界の光景なのだ。「あっ…ごめんなさ…あぅあぅっ…ご、ごめんなさい…」ゆらゆらと動くガラクタが集まった壊れた機械の様な…そしておそらく実際は人間であると思われるモノ達にぶつかりながら今日もエルムンは教室を目指すのだった。

Episode@R4
(エピソードは2限目の授業がないので暇だった。次の授業までベンチに座りながら、落ち着いた表情で文庫本を捲る姿がある。喋らなければ綺麗な顔をしているのに、と通りすがった同級生が思ったのをエピソードは知らない。そんな彼の耳に「ごめんなさい、ごめんなさい」としきりに謝る声が聞こえた。なんだ、喧嘩か?と思っていると廊下で色々な人にぶつかりながらよたよた歩く小さな獣人の姿が見える。エピソードは文庫本を鞄に押し込んで少女のもとに駆け寄る。)「危ないよ、ほら、こっち歩いて」(ぶつかりそうになっている貴女の肩にそっと触れよう。怖がらないように目線を合わせ、エピソードは貴女に語りかけるだろう。)「1年生かな……?どこまで行くんだ?着いていくよ」(貴女を安心させるべく、優しく笑う。)

Ermun@D1
「危ないよ、ほら、こっち歩いて」という優しい声と共にエルムンの肩に手…と思われるものが乗る。これはもしや自分が壁や人にぶつかりながら歩いているのを見かねた誰かが手を貸してくれているのだろうかと、それを確かめる意味も込めて魔力析出を発動させる。「す、すこしまってください…です。」だんだんと幻覚と幻聴が収まっていくにつれてエピソードという青年の顔がエルムンの目にもはっきりと認識できるようになっていく。「1年生かな……?どこまで行くんだ?着いていくよ」といって目線を合わせて笑ってくれる優しさにエルムンは心があたたまる思いだった。「えっと…その…錬金術の…教室なんです…オリヴィアせんせいの…」はっきり人間の顔に見えるようになって気づくすこし近い顔の距離にどきどきもじもじしながら、なんとか蚊の鳴くような声で言葉を絞り出す。

Episode@R4
(「えっと…その…錬金術の…教室なんです…オリヴィアせんせいの…」という蚊の鳴くような小さな声は確かにエピソードの耳に届いた。こう見えても耳は良いのだ。今もじもじと恥ずかしそうに貴女が幻聴や幻覚を知覚していたなんて露知らず、エピソードは貴女と共に歩きだそう。)「そっか、じゃあ行こう。危ないから僕の服をしっかり掴んでおいて。シャツの裾とかどこでもいいよ」(流石に手を繋ぐのはよろしくないと判断して、服を少女に掴ませる。貴女の歩幅に合わせて、ゆっくりと歩きだそうか。それから少しして、ふとエピソードは何かを思い付いたように自分の鞄を漁る。出てきたのはお菓子。キャンディ状に放送された幾つかチョコレートだ。)「良かったらチョコ食べる?甘いものは元気が出るよー」(小さい子なら甘いものも好きだろう、という安直な考え。チョコを差し出しながら。)

Ermun@D1
「わぁ!ち、チョコだぁ!!たべて…いいの?」ネズミの好物の中であまり有名ではないが知られているものとしてチョコレートがある。エルムンの舌にも当然かなりのお気に入りの味として記憶されているチョコレートを目の前に差し出されれば大きい先輩への警戒など吹き飛んでしまうのは仕方のないことなのかもしれない。奇しくも甘いもので元気が出てしまう形となったエルムンを貴方は笑うだろうか?もしかしたら笑うのかもしれないが、本来エルムンという少女は明るく裏表のない人懐っこい性格なのである。その片鱗を感じさせるような屈託のない笑顔を見せて自己紹介とチョコレートのお礼を口にするのだった。「えへへ…あ、ありがとうおにいちゃん!…あ、エルはね。エルムンっていう…い、いいます。」

Episode@R4
「ふふっ、ああ、食べて良いよ。僕は別のお菓子があるから」(チョコレートを貴女に手渡して。先ほどの謝り倒している印象とは違う年相応の可愛らしい反応を見ては、エピソードも微笑ましい気持ちになった。それから人懐っこい笑顔で自己紹介をされたならエピソードもそれに応えよう。)「エルムンか。僕はエピソード、4年生だけど困ったことがあったらいつでも話しかけてくれて良いぜー」(少しでも先輩らしくしておこう。たまに悪戯したりもするが、と内心で呟いて先輩らしく軽く胸を張った。エピソードの中での先輩像がどうなっているのか知りたいところでもある。)「錬金術の教室だよなー……そういえばエルムンは錬金術得意?それとも別で得意な教科とかあったりする?」(単純な興味で貴女に問おう。)

Ermun@D1
そういえばエルムンは錬金術得意?という質問を受けるとエルムンの表情はみるみるしょんぼりした顔になるだろう。少女が口を開く前からその答えがわかってしまいそうなものだが…それでもエルムンは聞かれた質問に答える事にしたようだ。「あ…あぅ…エルはね。お勉強は…全部苦手…いっぱい覚えたいけど…忘れちゃう。好きな人の事も…わ、忘れちゃう。」カイト先生やオリヴィア先生はいつも優しく自分に同じことを何回も教えてくれているのは日記を見てわかっているのだが…だから内容を覚えていられるかというとそうではないのだ。酷い時は先生の名前を忘れてしまうことすらあるエルムンにとって、授業の内容を覚えておくことは雲をつかむことより難しいことなのだから。

Episode@R4
(答えはしょんぼりとしたトーンで告げられた。全部苦手。覚えたいけど忘れてしまう、とエルムンはそう言った。忘れっぽい性格なのだろうか、それとも何か『別の理由』があるのか、とまで考えてしょんぼりとさせたことを謝った。)「そっか、ごめんね、変なこと聞いて。……そうだ、エルムンは甘いもの好きなんだよね。じゃあ今度お菓子を作ってくるよ」(少し眉を下げて微笑む。それは別に何か特別な考えがあって言った言葉ではなかった。なんとなく、エルムンが喜ぶだろうか、という言葉で。……不思議な子だ。ふわふわとして性質の掴み所がない上に、その様子は危なっかしいことこの上ない。いつか何かに巻き込まれるんじゃないかという気持ちになった。)

Ermun@D1
「そっか、ごめんね、変なこと聞いて。」…そう言って困ったような表情を見せるエピソードの顔を見て、エルムンはしまったとバツの悪い気持ちになる。やってしまった…。そう思ってももう遅いのだ。「そうだ、エルムンは甘いもの好きなんだよね。じゃあ今度お菓子を作ってくるよ」と、気を遣わせた発言をさせてしまいエルムンは魔力析出によって痛んでいる脳が更に痛みを増す様な感覚になるのだった。「あふぁ!…だ、大丈夫!エル…物忘れ多いのなれてるよ?…せんせぇもやさしく教えてくれる!…え、エピソードおにいちゃんも…やさしくしてくれる!おかし、うれしい!」両手を上に挙げてバンザイのポーズ…を取って元気であるというアピールをして見せたいが、左手が動かないせいもあって右手だけを上に挙げた応援しているようなポーズになってしまう。…まぁ、これはこれで元気に見えるだろうとにっこり笑って。

Episode@R4
「ありがとう。エルムンが大丈夫って言うのなら、僕はそれを信じるよ。それに、アストランティアも思ってるより優しい人が多いみたいだし。……じゃあ今度はお菓子を持ってくるから楽しみにしてろよー!」(エピソードはそう言って笑う。アストランティアは変な奴も多いけど、思ってるより悪いところなんかではないから。エピソードは笑った後、さて、と言って。)「ほら、着いたよ。錬金術頑張ってな!エルムンなら大丈夫だ!」(錬金術が行われる教室に到着する。エピソードは貴女を励まして、同じように右手を挙げるポーズを取ろう。それは貴女への応援であり、信用の証左だった。貴女が教室に入っていくのを見届けたなら、エピソードはその場から去るだろう。……入道雲がそびえ立つ。目が痛いくらいの白さと青空に、エピソードは目を細めた。夏。もうすぐ毎年恒例の『あのイベント』の季節がやってくる。エルムンにとっては初めてだが、きっと楽しい時間を過ごせるだろう。あの不思議な少女の幸せを、エピソードは静かに願っていた。)
Ermunさん (80m8ceok)2021/8/9 00:49
08/08/21 くもりときどきはれ きょうは、オリヴィアせんせいにたすけてもらいました。オリヴィアせんせいのにゃあは、かわいかったです。

Olivia@教
4限が終わり、学生も教師も束の間の憩いに一息つけるはずの昼休み。滅多に形を変えないオリヴィアの金色の眉が、この日だけは珍しく、苦虫を数十匹まとめて噛み潰したような表情と共に歪んでいた。「危険ですので下がってください。生徒の皆様の安全は保障致しかねます。後退してください!」オリヴィアは両手を目いっぱい横に広げつつ、校舎の扉から中庭に集まって来る野次馬の群れを背中で押し返し続けていた。恋愛感情のもつれだとか、ドラゴンの扱いについての対立だとか、もろもろの噂話が群集の耳を掛けて行くが、こうなった本当の経緯中庭を飛び交っている当人たち以外は誰も知らない。だが、数人の生徒の集団同士が空を飛びつつ、防衛術の授業でも扱わないような危険な魔法を打ち合っているという現実は誰の目にも明らかだった。「伏せろ!」オリヴィアの叫びから1秒と経たず、中庭からの流れ弾が彼女の左手の義手を吹き飛ばす。

Ermun@D1
「きゅううぅぅぅ~~~っ!!!」押しては返される人の荒波に揉まれ、潰されかける。どうしてこんな事になったのだったか最早考える余裕すらもないが、分かることといえばこれは幻覚でも幻聴でもなんでもなく。現実、痛みを受け入れても尚消える事のない現実の悪夢なのだ。轟音、怒号、悲鳴…そして明確な殺意。こんなものが現実であるならば、普段見ている悪夢はまだエルムンにとって優しい世界なのだと痛感させられる。「伏せろ!」という声をかき消す様な一際大きい爆音。遅れて魔術反応による肌を焼くような熱、いや実際に人が焼けているのであろう鼻に付く匂いは少女の体も心も前後不覚の大混乱の渦に叩き込むには十分だった。

Olivia@教
爆音。続けて、数個の鉄の塊へと分裂した、さっきまで義手だったものが廊下の上を転がる音が聞こえたが、すぐに足音にかき消された。最前列のオリヴィアを押し続けていた人の波は、速やかに校舎の奥へと引いて行く。一人の少女だけを取り残して。「………さま……お嬢様!わたくしの声は聞こえておりますか!」左手の肩を抑えつつ、姿勢を低くして速やかに彼女の方へと歩み寄る。まだ残っている右手で彼女の肩を掴み、体全体を揺さぶった。がちゃがちゃと煩わしい耳元の金属音が、遠くの戦闘音に重なって聞こえてくる。「……大丈夫、大丈夫ですからね。立てますか?」オリヴィアは、彼女の小さな身体を覆うようにして右手でしっかりと抱き込んだ。鼓動すら聞こえるほどに。

Ermun@D1
「……さま……お嬢様!」…どこか遠くから声が聞こえてくる。この声は…誰なのだろうか。美しい光の中へ覚醒しようとする意識を闇に留めようとする声が耳元で聞こえてくる。「キシシッ…あぁかわいそう。かわいそうなエルムン。起きたって良いことなんてなぁんにもないのにニャァ?」どこか心地よいその声は闇へ誘う。「わたくしの声は聞こえておりますか!」例えるならばどこか彫刻のような硬く柔らかい美しい響きを持つ声が闇から意識を引き上げる蜘蛛の糸の役割を果たすだろう。手を伸ばさずとも、エルムンの意識は闇からするすると上がっていく。「キシシッ…まぁ?また会おうよ…アタシはいつだってエルムンの味方だからニャァ?」という言葉だけを残して。…エルムンが目を開けるとそこには優しげで美しいオリヴィア先生の珍しくも焦った顔があり、何かを言っているのが聞こえてきたのに半分無意識で頷くとそのまま抱き込まれる。「せんせぇ…いいにおい…」きっとこれはまだ夢の中なのだとぼんやりと考えると頬ずりをして素直な感想を口にするのだった。

Olivia@教
「……勿体無いお言葉です、エルムンお嬢様」少しだけ口角を上げたオリヴィアは、すぐにあなたをきつく抱きしめた。しばらくの間、白いシャツと黒いネクタイ以外のものが視界に映らなくなるだろう。「……ッ………!……ふ……」やっと少女を離したオリヴィアは、あなたの手を両手で掴んだ。金属的な冷たさを伝えてくる右手とは違って、左手は少し熱を持っている。……左手?廊下には相変わらず吹き飛んだ"左手"の部品が散乱したままだ。「いいですか?私の首に腕を回してください。はい、そのように。このまま、離さないでくださいね」手を引いて半ば強引に自分の首を抱かせてオリヴィアは、右手で背中を抱いたままエルムンの膝の裏に左手を通し、立ち上がって、体全体を持ち上げる。いわゆる、お姫様抱っこというやつ。「走ります」冷静にそう告げ、そのまま校舎の奥へと駆けて行く。跳ねるように走るオリヴィアの一歩は長い。宙に浮くような感覚さえ覚えるが、足が着くたびに、身体全体が揺さぶる振動が腕の中にも伝わっていく。

Ermun@D1
「いいですか?私の首に腕を回してください。はい、そのように。」エルムンのグイと引っ張られた手にかかる力に相反して声は常に丁寧に優しく響く。そういえば夢の中で自分の味方だと言ってくれた声の人もきっとオリヴィア先生だったのだろうとぼんやり考えていたが…エルムンの頭の中で決定的な違いが思い当たる。「このまま、離さないでくださいね」…そういえば夢の中の人はもう少しオリヴィア先生よりも特徴のある話し方をしていたような?という疑問が浮かび上がると、呑気にもエルムンの頭の中はそれでいっぱいになってしまっている。保険医の先生が居ればそれは一種の強い精神的ショックから身を守るための防衛反応なのだと結論付けることだろうが、今のエルムンにはどうしても無視できない疑問になってしまっているのだから仕方のないことなのだ。「あのね…オリヴィアせんせぇ…語尾にね。ニャァって…つ、つけて喋ってみてほしいな…。」きっと語尾にニャァと付けて喋って貰えればこの違和感も消えることだろうと、勝手に納得をして先生にお願いをするのだった。

Olivia@教
中庭から医務室までの決して短くない道のりを、一度も人にぶつかることなく、オリヴィアは1分で走り切った。平時から学生も多い上に逃げて来た野次馬も加わってごった返している廊下でそんなことができたのは、壁を蹴り続けて空中を疾走していたからだと知るのはすぐ後の話。「下ろします。お気をつけくださいませ」がちゃがちゃと音を立てながら、オリヴィアの膝が折れ、姿勢が低くなる。そのまま右手に持ち上げられたあなたの身体は回転し、足が床と再会するころには自然に立ち上がっていた。「もう、大丈夫ですからね」左膝をついて中腰になり、オリヴィアはエルムンと視線の高さを合わせた。あなたを見つめる桃色の瞳は決して逸らされることが無い。「私を見てください。私を。……落ち着いていらっしゃるようで安心しました。もう誰もあなたを傷つけませんし、もしそんなことがあれば、私が…………許しません……ニャ」オリヴィアの顔全体が右に逸らされた。目線は逸らされなかったので、ちょっとだけ睨むような感じになった。傾いた表情はあまり伺えなかったが、左の頬は、はっきりと見えている。「……では、私は先ほどの喧嘩を鎮圧してきますので、これで失礼させていただきます」オリヴィアは廊下の四角い窓を開き、サッシに足を掛けている。窓枠を掴んだ鋼鉄の義手が、ひっかき傷のように走っている線から、かすかな、しかし確かに捉えられる、赤い光を発している。首を外に突き出して様子をうかがっていたオリヴィアが、突如としてそちらに振り返って、告げた。「……ニャ」窓から跳躍したオリヴィアはすぐに見えなくなった。それから十数秒して、中庭から戦闘音が聞こえなくなり、食堂の方からしていた賑やかな騒ぎ声がはっきりと聞き取れるようになった。昼休みはまだこれから。
Ermunさん (80m8ceok)2021/8/7 08:44
06/08/21 はれ きょうは、かっこいいおにいちゃんにきょうしつまでつれていってもらいました。おなまえは、ききわすれました。

Ermun@D1
エルムンという少女の濁った瞳が映す世界というものは常に濁り、歪み、見えざるモノ共が蠢く世界であり、常人であれば美しい昼時のアストランティア魔術大学の校舎内であっても例えるなら薄汚い地下下水道のような有様に見えている。更にそこに記憶障害も重なってしまえば、同じ様な景色が永遠と続く悪夢の檻に閉じ込められていると同義であり、そしてそれが彼女の見る世界そのものであるために…「ううぅ~…ぐずっ。だ、だれかぁ…魔法植物学の教室って…どこなの…それともみんな…だ、誰でもないの…?」彼女にしてみれば蠢いている何か黒い結晶体や背の高い肉塊でしかないモノたちではあるが、彼女以外にはそれは確かに人間である筈で。……今話しかけているものはたまたま廊下に置かれている観葉植物であるのだが。

リト・ヴォルヴァーン@D3
リトの瞳は太陽のように燦然と真っ赤に輝いている。その瞳が映す世界というものは常に晴れやかで、調和が保たれ、見えざる精霊たちが闊歩する世界であり、常人であれば美しい昼時のアストランティア魔術大学の校舎内であっても例えるならお祭りの真っ只中のような有様に見えている。更にそこに彼等の声が重なってしまえば、静かな景色も喧騒が続く祭りの神輿に乗り込んでいるのと同義であり、そしてそれが彼の見る世界そのものであるために、「嗚呼、あの子のことを言っていたのか。うん、案内してくるよ」彼にして視れば朧に光る球体や翅を生やした妖精のような者達が囁いているだけなのだが、彼以外にはそれは全く見えないわけで。何故か観葉植物に話しかける彼女の元へと向かうだろう。「どうした?教室ならボクが案内してやるけど」ぞんざいな口調は未だ共通語に慣れていないかららしい

Ermun@D1
「どうした?教室ならボクが案内してやるけど」そうどこか自信に満ちた声にエルムンが振り向けばおそらく人間…と、思われる存在が目の前に立っていた。きっと先輩の誰かが見かねて声を掛けてきてくれたのだろうと少し安堵に胸をなでおろしながら魔力析出を使用し、体内魔力を0になるまで結晶化させる。脳内に小さな魔力粒が生成され、酷い頭痛と共に悪夢が醒めていくと視界が正常化していき…エルムンの濁った瞳にもリト・ヴォルヴァーンという……「え、えっと…お、女のひと…なのかな?男のひと…なのかな…。」正直どっちなのかエルムンにはわからなかったが優しい人であることには違いなさそうだと、再び安心感で胸を満たすのだった。

リト・ヴォルヴァーン@D3
「……男だ。よく間違われるから気にしないでいい」直感、はたまたそれは精霊と交流する中で魔力、の元になるマナに敏感になっていのか、彼女の状態が外見以上に深刻に思える。このような生徒もいるのかと思う反面、こうした生徒が珍しいのならば自分同様(あくまで憶測の域を出ないが)研究の目的で誘われた口だろうか?そんなことを考えながらその濁った瞳を見つめて右手を差しだそう。「魔法植物学の教室だったな?ついてこい」粗野な口調になるも、差し出された手は彼女とはぐれぬために繋ぐ意思が見受けられる。遠回しな感情表現は素直になれない幼さ故に、少女だろうと異性と手を繋ぐことに躊躇いを見せないのは恋を知らぬ幼さ故に、屈めた拍子に揺れる三つ編みはその肌と制服のコントラストによって輝いているようにも見えるだろう

Ermun@D1
「キレイな髪…あ、そ、そっか。男の人だったもんね…キレイな、か、髪って言うのもヘンなのかな?えっと…えっと。エルムンだよ。ありがとうおにいちゃん。」こんな自分に優しくしてくれる珍しい存在は大事にしようと努めて変な子だと思われないように振る舞う。実際には例えリトという少年には既に変わった子だと言うことがお見通しであったとしても…好意を持っているということだけは伝わるだろう。実際悪意を持って接する人間はエルムンにだってわかるのだから。「そ、そうだよ…カイト先生の教室なの…カイト・…えっと。…せんせぇ…」差し出された手を握り返すと、目的地を伝える。いつもの癖で下の名前を忘れてしまったが…まぁカイトという名前の先生は一人しか居ないはずだ、記憶障害のエルムンの記憶が正しければ…だが。

リト・ヴォルヴァーン@D3
魔法植物学の教室はあそこだけ。カイト先生といえば彼の授業を担当している先生でもある。彼女はいつものことを、まるで昔の記憶を手繰り寄せるように言っているのでそうした点に違和感を覚える。けれどそれもまた彼女の症状と推測して。「うん、分かってる。行こうか」歩く速度は彼女に合わせ、他の生徒からの視線を意に介すこともない。凄く微笑ましい目線を向けられて少々気恥ずかしさを覚えるが。……本当は、彼女と関わるのは控えるべきなのだろう。どれだけ優秀な精霊使いでも自分の精霊に出来ないことは出来ない。サラマンダーの炎は様々なものを燃やすことができるが、彼女に潜む禍なるものだけを燃やすことは出来ない。故に彼では救えない。彼女に与えた安らぎがいずれ彼女を傷つけるかもしれない。情が移ればその時、果たして自分は冷静でいられようか?言葉では分かっていても彼は彼女を気にかける。儚げな少女を無下にするほど彼は非情にはなれなくて

Ermun@D1
「……。」こうして手を引いてもらっている時間というものは普段あまり心休まる時間というものを過ごせないエルムンにとって、貴重な時間であり…好きな時間でもあった。それだけにリトという美しい少年が何やら色々と考えているのをエルムンは気にしていた。個人的には物憂げな美しい少年という画をまだまだ見ていたい気持ちもあるのだが…残念なことだがもしかしたらその憂いは自分のせいかもしれないと、空気を変える為に違う話題を振ってみることにするのだった「おにいちゃんって…か、彼女っていたりするの…?え、エルもいつかね、お話のなかみたいに…素敵な恋をしてみたいんだ…。」かなしいことに上手い話題を選べたとは思えないが…しかし逆に変な事を言い出せば相手の気が抜けるかもしれないという淡い期待を寄せるのだ。この際数秒前に変な子だと思われたくないと思っていた自分の気持ちは忘れることとする。

リト・ヴォルヴァーン@D3
「彼女?……ああ、恋人のことか。いないよ。今は勉学や強くなることで手一杯だから余裕がない」今こうして彼女と歩む時間もまた自身の授業を受ける教室への道すがら。余暇と言える時間は食事や就寝を除いて多くは取れず、彼女を作る余裕など無きに等しいのだろう。しかしながらそれを夢見る少女にありのまま伝えたのはまずかった。思わず語られた本音は、自身が抱える負担を吐き出したくて、言ってしまえば自分より幼い少女に愚痴を溢してしまった。我ながら言ってしまった後に気付くのだから情けない。フォローの言葉を取り繕うと考えるが、思案する間の無言は余計に彼女に不安を与えてしまっただろうか?

Ermun@D1
「わぁ、すごいね!もしかして、エルと同じで、ディアスティレ…なのかな?いっぱい頑張る人が多いんだって!…か、かっこいいとおもうよ?」各寮の特色くらいはエルムンでもなんとなくは聞いたことがある。ディアスティレはお金持ちで努力家、レインベールは器用で頭がよく、アースラントは元気で優しい…だっただろうか?エルムン本人もなんだか違う気もしてきたが、ある意味では性格占いのようなものだ。言葉を選ぶためにまたしても思案の時間に入ってしまったリトの顔を見ると慌てて褒めているのだということを伝える。…実際そんなことで落ち込んでいるわけではないのだろうが、これも彼女なりの気遣いというものなのだ

リト・ヴォルヴァーン@D3
「うん。僕はディアスティレだ。……ありがとう。君も、いつか君の運命の人を見つけられるといいね。僕はそう願ってる」自分よりも年下の少女に気遣われたことに多少の照れ臭さを覚えつつも、ここは素直に感謝の一言を彼女への贈る。次いで、先程の言葉に補足して彼女の夢を肯定するだろう。どうか、彼女を救える人が現れますようにと願ってみて。精霊の声が聞こえてくる。必要もないのに道案内をする彼等に軽く微笑みを返しては、やがて教室が見えてきた。彼女の方へと顔を向け、「あそこで合っているか?」と聞いてみよう。もしかしたら、違う教室のことを言っている可能性もあって。彼女の記憶がどの程度存在するのかにも依るのかもしれないが、本人への確認は大事だろう

Ermun@D1
「え~っとぉ…うん?たぶん?そ、そうかな?…えへへ。実は教室の見た目って似てるから…あんまり見分けって…つ、つかないんだ?目がじつはよくみえてないから。」目が見えてないのもそうだが…普段はあまり魔力析出を使ってちゃんとした風景というものを見ては居ないので覚えていないというものもある。読んで文字の如く魔力を析出させるこのスキルは体のどこかに魔力を固める事が出来るのだが…脳や脊髄に巣食う魔力を食らう寄生体の活動を止める為には脳や脊髄付近に魔力塊を作る事になるので激痛が走る事になり、あまりエルムンも好きではないのだ。それでも今日は痛みを我慢してでも風景が、人の顔が見ていたいとエルムンが思ったのは。このリトという少年との時間の思い出が…きっと今後の自分の人生の思い出が悪いものばかりではなかったと言い聞かせるためのものだからだ。

リト・ヴォルヴァーン@D3
「そう……だったか。分かった。とりあえずこの教室にいる人にも確認してみるか」こうした時、一言謝るべきだろうかとも思ったが、それが彼女に逆に負担をかけてしまう可能性を考慮する。彼女の手を引き、教室に入る生徒に彼女のことを確認して、そこでようやく繋いだ手を彼は放すだろう。少しばかり名残惜しさを見せてもいいだろうに、彼は呆気なく手を解いてしまう。それは何も彼女を嫌悪しているわけではないのは、その後にその手で彼女の頭を軽く撫でたことから分かるだろうか。彼自身に課せられた使命を全うする、そうした人生における障碍を持つのは彼女も同じこと。いずれ彼女に降りかかるであろう、その身の丈に合わないほどに大きな悪いことを、どうか誰かが手助けしてほしい。自分では助けになれないという歯痒さ、未だその形を知るほど彼自身は大人ではなく、ただ漠然とした小さな無力感を覚えて。「じゃあな」と一言告げたなら、彼もまた自らの道へ歩を進めよう
Ermunさん (80m8ceok)2021/8/7 08:42
04/08/21 はれ きょうは、ちこくしませんでした。もってくるものリストをつくってもらいました。あれ?そういえばもってくるものリストどこにやったんだったっけ?

Ermun@D1
あれぇ~…?めずらしいなぁ~…ちゃんと教室に着いちゃったぁ…。(擬音にして例えるならふわふわとした口調、とでも評すべきなのだろうか?普段あまり物事を考えずに行動する小柄な少女…エルムンはその言葉に違わず、決まった時間に・決まった場所に・自分が何をするべきかの記憶を保持したまま。たどり着くことは稀なのである。)えへへ~。今日は褒められちゃうなぁ~。おはよぉございまぁ~す。あーー……誰先生でしたっけぇ…。(ご機嫌に教室の扉を開けてからの思案の時間。もしかしたらはじめて会った相手だったかもしれないが、エルムンにはそれがわからないのだ)

Kite@教
午後一番の授業というものは、学生にとって1・2を争う憂鬱さを誇っている。理由はごく単純である。食後は誰だって眠いものなのだ。自身の受け持つ座学では直のこと。何なら自分も眠くないかと問われれば否であるくらいである。そういった風に眠い目を擦りながら講義の用意を進めていれば、また誰かがひとり、扉を開くのだ。「こんにちは、エルムンさん。今日はちゃんと来れたんだね」ごく小柄な少女の背丈に合わせんと膝を折って、それでようやっと貴女と目が合うこととなる。彼女、エルムン・コクシジウム・アイメリアは、どうも酷く忘れっぽい性分であるらしい。もう何度か授業を受け持っているのだが、遅刻や忘れ物が目立っている。5分も前に教室に辿り着いた今日が珍しいくらいだ。「忘れちゃったかぁ。カイト、カイト・クロスだよ」名を覚えていないことに関しては、特に咎めることもしないで優しく微笑みかけて。それから。「僕のことはともかく、授業は頑張って覚えてね?」いい? だなんて、小さな子に語りかけるような口振りで。もっとも、ような、と形容せずとも君は小さな子の範疇なのかもしれないが。

Ermun@D1
あ!カイト先生!カイトクロス先生!思い出したよぉ~!うんうん、ちゃんとおぼえてた~!(思ひ出すとは忘るるか、思ひ出さずや忘れねばと詠んだのは誰だったか。たった一言で矛盾した発言をするも、全身で褒めてもらった喜びを表現しつつ右手を上に掲げる姿からは悪意を感じさせないはずだ。…少なくともエルムンという少女にそのつもりはないのだから。)授業ちゃんと…こ、これたよぉ~!いっぱい頑張っておぼえる!…ます!(ふんすふんすと息が聞こえて来そうなくらいに鼻をピクピクと動かしながら優しい先生の顔を今度こそ覚えようと凝視する、病気のせいであまり見えてはいないので正直意味はあまりないのだが。そうしている内に彼女は重大な問題に気づいた様でみるみる表情が慌てたそれにかわっていく。)…あ~。せんせぇ~…。今日って教科書って~…つかう~…?

Kite@教
一滴の邪すらも感じさせない少女のあどけなさに、装わずとも自然に笑声が零れ落ちる。「ふふ、一緒に頑張ろうね」うんうん、と首を小さく縦に振って、それから教壇に戻る。戻ろうとする。結果としてそれは叶わず、後ろ髪を引かれるかのように貴女が声色を曇らせるものだから、やむなく振り返ることとなったのだ。「おっと、忘れ物?」ドクターコートの裾が僅かに弧を描いて、再び貴女のつぶらな瞳に目が合うこととなる。貴女の発言から忘れ物を察するのは容易く、またそれは彼女の普段の行動に照らし合わせれば更に深みを増す。「うーん。今日もちゃんと使うから、持ってきて欲しかったかな」膝に手をついて、前屈みになりつつ少女を見下ろす。直接的に叱りつけるような言葉を選ばず、一旦は貴女の反応を伺ってみようか。

Ermun@D1
……あう…そうだよねぇ……ご、ごめんなさいせんせぇ…。(せっかく今日は褒められると思っていたのだが、どうもそうもうまくいかないのがエルムンという少女の常なのだ。今日もまたこういう流れかという落胆と、またこの後は周囲の子に笑われるのかなという諦めの入り混じった表情に変わる。この先生は優しそうだからきっと許してはくれるだろうが周囲の人間がどうかはわからないのだから。)あぅ…え、えと…どうしようかなって…とりに、い、いくかな…?(今日は早めについたから、もしかしたら今から取りに行けば間に合うかもしれないと言葉を絞り出す。…いや、帰ってこれなくなる可能性のほうが高いのだが…すぐに霧散する空気とはいえ、居心地の悪い雰囲気というものは苦手なのだ。それに、仮に低い確率を潜り抜けて時間内に取りに帰れた場合は二度目は褒めてもらえるかもしれない。)

Kite@教
「仕方ないなぁ」呆れたような、しかしそれにしては随分と可愛げの残った言葉をひとつ。手のひらを君の前でぴたりと止めれば「待っててね」とだけ告げて、くるりと貴女に背を向ける。トントンと幾度かブーツの音が響いて、教壇へ。そこで何か1分ほどの作業をした後に、幾つか物を抱えては貴女の元へと戻るのだ。「はい、次からちゃんと持ってきてね?」貴女の前でしゃがみこみ、大きく開いた身長差を埋める。両手で貴女へと差し出したのは、予備の教科書と、板書のためのルーズリーフともう一つ。今し方切り取られたらしい手帳であった。『魔法植物学の授業に必要なもの』そう題打たれたそれには、自身の授業を受けるために必要なものが箇条書きで列挙されていて。「授業が終わったらちゃんと返してね? 先生との約束だよ?」貴女がそれを受け取ったのならば、立てた小指を少女の目の前に差し出して、首を傾げてみて。

Ermun@D1
えへぇ~…せんせぇありがとぉ~…そ、そしたらいっぱい頑張っておぼえるよ!(少女はカイト先生は優しい先生だなと思うと同時に、今度こそは名前をしっかり覚えておこうと思い直す。エルムンという少女と付き合っているとこんな調子が毎日続く上に、優しくされた恩も受けた仕打ちのことも忘れてしまうことが多いせいか。あまり暖かく接し続けてくれる人というのも稀なので…未だに優しくしてくれる人の事は敬意を持って接したいと思ってはいるのだ。)そしたら…自分のせき…すわるねぇ?教科書返すのも、忘れないようにする。(気合を入れて自分の席に座りに向かう。そもそもよく考えてみれば自分ひとりのせいで授業の時間が迫っている。これは真面目に授業を受けに来ている生徒からあまり良くは思われないだろうと、おとなしく真面目に授業を受けることにしたのだった)
返信11
Serena@乖離さん (808dko3x)2021/8/12 23:05 (No.3821)削除
《ウェストニアピクニック》



[Serena@R6]
花が咲き乱れ、色とりどりの花弁が舞う国《ウェストニア》。そこは嘗て己が住んでいた場所であり、恐らく一番平和に過ごしていた場所である。相変わらずの澄んだ空気と華やかな雰囲気に、やはり綺麗な場所だなと笑みが零れる。「リト、もうすぐ着くわよ」振り返り、共にこの地へ来た後輩へと声を掛けよう。わざわざアストランティアを降りてウェストニアまで来たのは、彼の息抜きの為だ。元々、彼は閉鎖的な部族の集落出身らしく、もう少し見聞を広めてやりたいと思って提案した息抜き兼観光ピクニック。だが此方も此方で、バスケットいっぱいにお菓子やら昼食やらと、いつもなら一人で食べきれない色んな物を作れたのだから、もう既にちょっと満足している。ちなみに向かっている先は郊外の小さな丘であり、国花であるウェストニアの花園がよく見える、ここに住んでいた頃の絶好の昼寝スポットでもあった。彼の“お菓子を食べながらのんびりしてみたい”という要望に、きっと最適だろう。



[Lito@D3]
大地の感触は久しぶりで、普段よりも遠い空の只中を舞う花びらが異国情緒を露わにしているように思えて。澄んだ空気と和やかな人々、そこに息づく精霊達もまたこの地を祝福しているようであった。花々の舞う中、振り返る彼女の笑みは美しき花の精霊達でさえ嫉妬してしまいそうだ。「ああ。もうすぐだな」こちらもまた普段は見せない微笑みを向けて彼女に着いていく。小さな丘からは資料でしか見たことのなかったウェストニアの花園が一望できる。見渡す限りの花々はまるで大きな花束のようで、色とりどりの花と精霊の調和が心揺さぶられる。「綺麗だ……まるで世界中の春を集めたようだな。彼等も楽しそうだ」澄み切った空気、美しき花々そして精霊達の輝きはこの国の大きな魅力といえるだろう。そして注目すべきは彼女の持つバスケット。楽しそうな彼女の様子を見ては、余程の自信作、とても美味しいものであることは明らかだ。なるほど、彼女がそれだけお菓子作りに長けているならエウロスが乗ることで感じていた肩の重みが増している気がしたのも納得である



[Serena@R6]
丘を登りきった所には、少し大きめな木が一本立っている。その木陰は、嘗てよく自分が寝転がっていた場所だ。切り倒されたりなんてしていないようで良かった。「この辺りで良いかしら……よっ、と」木陰にシートを敷いては、風で飛ばないようにシートの上にバスケットを置こう。歩くのはここまで。さて、のんびりまったり、長閑な休日の始まりである。「さ、リトもこっちにおいで。今は、丁度お昼時かしら……一応、サンドイッチもあるけれど、食べる?」シートの上に座っては、彼も隣へ手招きしよう。それから日の位置を見ては、昼食の提案も。ピクニック、と称するからには、それらしい準備は一通りして来ている。故に、バスケットには昼食もお菓子もあれば、ちゃんと飲み物も詰められているし、エウロス用のご飯だってあるのだ。ちなみに、そのエウロスは現在舞い散る花弁を追って周囲を飛び回っており、時折花弁を咥えて遊んでいる。普段は大空をめいっぱい飛ぶくせに、最近はちょっと体が重いらしい。半分自業自得、半分は己のせい(主に試作菓子の消費)である。



[Lito@D3]
長閑な世界。それは、毎日が勉強の日々であった大学では想像もしないほど時間がゆっくりと感じる世界。これまでの経路を思い返せば、もうお昼というよりはまだお昼なのかと思うほどに。けれどそのゆったりとした感覚は故郷と重なって。そんな郷愁の想いを残しつつ、彼は彼女に誘われるがままシートへと座り込むだろう。「うん。食べたい」彼女の隣というのは、これまでの景色とはまた違った感覚になる。どちらも安らぐ、癒やされるといったニュアンスを含むのであろうが、前者は心を浄化されるようで、後者はざわつく心を落ち着かせてくれる。彼女の隣は木漏れ陽の差す木陰のようで、それはちょうどこの木と同じように見守ってくれているような感覚。姉が居たならば、このような感じなのだろうか?ふと目を移すと花びらを追いかけるエウロスが見えて、何とは無しにあんなに動いているもといはしゃぐ姿を見るのは久しぶりかもしれないと考えて。「エウロスも、楽しそうだ。此処は本当に良い所だね」そんな彼を見ていたら、ついこちらも釣られて顔が緩まって。普段は大人びた顔も今日ばかりは年相応の子供らしい笑顔に戻るというものだ



[Serena@R6]
食べたい、と答えが帰ってくれば、嬉しそうに微笑んでバスケットの蓋を開いて、紙に包まれたサンドイッチをいくつか取り出そう。「ハムとたまごと、こっちはサーモン。好きな物をどうぞ。苦手なものが無ければ良いのだけど」包み紙を開けば、そこには彩りのあるサンドイッチがあるだろう。育ち盛りの彼には少し物足りないかなと思いながら作ったので、取り敢えず各種数はあるのだ。いくらでも食べたら良い。「アストランティアでは無闇矢鱈に飛び回らないように言ってあるから、はしゃぐのも無理は無いわね。加えて此処は昔よく訪れていた場所だし、懐かしいのでしょう」はしゃぐエウロスに年相応に笑う彼を見れれば、連れて来た甲斐もあった。エウロスを呼び寄せて専用のご飯も与えると、夢中でそれを食べ始める。相変わらず食いしん坊な事だ。くすりと笑みを零しては、自分もサンドイッチを一つ手に取ろう。空には舞う花びら、眼下には薄桃色の海。ピクニックには最適な、実に景色が良く気持ちの良い場所である。まさか、その場所に自分が別の人を連れて来るなんて、此処を見つけた当初は思ってもいなかったが。「あ、お茶もあるから、飲みたかったら言ってね」



[Lito@D3]
「いただきます」手を合わせて、サンドイッチに手を伸ばす。まずはハムから。加工された動物の肉は脂の旨味と香ばしさ、食感がバランスよく、麦の風味が普段食べる肉とは違うアクセントを与えてくれる。次にたまご。甘過ぎない砂糖の加減と卵の濃厚な味わいが舌の上で静かに踊る。バンズとの食感の違いが程よく舌触りをよくしてくれているようだ。そしてサーモン。生モノは腐りやすいから彼の部族では干したり燻製にしたりしていたが此方には鮮度を保つ魔術かスキルがあるのだろう、未だ新鮮さが褪せることない脂の乗りと柔らかな食感が食欲を史劇する。そのままでは人によっては濃い味付けかもしれないがバンズの麦が程よく味合いを拡散させて口の中を程よく美味で満たしてくれる。サンドイッチ、普段食堂などで食べるものとは違う、とても美味しいそれらは彼女の実力、そして見渡す限りの大きな花束の海によって作り出されているのだろう。いつしかサンドイッチを食べるのに夢中になっていたらしい、ふと目を移すと先程まで飛び回っていたはずのエウロスが同じシートでご飯を食べていた。我に返っては少々気恥ずかしくなり、持っているサンドイッチをゆっくり食べ出すだろう。「う、うん。お茶、欲しい」何故か分からないけれど照れてしまって彼女の顔を直視できなくて、彼女の首元に焦点を合わせてそう応える。異性として意識しているのだろうか、それというよりは普段よりも些か子供っぽい振る舞いを続けて学校とのギャップをどう思われてるのか気になっている方が近いらしい。「ぼ、僕としたことがつい。……ここは良い所過ぎて普段の自分を忘れてしまいそうだ。まるで胸の中を洗われるようだよ」そう、言い訳するように呟いて



[Serena@R6]
夢中で各種サンドイッチを食べては、不意に我に返って照れていた。随分と可愛らしい一部始終を目の当たりにした此方は、ええ、それはもう微笑ましく眺め、彼の要望通りお茶の準備をしよう。水筒から持参したコップへお茶を注ぎ、それは彼へ差し出して「お気に召したようで何よりね。はい、どうぞ。ウェストニアを使ったお茶よ。まあこれは紅茶と言うよりは、ジャスミンティーに近い香りだけのものだけど」渡したお茶からは、強過ぎず弱過ぎない甘い香りが漂うだろう。それこそ名産ウェストニアの香りである。ベースは緑茶だ。「此処は私が住んでいた頃、仕事の休憩時間や休日によく来ていてね。人通りも少ないから、たまに来る竜と一緒に遊んでいたりしたわ。淡い緑色の鱗の、綺麗な翼竜でね。女の子なのだけど、恥ずかしがり屋でとても可愛らしい子なの。初めて会った時は木陰からこっちを覗いていて、でも体が大きいから隠れきれていなくて、とても愛らしかった。多分、呼べば来てくれるんじゃないかしら」竜の話になった途端、饒舌に嘗ての事を語り始める。それはもう、嬉々として。そんな此方をエウロスは食べ切ったご飯の器を前にムスリと拗ねた様子でいる。“ボクが居るのに”と言わんばかりの顔だ。けれども、エウロスだって共に楽しく過ごしていたのは事実。そういった反応をするだけで然して気にしてはいないらしく、ご飯のおかわりは無いと知るや否や今度は彼の持つサンドイッチをたかりに行くだろう。



[Lito@D3]
「ああ、ありがとう」良い香りだ。程よく甘い香りがなおも食欲を誘発する。ウェストニアはただ美しいだけでなく、こうして利用できることを知っては、永く閉ざしていた外の文明は知らぬ間に発展と可能性を追求し続けていた事実をありありと物語っているようで。普段は表情を変えることもなく、その儚げな微笑みは月夜にのみ咲く月下美人を連装させる。そう思っていたが、嘗て出会った竜について語らう彼女は嬉しそうで、楽しそうで、その笑みたるや太陽の下で咲き続ける向日葵のようであった。と、そんな彼女の話に相槌を打つ彼に魔の手、いいえ、竜の手が襲いかかる。正確には彼の持つサンドイッチを狙うエウロスみたいだ。彼のサンドイッチをたかろうと飛び付くエウロスを軽くあしらいながら、彼は言葉を継ぐだろう。「是非とも呼んでみてくれ。きっとエウロスも少しはお行儀良くしてくれるだろう……ねっ!」飛び付くエウロスにフェイントするように手を大きく引いてサンドイッチを食べすすめる。その手から欠片も無くなってしまえば、澄ました顔でエウロスに勝ち誇ったような顔を見せるだろうな



[Serena@R6]
目の前でサンドイッチを食べられてしまったエウロスは、抗議するように“キュイィ!!”と鳴くだろう。そうしてばさりと羽ばたいては彼の頭の上へ、そのまま着地すると同時にげしげしと足蹴にするだろう。そんな様子がおかしくって、一頻り笑っては彼の要望通り、嘗ての友人を呼ぶ為立ち上がって木陰から出る。「念の為、人払いもしておきましょうか。…築け、それは我等のまほろば。尊き我等の楽園。踏み入らんとする者は、主よりその資格を与えられた者で在れ」その詠唱は簡単な人避けの結界を張る為のものである。いくら人通りが少なくても、万が一見知らぬ人が来てしまっては、きっと彼女も逃げ帰ってしまうだろうから。結界を張り終えれば、指先で輪を作り口元へ。ピュイーと笛の音を空へと響かせよう。風が音を運び、それはきっと、見据える先の小高い山へと届く。恐らく十数秒程だろうか。山の中腹辺りから、深緑の鳥が舞う。鳥は此方へと向かって飛び、段々と距離を詰めればそれはやがて鳥では無く紛れも無い竜だと分かるだろう。その体躯はそこの木と大した変わりは無く、アストランティアの騎竜よりはもう少し大きいかもしれない。「ケレス!久しぶりね、ただいま。元気そうで良かった」ケレスと呼ばれた深緑の竜は、此方へと首をもたげてクルルと喉を鳴らす。ケレスの顔を両手で抱え頬擦りをすれば、懐かしい森の香りがした。「まさか本当に来てくれるなんて、嬉しい……ふふ、それもそうね。そうだ、今日はお友達を連れて来ているのだけど、会ってくれる?」一言二言、意思を交わす。次いで彼女へ友人に会わせたいと言えば、彼の方へ視線を向けよう。呼んだのは、その為でもあるのだから。



[Lito@D3]
「痛ッ!エウロス、止め……"痛いんですって!燃やしますよ!?"」途中から割と本当に痛かったのか母国語が漏れ出てしまう有り様。頭に乗ったエウロスを引き剥がそうと、エウロスはエウロスで引き剥がされんと小競り合い。そんなことをしているうちに人払いの結界は張られた。彼女の口笛は小競り合いをしていた一人と一匹の動きも止まるだろう。少しの間を置いて遠くの山から何かが飛んでくるのが見える。鳥だろうか、飛ぶタイプの獣人だろうか、いや、ドラゴンである。森林の化身と言わんばかりに深緑の体を持つ竜はその体躯だけでない威圧感を与えてくるようで。そんな竜と親しげな彼女を見ては、やはり竜に好かれるのだと再認識する。さて、彼女の紹介を受けて彼は恭しく頭を下げて一礼する。精霊と暮らし、精霊と共に在る彼は目の前の竜が礼儀を怠ってはいけない存在であることを理解した。「初めまして。こちらの言葉では礼節を欠く。こちらで勘弁願いたい。"……改めまして、精霊使いのリトです。高名な新緑の御方にお会いでき誠に光栄です。彼女は大変魅力的で親切な方です。私も大変お世話になっており、今後とも友好関係を続けたいと考えています。何卒よろしくお願いします"」彼女には理解出来ない言語かもしれないが目の前の竜ならば言葉ではなく思念か何かとして理解してくれるだろう。それはちょうど彼と精霊が会話をする時のように。



[Serena@R6]
耳馴染みの無い言葉で友人へ挨拶をする彼を若干首を傾げながら見守る。彼のその言葉を、ケレスは正しく理解したようだ。ゆるり、彼へ視線を向ける。その目は体と同じく美しい緑色で、エメラルドを彷彿とさせるものだろう。けれど、ケレスは暫くジッと彼を見つめては、その手で何故か此方の体を前に押し出し、陰に隠れ、まるで盾のように立たされてしまった。勿論、大きさ的に明らかに隠れきってはいないのだが。「あら……ごめんなさい、やっぱり初対面の人は恥ずかしいみたい。でも、“こちらこそ、宜しく”って……え?あぁいや、流石にそれは……どうしても?」独り言のような言葉は、背後に隠れたケレスとの会話で。照れ照れした様子のケレスに伝えてくれと頼まれた言葉を、少し迷いながら、彼へ伝えよう。「……“セレーナは私達竜の事となると見境が無いから、良く見ていてあげて”、と……別に、そんな見境無い訳じゃないわ……」目を逸らし、ムッとした顔でケレスの言葉を一字一句そのまま伝える。伝えはしたものの、此方にとっては不本意な言葉である。だって彼女のその言葉では、まるで私が聞き分けの無い猛獣か何かのようでは無いか。不本意。大変不本意である。ましてや、可愛がっている後輩になんて事を言うのだ。彼の頭の上で大人しく座るエウロスがゆっくり頷いたのも含めて、これは後でちょっと抗議したい。………………今は学園に居るから、そんなに大事になることはしてないもん。
返信
Serena@乖離さん (808dko3x)2021/8/14 15:20削除
[Serena@R6]
ケレスの言葉に、彼は確かに言葉を返した。けれどやはり、それは聞き慣れない言語であり、またもや首を傾げる。しかしそんな此方の様子を見ながら、彼の言葉を聞いたケレスはゆっくりと頷いた。それで良い、と言うように。そしてゆったりと此方の背後から体を出し、彼の前へ顔を寄せるケレスが喉を鳴らす。「“貴方に緑風の加護が在らんことを”」反射的に口から溢れ出た言葉は、きっとケレスが語ると同時だっただろう。ハッとしてつい口元を押さえては、僅かに眉を寄せる。“引っ張られている”。久しぶりに会ったからと、少し過干渉だったろうか。ふる、と首を横に振っていると、ふと目の前にクッキーの小袋が現れる。瞬きをしてよく見れば、エウロスがキラキラとした眼差しで此方を見ていた。どうやら、食べても良いかとお許しを貰いに来たらしい。律儀なこの可愛い子にくすりと笑みを浮かべながら、小袋を受け取って一枚のクッキーをエウロスの口へ。「はい、あーん」あーん、と言われた通りに口を開きクッキーを頬張るエウロスは、とても幸せそうだ。そしてもう一個と強請るように再び口を開けるエウロスに、普段は無いであろうとびきりの笑顔を。「ケレスと一緒に向こうの山を三周してらっしゃい。貴方のそのだらしないお腹を、更にだらしなくさせる訳にはいかないものね」むにむにとお腹の肉を摘まれたエウロスは、“キュ、キュィ……”とか細い声で青ざめ、それを見たケレスは呆れた様子でエウロスを咥え飛び立つだろう。つまみ食いばかりするからだ。
L
Lito@D3さん (80p261t3)2021/8/14 13:14削除
〔Lito@D3〕
畏敬を以て接する尊き竜が、彼女の後ろに隠れるように移動する。それが滑稽で、けれども美しく、微笑ましく映る。少なくともそれだけの気位の高いであろう竜にここまで信頼されている彼女は余程竜に関する祝福を受けているのだろうと推測して。不本意ながら彼女が伝えたその言葉にこちらは薄く微笑んで。それは何やらイタズラっぽい笑顔にも見える。再び彼は故郷の言葉を紡ぎ出そう。『ええ、勿論です。彼女は私にとっても特別ですから』普段なら恥ずかしくて言えない言葉も、この空の下、花に囲まれた場所でなら話は別になるらしい。加えてそれを教えたのは目の前の竜にだけ。彼女には彼の言葉を理解することは出来ないと知って。彼女を恋愛的に特別に見ているかはまだ分からない。精霊や一般常識、言葉については理解が進んでいくがいかんせん恋も愛も知らないお子様である。けれども彼女は彼にとって暖かくも涼しい、とても居心地の良い存在なのだ。そんな彼女を見守らないわけがなく。
返信2
れおるかくんさん (80qjvtq1)2021/8/9 23:20 (No.3754)削除
「はぁ?お前に娘なんていたのかよ、初耳だな。それにしては左手の中指に指輪が付いていないようだけど。」彼が自身以外の生徒に怒りの矛先を向けている所はあまり目にしない。そして彼が怒っている姿は自身以外の生徒はあまり見たことがないのだ。そのため彼が怒っている途中に諦めてしまうことも知っている。そんな消沈しきった彼から放たれた言葉には少々驚いた。まさかこんな頭でっかちな彼に子が居たとは。子がいるということは、同時に童貞を卒業しているということだ。意外な事実に口を開いていると、ふと気づいたことがあった。この世界では結婚するとお互いに左手の中指に指輪をはめるという文化が世界に共通して存在している。だが彼は其れをはめていなかったのだ。大体の種族は其れを当たり前として過ごしているため、左手を見れば直ぐに既婚者か否を判断できる。それでもはめていないとなると、彼の一族での理の問題なのだろうか。彼の一族のことはあまり知らない…否、興味が無いのでそこら辺は分からない。が、こいつに限ってそんなことは無いと受け入れられない自分が居た。表には戸惑いの様子は見せなかったものの、内心ではかなり困惑の色を見せているようだった。すると、彼から急に問われた世界史の問題。なんでこんな時に問題を出すんだよ、と一瞬は思ったものの元々これは補習の為に呼び出されたのであった事を今になって思い出した。もちろん問題の答えなんてわかるはずが無い。では少し遊んでやろうか。「ん〜…1つ、アズガルドが色気増し増しの女子生徒相手にしどろもどろになったこと。2つ、アズガルドが外を歩いてたら上から竜のクソが頭目掛けて落ちてきたこと。3つ、アズガルドが俺に対して切歯扼腕になって怒っていること。こんな感じだったか?」指を1、2本と上げながらそう答えた。これらは全て彼がこっそり見ていたことである事実だ。いや〜お前からは色んなことを学んだよ、と皮肉にそう告げる彼の顔にはまた嘲笑うような笑顔が戻っていた。
返信
adsgald@サブレさん (80okfod2)2021/8/10 23:33削除
(相手の不躾な態度に対し此方側もやや冷ややかな目線を貴方に向けるだろう。べーつに娘が居るなんぞ誰彼に公表している訳では無い。そう幼稚な思考を巡らせ、彼に向ける鋭い視線には熱がこもり直しており。貴方に侮辱のサインでも送ってやろうか。米神に皺を寄せ、そう思案した刹那貴方から飛び出した指輪の単語に一瞬眼光を曇らせる。彼のチンケな脳細胞に俺の身の上話したところでなんだ、補習の時間が増えるだけだ…と。自己完結に陥れば貴方に睨め付けた視線を送り「結婚はしていない。娘と血は繋がっていない。其れだけだ」お前には関係無い、と言わんばかりの気迫で吐き捨てれば貴方の回答に脳内がぷっつん。と言う音を立てるのが聞けるだろう。共通語では絶対に言えない様な差別用語、スラング、暴言をネチネチと吐き出す。大声で捲し立てるのも疲れたのか、米神を指で押さえ大きく態とらしく溜息をつく。確かに彼が言っている事は全て本当であり又これもイラつく原因である。適当な野郎の癖に言っていることに嘘偽りなんて無い。だけれど世界史の質問に対してはフルで間違うと言う馬鹿をかましているからそこはきちんと訂正は加えるだろう。「トゥワイラの内乱勃発 、ウェストニアでの魔族との焦土戦争 、聖都シレッツの教徒暴走による反乱…幼児でも知っている様な内容に答えられないのではそろそろ落第を覚悟して貰わなくてはな」貴方に嘲笑の微笑みを向け、はははっ、と鬱憤込めた空笑いを送るだろう。


暇だったから返信書いたぞーい。
返信1
k
Claudio@蛇輪さん (806nji0q)2021/8/8 22:10 (No.3702)削除
禁断の果実は甘いもの(Kite/Claudio/Eve)
返信
k
Claudio@蛇輪さん (806nji0q)2021/8/8 22:34削除
@Claudio
(何やら友の良からぬ想像を察知して口がへの字に曲がる。だがそれを口にしないのであればこちらも何も言うまい。友の恩情に甘えている上に、こちらの支度が調うまで待ってくれるような良き友人に理不尽な怒りをぶつける程…そう、昔程荒れてはいない。友の声に促されて扉からひょこりと顔を覗かせた生徒を彼は歓迎するでもなく、ただいつもの2割増し厳めしい目付きでジッと見つめる。誤解のないように言うが、別に怒っている訳ではない、ただ寝不足で目の潤いが足りないだけだ。その間に珈琲を入れてくれた友に「ああ、」と無愛想に返しつつ、生徒が座る為の椅子を魔術で手繰り寄せ、それを彼と対面に座った友の間に置いて。)


@Kite
急激に姿を整える友人の姿がどうしても面白くて、つい「んふふ」だなんて露骨な笑い声が。きゅうりを目にした猫ちゃんみたいだなんてロクでもない感想は、彼の琴線で反復横飛びをするに等しいからと胸に留め置くとして、その姿がきちんと先生を成していることを再度確認した上で「はぁい、どうぞ~」と来訪者を部屋へと通そう。二人で居ると時折物珍しそうな目で見られるし、実際に『カーくん先生ってクラ先と絡みあるんですか??』だなんて質疑は耳にタコが出来るほど聞いてきたのだけれど、特に後ろめたいこともないのでそこは別に構わない。ただ、だらけた姿を晒すことは君の体裁に関わるだろうから、そこだけはあくまでも慎重に。そうして、ゆっくりと立ち上がってはコーヒーの支度を。ミルクなし砂糖なし、真正のブラックを真っ白なカップに注いでは、それを君の元へ。「どーぞ、“クラウディオ先生”」パチリ、君へウィンクをして、いじらしく口角を上げてみせる。それから女子生徒の元へ、ぱたぱたと歩み寄れば「イヴさんだったね、丁度ケーキが焼けたところだよ。気になっちゃったならごめんね、良かったらひとつどう?」だなんて、かくりと首を傾げて見せよう。


@Eve
……アースラント二年、フォーサイスです。甘い匂いがしましたので。(適当に名乗りを上げた後、扉からちらり顔を覗かせた。無機質な声色に無表情、されど放つ言葉は人間らしい。あまり甘いものを食べたことがないらしい、言葉通りに匂いの発生源のありかを探そうとしている。特に言い訳をするでも、包み隠すでもなく、甘い匂いに誘われたと白状するところは_。それにとっては白状ではないのだろうが、敢えて言い訳など一切しないところはある意味正々堂々としていた。それに、何なら用事はあるのだ。最近それはもう呪われてばかりで、そろそろあの気だるさにもうんざりしている。対策を教えてもらうだとか、対処してもらうだとか、手を打たなければならないと思い始めていた頃だ。)


@Claudio
「…珈琲もくれ……」(机に上半身をぺったりと預けながら、友の言葉に飲み物のオーダーも付け加えてこれを了承する。また甘やかされているなと自覚しつつ、この件が片付いたらまた食事でも奢ろうと、甘い香りにクールダウンの姿勢に入った脳が緩り思考する。しかしそれは友の一声で一転して。生徒の前でだらしなく、分かりやすく弱味を見せるような彼ではない。扉の前に人が居ると理解するや否や、机に貼り付いていた上半身を引き剥がすべく跳び起き、その拍子で軽い目眩に襲われるも無理矢理受け流しつつ、緩めていたネクタイを締め直し、乱れていた卓上の書類をさっと端へ避けて軽く整えれば、扉が開かれた時には背筋をシャンと伸ばし、昂然と足を組んで座るいつもどおりの彼が目に入ることだろう。)


@Kite
それが焼き上がると共に、漏れ出す甘い香はよりはっきりとした輪郭を描き出す。オーブンの蓋を開けば、熱気と共に甘味は明確な形を保ってその場に充満することとなるだろう。「おつかれさまだね、クラウスくん」トレイを両手で掴んでは、テーブルへと移動する。予め用意しておいたケーキクーラーにひとつひとつを並べて、パチンと指を鳴らせばトレイは元の場所へと舞い戻る。如何にも満身創痍な友人の目の前の席を陣取ったところで、両手で頬杖をついて、それからわざとらしくかくりと首を傾げるのだ。「甘いものは頭にいいよ、おひとついかが?」細められた瞳と、頬を撫でる黒髪。君のように机に伏して、より目線の高さを合わせようとしたって構わなかったのだけれど、それをするとどうも眠くなってしまうから。だから、か。比較的高いままの状態を保った視線が、扉に貼り付く不審な影を捉えるに造作はなかったのだ。ぱち、ぱちと瞬きをふたつ。用があるならばノックをするだろうに、どうもその様子はない。小さく息を吸い込んで、それから影に呼び掛けを。「どうしたの~? どちら様~?」プライバシー云々を考慮した磨り硝子では、どうしても君が誰かまでは分かりやしないらしい。菓子のように甘ったるい男の声色は、真っ直ぐに扉の向こうの貴女の元に届くことだろう


@Eve
(ふと、甘い匂いが鼻を擽る。その中に林檎のような匂いと、それと……混ざっているのと甘さに負けてか、よくわからなくなってしまったが。ただ同じ学年の者に頼まれて植物園に忘れ物を取りにきただけだと言うのに、まさかこんな甘い誘いがあろうとは。先に役割を果たさなければならない、と付近を見渡せば、見事にぽつんと教科書が佇んでいる。それをそっと拾い上げて、教科書の着た土の服をぱっぱと払う。_そういえば、期限についての指定はなかった。機械的な彼女を期限も言わずにパシった彼の落ち度である。甘い匂いを辿るようにふらふらと研究室に向かえば、扉のガラスにはりつき 中の様子をじっと伺ってみた。)


@Claudio
(オーブンに甘いお楽しみを入れる友の後ろで、一人机に向かって論文に向き合う者が一人。眼鏡越しにペン先を射殺さんばかりの視線で追いながら、ガリガリと紙に文字を書き連ねていく。本当は仕事も何も終えて此処へ来る筈が、つい先日ベルグロス皇国の古代魔術の研究団体へ提出した論文に他の研究者から些細な"ケチ"をつけられ、その抗議の意も込めた追加資料を執筆中なのである。徹夜したのか、目の下には黒いヤモリ…いやクマができている。)「……ハァ、匂いだけで頭がやられそうだな、コレは…。」(甘い香りを生産するオーブンをちらちらと気にする髪の蛇を宥めながら、スッと甘い空気を吸い込んで。疲れた身体と脳を甘やかす香りが染み渡るようで、一度ペンを置いて机に項垂れよう。)


@Kite
仄かな炎に暖められて、とろりと溶け出したバターが香る。薄切り林檎と砂糖の甘さが鼻を擽るころ、フライパンを火から下ろす。これはまた後で。別でボウルを用意して、そこに米粉とベーキングパウダー。卵と牛乳は新鮮な物に拘ってみる。砂糖の代わりにウェストニアのシロップをすきなだけ。溶かしバターを混ぜ合わせ、隠し味には林檎のジャムとほんの少しの真心を。それらを滑らかになるまで手作業でかき混ぜる。とろり、すくい上げたそれがリボンのように滑らかに落ちゆく頃合いに、紙の型に8等分。上から甘い林檎を外側から巻くように置いていけば、そこに8輪の花が出来上がる。「うん、かわいい」思わず緩んだ顔もそのままに、後はオーブンにお任せである。数十分もすれば甘い香りが植物学の研究室から漂ってくるだろう。時に誰かすら誘い込む、魅惑的な林檎の香りが。
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L
Lito@D3さん (80p261t3)2021/8/8 22:16 (No.3703)削除
「"憶えていてくれて光栄です。貴方の慧眼は昔から信頼できますからね"」普段は食事も早々に済ませて課題やら自習やらに専念するが、昔馴染みとの時間を優先した方がいいと彼は考えている。それは数年もの間親元を離れている寂しさもあるのだろう、大人ぶった物言いの裏には子供らしい感情が張り付いているようで、心なしか高揚しているように感じるのは、なんてことはない、安心感を得てようやく彼なりの"普通"になれたからなのだろう。「"では、ご相伴に預からせていただきます"」薄く微笑みを浮かべては彼の隣を歩く。その身長差故に、人によっては親子と勘違いしてしまうかもしれない。尤もこの肌の色ではそれもないだろうが
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Serena@乖離さん (808dko3x)2021/8/7 23:38 (No.3687)削除
[adsgald@教]
今回は付き合ってくれて有難う。君の様な聡明な生徒とウェストニアに来れるなんて、俺はとんだ幸福者だ(暖かな陽気に包まれたウェストニア王国には花の香りやお菓子の香りが微かに漂っている。世界史の授業で使用する様々な用具の入った紙袋を両手で抱えたまま隣を歩く貴方の方に視線を向けた。ピンクブロンドの髪が風に煽られて靡く姿を見る度にこの空間が似合う子だ。と思ってしまう。なんだか此方が気恥ずかしくなり、目を逸らせば目線の先に青系統の様々な花で装飾された外観のカフェを見つけるだろう。「そういえば、ウェストニアは、シロップ漬けと紅茶が有名だそうだな。付いてきてもらったお礼に俺が何か、彼処のカフェで奢ろうか」相手に柔らかく微笑んで目を細めれば



[Serena@R6]
花弁の舞う都、ウェストニア。相変わらず、ここはいつ来ても心地の良い場所だった。6年前まではこのウェストニアでも名のある貴族の使用人として住み込みで働いていたが、その時からこの光景は然して変わりは無かった。花弁と共に風に揺れる髪には、この国の名産品でもある同色の薔薇の花弁が絡んでいる。「大袈裟ですよ、パス先生。私の方こそ、ありがとうございます。ただの付き添いではありますが、それでも勉強になる事もありますから。それに、久しぶりの買い物も出来ましたので」相変わらずの表情の乏しさで返す。その言葉通り、此方の手にも幾つか小さな紙袋が一つ握られていた。道中、自分も自分で必要な物を買ったり、気になったものを買ったりしていると、こうなってしまったのだ。最も、紙袋の中身は全て勉強道具であったり、竜用の玩具であったり等、年相応の女の子らしい中身は皆無であるが。「そんな、お礼なんて………」カフェで奢る、と提案されてはゆるりと首を横に振って断ろうとする。けれど、視線の先のカフェの外観につい目を奪われては、断りの言葉も途切れてしまった。青や緑は元々好きな色であるし、何なら今日の服装も水色のシンプルなワンピースに白い薄手のショールという此方の好みをおさえた完璧な相棒チョイスだ。加えて花も嫌いでは無い。シンプルに、興味が引かれてしまった。
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