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Tierne@A4さん (807p948r)2022/5/3 23:55 (No.22496)削除
お久し振りです。アストランティアの閉鎖から早いもので半年と少し経ちましたが皆さんお元気でしょうか。

私事なのですがティアーネ・クリンゲルリッヒというキャラクターに対する執着が捨てきれず『カフェ 「真夜中の珈琲」』と言う“オリキャラ救済の為の掲示板”に参加しようと言う結論に至りました。そこでどうせなら、とティアちゃんの設定を一年後設定で書き直してみました。ここをまだ見ておられる方は少ないかもしれませんが、ティアーネ・クリンゲルリッヒのその後に少しでも興味が御座いましたら、何となくお暇でしたら、気軽にお見通し頂けると嬉しく思います。
返信
T
Tierne@A4さん (807p948r)2022/5/3 23:56削除
【名前】Tierne・Klingelrich(ティアーネ・クリンゲルリッヒ)
【性別】女性
【年齢】19歳(学生)

【性格】おっとりとした言動とは裏腹に、天真爛漫で社交的な少女。好奇心旺盛で読書などの新たな知識を得られる事柄が大好き。また、感情が大きく揺さぶられたある出来事によって多少回復の兆しが見えてきたものの、喜怒哀楽のうち怒と哀の感覚がかなり薄い。

【容姿】目を引くのは優しげに弧を描くプレナイトの瞳と微笑みを湛える唇。髪型はチェスナットブラウンの髪を三編みシニヨンに整え赤いリボンを編み込んでいる。全身のうち肌が出ている部分は少ないが本人曰く『これでも前よりは増えた』らしい。赤い靴や怪しげな本などのちょっとした“曰く付き”な物を持ち歩いている。また、首には何らかの魔術が掛けられた黒いチョーカーが巻き付いている。

【備考】とある、魔術の存在する世界に住む少女。全寮制の学校の五年生であり、日夜勉学と魔術の研鑽に励んでいる。
恋人(同い年の男子)がおり、自身に何も言わずに旅に出ていったことを結構根に持っている。迎えに来たときは落とし穴でも仕掛けて生徒と教師の目に暫く晒そうかなと思っているそう。
返信1
G
Geoffrey Gilbert Gideonさん (80a9lie1)2021/11/4 16:55 (No.6532)削除
お久しぶりです。
皆さんどうおすごしでしょうか。
俺は元気です。
ワクチンはクソ痛かったです。

この度謝罪をしたくて参りました。
いつだったか俺がのたまいました「リコ×ジェフ書くわ!」なる言葉、はい、ご察ししている方もいらっしゃるでしょう。
大変申し訳ありません私のシワの少ない脳では「リコ×ジェフ」を書くことができませんでした○| ̄|_

堂々とのたまっておきながら何も報告せず本当にすみませんでした。
自意識過剰だとは思いますが自分が何も言わずにいることでもしかしたら「リコ×ジェフ」を待ってくださるかたの気持ちを無下にしているかもしれないと感じお詫びをしに参りました。

再度謝罪いたします。
申し訳ありませんでした
返信
G
Geoffrey Gilbert Gideonさん (80a9lie1)2021/11/4 16:57削除
途中まで書いて挫折したものです。

アクロトモフィリアという言葉がある。
体の一部が欠損した者を性的に好むという意味で腕欠損、足欠損、四肢欠損と好みの欠損度合いは各々違うらしい。

世間一般からはアブノーマルな性癖に見られがちだが、彫刻のミロのヴィーナスやらサモトラケのミケが世界的に有名なのは割りと人類の大半が重度であれ軽度であれアクロトモフィリアであるからではないのか、とか思ったりする。俺は。

それがなんだという話だが。

「は、…ハッッブショォォォイッ!!!…ぬあぁ」

特になんだということはない。

「…寒いオ、服返せ」

俺の愛らしい腕がぶっ飛んだわけでも目の前のイカれ暴力クソ教師の何かしらがぶっ飛んだわけでもない。
いや、頭のネジはぶっ飛んでるか。

「………おい、なんのつもりダオ。リコ先」

ただ、ふとそんなことを思い出しただけだ。
言っちゃえばアレ、現実逃避ってやつ。

「何のつもり?"アレ"見てもわかんねぇならジェフの脳はちっせえ背と同じくちっせえまんまなんだな」

イカれ暴力クソ教師ことリコ先は俺の体を片手で容易くベッドに押さえつけて相変わらずいけすかない笑みを浮かべていた。

とまあ、ここまで状況説明もなく進めているためそろそろ簡単に現状説明をしよう。

俺とリコ先は今とある密室に閉じ込められている。その密室は不定期に現れ、ランダムで最低二人の対象者を閉じ込め、条件を満たさない限り対象者を解放することはなく、条件を満たせば即座にドアが開く魔術結界に似た、しかし魔術や物理では決して壊すことのできないある意味最強のはた迷惑拘束空間。

出口と思わしき開かないドアの上には太めの明朝体で、でかでかとこの空間の名称が書かれていた。

その名も


〈セックスしないと出れない部屋〉


「わッッかんねぇオ!なんで突然密室でセックス強要されねばならんのダオ!?しかも相手がリコ先ときた!いやだぁ!せめてボッキュボーンのダイナマイトボディグラマー風俗嬢がいいオォォォ!!!」
「せめてとか言っといて願望高ぇな」
「うるせぇオ!さっさと服を返せダオ!!!」
「服着たらヤリずれぇだろうが」
「変換に悪意を感じるオ!何がやりずらいんダオ!?」
「何がって、セックス」
「うるせぇ!やっぱ黙れ!!!!!」
「ジェフのがうるせぇよ」
「ぬあーッ!」

枕を顔面に押し付けられた。
俺のプリティー過ぎる国宝級の面に部屋にあったそこそこ高そうな白い枕を押し付けるだなてとんだクソ野郎だ、体罰だ!体罰だ!PTAに密告してやる!この学校にPTAあるか知らんけど。

煩悩の吹きだまりみたいなこの部屋に閉じ込められてから、かれこれ1時間俺はこうして必死の抵抗を続けていた。
さすがに約30年守り続けた尻の穴をこんなふざけた部屋から脱出するためだけに解禁したくはない。もっとなんか感動的な感じで解禁したい。
…感動的な解禁ってなんだ?海辺で野外セックスでもするんか俺?

「やだやだ餓鬼みてぇに駄々捏ねてんなよ88才児。男見せやがれジェフ、長年暖め続けたそのゆるマンコを今さらけ出せ!」
「緩くねぇオ!ちゃんとクソ塞き止められる肛門しとるわボケ!てか最近だとストレスで便秘ぎみダオこんちくしょう!」
「そら御愁傷様」
「クッソ!他人事だと思いやがって!」
「他人事だからな」
「あ、ちょ、ちょ、待って!ちょっと待ってオ!ズボン、ズボンだけは下ろすなオ!いいのか!?取り返しがつかなくなるダオ!?童顔米寿エルフのケツなんぞ掘ったらお前の性癖疑われるオ!?異常性癖野郎って呼ばれるダオ!?!?」

遊びはここまでだ、とばかりにリコ先は割りとガチめな力で俺の半ズボンをひっぺがし始めた。なお、上に着ていたパーカーは既に剥ぎ取られた後だ。
俺の現在の体勢は半裸(パンツ脱がされかけてる)で俺より58cmもでけぇモラル迷子の人格破綻クソ教師に床ドン?(ベッド)的な感じに覆い被られている状態だ。
端から見たら補食シーンだぞ。

リコ先にマジになられては俺の抵抗する術がなく、この部屋の中で魔術、呪い、スキル等の使用が一切できないため俺は尻からコードが生えただけのプリティーでキューテーな合法ショタエルフ(魔術使えない)となってしまうわけだ。
なるほど餌じゃん。

「あーーー!襲われるーーー!!!!!」
「襲ってんだよ。未然形じゃなくて現在進行形だ、文法学び直せザコ」
「ファー!!!ここぞとばかりに教師面するなダオ暴力クソ教師!」
「おうおう教師だからな教師面して何が悪い。
つか職員会議あるからそろそろ急がねぇと遅れたらラウに絞められちまうんだよ。可哀想だとおもわねぇのか?」
「殺されてしまえオ!いっそ今すぐ絞め殺されてしまえ!!」
「はい、先生に暴言吐いた罰として生でヤりまーす」
「てめぇは保健体育学び直せオ!仮にも体育教師だろうが!!!」
「仮でなくとも体育教師だが???」

俺の抵抗もむなしく、最後の砦だったパンツも剥ぎ取られ、ついに生まれた時と同じ姿になってしまった。
一応言っておくとリコ先は1時間前から上半身裸だった。ヤる気満々で俺は引いた。

リコ先は左手で仰向けの俺の両腕を俺の頭上に固定し、空いた手で己のスラックスのチャックを下ろし凶悪なソレをのぞかせた。
勃ち上がっていなくてもわかる。死ぬ
俺の尻にリコ先の性剣エクスカリバー()は荷が重い。
全部いれたら串刺しになっちまう。
あ、串刺しは比喩な比喩、さすがにそこまでエグい長さはしてない。

「やめろこのッショタコン!枯れ専!異常性癖やッ!……っあッ………おま……っ」
「元気だな-ジェフ、叫んでる暇あったらけつの穴緩めろ」
「ふッ…ざけんなッ!……ッ…いきなッ……おま、お前…ッ…」

何の予告もなく奴は俺の慎ましい尻の穴に指を入れやがった。
想像していたより痛みをあまり感じなかったので、たぶんローションでも使ったのだろう。
リコ先にローションを使うという配慮があったことに俺は驚きだ。

まあローションを使ったところで異物感はある。
指がうねる気持ちが悪い感覚でぞわぞわと鳥肌が立つ。俺は奥歯を噛み締めた。指はそんなことお構い無しに中を弄くりまわし奴のちんこが入りやすいように拡張されていく。
さすがに30年もやっていないのだからケツの穴で快感を拾うのは難しい。うぅ、吐き気



m(_ _)m挫折しました
返信1
   @後朝さん (80uxxixw)2021/10/1 00:09 (No.5407)削除
〈問うのならば〉



語りましょう、騙りましょう。これは偽なる神のお話、神の代行者のお話です



唱えましょう、歌いましょう。これはとある予言の声、いずれ終わりが訪れる



終わりを、終わりを、どうか終わりを



逃げて、逃げて、どうか誰にも見つからず



成して、成して、貴方はイヴとなるでしょう



もしも役目を果たせぬのなら



それはお前の死を以て





『一つ指を折りなさい。その年に、貴方の家の建った枝が老いに砕けるだろう』
『三つ指を折りなさい。その年に、ひどい雨が続くだろう』

『四つ指を折りなさい。……これは、いけない。深海の色をした目の子が生まれる。それは我が街を滅ぼし、……いいや、いずれは世界をも。八つだ、八つまでに殺しなさい。さすれば終わりは留められるだろう。それは悪だ、世界を脅かす悪だ。』



『___悪ならば、マルムの子と呼ぶのが宜しい。そうでしょう、予言のAlfie』





『よっつ指を折ったころ
 あしき、あしき子がおちる
 やっつまでには殺さなきゃ
 今度は僕らがおわるばん
 ふかいうみの目の色の
 あしき、あしきマルムの子』

『まずはどこから切り落とそう?
 まずはどこからかわを剥ごう?
 まずはどこからいたぶろう?
 手かせはつけた?とじこめた?
 そしたら今度はいたくしよう
 死なないていどの後悔を』



すこし、お話をしましょうか。




目が覚めたら、痛かった。わからない言葉で怒鳴られて、また痛くなる。そうして痛いまま、痛いが残ったまま、眠っていった。結構初めの頃、このちくちくは、ひりひりは、痛いだと知った。餓死はさせないようにと最低限の餌を与えられて、細い体を執拗に蹴られる。殴られる。骨が折れて飛び出たり、血を吐いたり、がたがたに砕けたり、焼かれたり。そんな日がずっと、ずっと。けれどあの星だけは、けして私を裏切らない。あの星はずっと、ずっと確かに輝いているから。

私はマルムの子です。私の生まれた街は大きな街からは遠く離れた森の片隅にあり、外交をあまり持たず独自の文化を築き上げていた。また、そんな街の老いた長は豊作や災害の予言をし続けてきた方でした。彼は若い頃に占いを学び、修め、よく見通す占い師として名を馳せた人。そんな彼は、世界の終末の予言をしたと聞きます。それは私が生まれるまでの四年の間、歌としても広まったみたい。___だけれど彼は、その予言を最後とし、以降予言をすることはなくなりました。予言の真偽を確かめる前に、長たる彼は土へと還ったのです。予言において広く知られた彼の死は、多くの人が悲しんだことでしょう。嘆いたことでしょう。
そう、私は、マルムの子。
街のみならず、世界さえ滅ぼしてしまうマルムの子。八つまでに殺さなければ手遅れとなり、予言から四年後に生まれてくる子。それは深海のようなきらめく青い目を持っている_。その深海の目は、予言の目とも呼ばれました。彼の予言は滅多に外れないものでしたから、そんな突拍子もないことだって、すぐさま街に広がります。そしてその生まれるまでの四年のうちに、次第に噂は大きくもなりました。彼はもうその時にはいなかったのもあり、否定する者なんて誰一人いなくて。例えば、悪の塊。例えば、諸悪の根源。例えば、無条件で悪としていいもの、無条件で虐げていいもの。そんな中に本当に生まれてしまったら、どうなると思いますか?





いたい、いたい、ずっといたい。日によってちがって、笑いながらの日もあって、たまに怒りながらだったりする。笑いながらの日は、いいことがあった日。それか、ちょっと嫌なことがあって、その憂さ晴らしで笑ってる。怒りながらの日は、とても良くないことがあった日。それか、機嫌が悪いときだ。マルムの子として生まれた私は何をどうしても機嫌なんてとれなくて、そのときはそのときで、いっそう乱暴にいたかった。でもわたしはそれでいいの。みんながこれでいい気持ちになってくれるなら、雑巾になったって、がらくたになったって。
ゆるしましょう、ゆるしましょう、たとえどれほど痛くとも。

そう、悪は罰さなければならない。生まれた罪があるとして、災いを齎している罪として、いつも体からは血が流れて、痛くって。災厄の権化であるとされた私を虐げ、反省させることで災いが収まると思われていました。彼が死んだのはマルムの子の呪いである。それは悪魔の子である。全ての災いはマルムの子が源となり出ずる。予言にはそんなことなかったけど、生まれるまでの四年の間、勝手に積み上げられていったのでしょう。でもずっと流れていたその私の血は、何だかいいものでもあったようです。親の顔はあんまり覚えていないのですが、彼らはその権力をもって私を隠そうとしたみたい。捕まえられて檻に入れられた後もずっと抗議していたけど、ダメだったとかで。少し、申し訳ないことをしてしまったかもしれません。そういえば、穢れた血とは言われなかったな。悪の塊とされていたからか、嫌そうにはしていたけど。
フォーサイス。妖精の丘、妖精の草原。私の苗字は、そんな意味合いがあるようです。彼に聞いたら、私の家は妖精と繋がりの大きいものだったと言っていました。妖精の恵みを増して享受し、妖精に好かれ、妖精の血が一部流れている、とも。直接の繋がりこそないけれど、精霊とも関わりがある人はあったり。そのおかげでオドがとても多くて、古くから魔術に通ずる家であったり。そのオドの多さから寿命がすごく長くて、老いも遅い。それに、特に全盛期が長くなるような成長をする。彼は少し嘘つきなので、どれかが嘘かもしれませんが……。彼の言葉は、半信半疑程度が丁度いい。





悪しき私に近づいてくるひとはいっぱいいた。憂さ晴らしにと大きいひと。なんとなく虐げようと小さいひと。義務として虐げようときれいなひと。見たことのないかおをしながら、手を震わせながらたたくひと。その中で、痛めつけようとしていないひとは二人くらいいた。一人はフォーサイスの従者。一人は、よく分からない小さな男。もうちょっとわかりやすく言うと、おとこのこ、だ。

生まれて一つの季節が過ぎた頃、私は既に檻の中にいました。私としてはよく覚えていなくて、記憶としては檻にいたところから始まっているのですけれど、彼がそこで嘘をつくとは思えないので。そんな私には言葉の知識がなくて、わかるといえば、虐げられている時に発されていたものくらい。とは言ってもそれも数が少なくて、檻の外のざわめきの中には知らない言葉がたくさんでした。むしろ、知ってる言葉がたまにしか聞こえないほどで。
そんな言葉もわからない私に、言葉を教えてくれた者がいました。それは誰もが寝静まった夜、わざわざ家を抜け出しては私の手を取り、一つ一つ丁寧に教えてくれた。監視も帰った時間を見計らって、夜の闇の中で駆け寄ってきた。悪の権化に自ら触れて、あまつさえ言葉を教えてくれたのです。彼がなぜ私にそうしたのかは、今でもわかりません。あるいは、フォーサイスと繋がりのある者だったのかも。彼の声がひどく優しかったのを覚えています。こっぴどく傷つけられたときはばれない程度に軽い手当てをしてくれましたし、こっそり美味しいものを与えてくれたこともありました。「楽しい」を感じたことのない私にわかるよう強要はせず、「苦しい」と思えない私に普通なら感じると教えてくれて、「私の当たり前の当たり前でなさ」を拙くも必死に伝えてくれました。しばらくはろくな返答もできなかったけれど、それでもずっと語りかけ続けてくれていた、お人好し。





この世界には、神というものがいる、と考えるひとがいるみたい。それは困っているひとを助けてくれて、苦しんでいるひとを苦しまないようにしてあげる。だから、私のいたいも終わると思った。ずっと祈っていれば、叶えてくれるんだって。そう教えてもらったから、ずっとずっとお願いしていた。

彼は二つか三つくらいの年の間、私に色んなことを教えてくれました。昼に痛い中で聞こえたよくわからない言葉の意味を聞いたり、彼の当たり前を教えてもらったり。その中で、私は「神」を知りました。祈れば、願えば助けてくれる、痛いから解放されると言う甘言に、すがらずにはいられなかった。痛くなくなるのならそれでいい。_思えば、思い込みから成る半端な救済だった。それでも、多少は救われてしまったのだと思います。だからこそ、私はああなってしまった。事の発端は、ここにあるのかもしれませんね。
ですが_彼らの言葉を借りるなら、マルムの子はすべての災いの源です。それを罰するのならばまだしも、肩入れするなんてあってはならないこと。こんなに毎夜通いつめていらないことを教えていたら、それが知られてしまったら、それはとても重い罪になるでしょう。見つかった暁には、マルムの子も、肩入れした者も、等しく重い罪を与えられることでしょう。しかし、罪を償うに当たってマルムの子は殺してはならない。
その条件下での、重い罪を償う手法___それは。





首を絞めた。どうしてというかおをしていた。彼は私に教えてくれた。だけどそれは悪いことだったみたいで、今、二人ともが罪をつぐなっている。ああ、嫌、嫌、嫌、嫌、でも、だけど、やらなきゃ、あなたにこの痛みは耐えられないから、この痛みは普通じゃないから、あなたに、あなたに、いたいおもい、は、
あなたが悪い、あなたがわたしに、近寄らなきゃ、こんなにだって、きっと、きっと、きっと、きっと、きっと
_ああ。とまった。

それは、マルムの子に少年を殺させるというもの。マルムの子は精神的な痛みを以て、少年は死を以てそれぞれ償う。四年も毎夜会っていれば、お互い親近感も湧いたことでしょう。私は彼を、虐げない人の一人として信頼していました。彼の青い目が、綺麗で好きでした。だから、___彼を、この手をもって、殺すというのは。きっとそのときその名前を知っていたら、アングイスに「辛い」と言っていたでしょう。私はあの痛みを、痛いとしか形容することができなかったから。
殺さなければ、少年を同じ檻に入れ、等しい責め苦を味合わせると脅されました。本当の普通を知る彼には、それは到底耐えられない。痛いのあまりない日々を過ごす彼に、痛いしかない日々を与えるというのは。ですが殺せば、彼は、彼にとっての地獄の痛みを知らずに済みます。例えこれが彼には届いていなくて、最期に恨まれることとなったとしても。例えその恨みで殺した事実で、ずっと胸が痛くなったとしても。自己満足の塊でも、彼に「辛い」思いはさせたくなかったのです。
_だから、殺しました。首を絞めて、苦しむ表情を直視しながら。私も死ぬ直前まで首を絞められたことはたくさんあったから、その苦しみを知っている。それもあってか、余計に辛かった。手が緩みそうにだってなった。_最初のうちは戸惑っていて、次第に苦しそうになっていきました。抵抗したけど、これよりも辛くさせるのは嫌だから、と強く思って首を絞め続けると、少しずつ大人しくなっていって_さいごには、呪ってやる、と。そんな顔を、していました。
けれど、理由は語らなかった。私は、他人の罪を背負っても構いません。私を恨んで息絶えてくれたのなら、それは嬉しいこと。こんな理由があるからと伝えて、こうすればよかったのにとか思わせる前に、殺せたのなら。泣けなかった、その辛さに泣くということを知らなかった。彼は普通の反応を見せて動かなくなったけど、私は、普通でないまま殺した。そしてそのときもう、決意してしまいました。不幸になるし、胸が痛くなる___辛くなる。そんな思いは私もしたくないし、させたくありません。だから、私には誰も近寄らせない。だから、誰にも近寄らない。来るもの全て突き放し、長くは関わらないと。





いたかった。いたかった。いたかった。それはいくつ指を折ってもいたくて、いたくて、いたくて、変わらずに、ずっと。焼かれたのはひとつくらいで治るけれど、いたいのはすぐに次ので忘れていくけれど、これはずっと、ずっと。残り続けて、遺り続けて、痛くて、治らなくて、呪いみたいに。
___でも、それをわらったのがいた。ざまあみろって、いいきみだって。ああ、終わりきってる。くさりきってる。このまちは、全部。これがひろがってるっていうんなら、わたしはイヴだ。そうならば、そうならば、かくも穢れた世界なら。わたしは、イヴの役割を果たさなきゃいけない。

今でもまだ、時折痛みます。あの辛さはどうしたって忘れられなくて、この枷のように私に纏わりついて離れない。初めて殺したのは、彼でした。同時にきっと、誰かを恨んだ。誰かというのは本当に誰かで、恐らく誰かもわからない、何かに憎悪した。あまりの不平等さに理不尽さに、憎悪せずにはいられなかった。___普通の普通ならば、人を殺すことなんてないのでしょう。ですが、マルムの子なんて、最早ひとではないのです。罪の具現、災いのもの。あの償いとして親しいものを殺させたところで、その生まれた罪は残ったまま。もういいだろうと主張するものも数少なく、その行いを褒め称えるものばかりで。_反省させるために虐げるという目的も時と共に忘れられ、マルムの子はいつしか欲と鬱憤の掃き溜めと化していきました。本来の役割を忘れたものは、ただ堕ちるしかない。
この街は、終わりきっている。そう思ったのは、きっとその時が初めて。それまでは、それが普通であったから。普通を否定するというのは、多くの人にとってなし得ぬことでしょう。だけれど私は、普通をさえ違うと思った。その普通は外の世界にまで広がっていて、見たこともない森以外のどこかまで_言わば世界まで、腐っていると思った。当たり前を恥じた彼女のように、普通に憎悪した。世界を相手に憎悪した。その時に、私はイヴとしての役割を遂行しなければならないと確信しました。_それが、全ての引き金になる。あの時普通にさえ憎悪した私は、あるいは全てをも恨んでしまった時期があるのかもしれません。正直に言ってしまえば、私もまだ全てを恨んでいる節があるから。
痛い。彼の憎悪の呪いは、いまだ私を。





あたまががんがんする。まだいたくて、いたくて、おさまらない。痛みをどう表現したらいいのかわからなくて、顔はずっと変わらない。もし彼が死ななかったらどうなっていたんだろう。檻から逃げ出せたのかな、檻の外の景色をみれたのかな。でも今は、どうだっていい話だ。こんな世界が、気に食わない。だから、わたしはイヴになる。誰もが成せなかったことをわたしが成す。だから、目の前のかじつを食べる。
「アングイス。これを食べれば、わたしは幸せになるのね」
「アングイス。これを食べれば、神様と成るのね」

「ねえアングイス。これを食べたら、わたしはイヴになれるの?」
「神さまなんていないんだ、誰もすくっちゃくれないの。自然が気の向くままに救って滅ぼす世界なんて、いらないの」
「わたし、神になる。イヴになる。それでみんなを、平等にすくいます」
「そのために一度みんな殺すけど、いいよね、許してくれるよね」
「ね。」
_あーあ、たべちゃった。

それは禁断の果実でした。味覚が狂ってしまいそうなほど甘くて、それで。自分の体に異変があるということにはすぐに気付きます。私は檻の外に出たことはなかったから知らなかったけれど、私が食べたのは、街でも食べることだけは禁じられている果実だったようです。それは善悪を見抜く目を与え、罪人の印として、強制的に異端と示す。ミュディティコの森はエルフ住まう森、つまりは耳の丸いものなんて本当に数少なくて、外から来たものくらいしかいないわけです。その中で、エルフながらも丸い耳。それは、十二分に異端の証になる。___こうも露骨に異端と示されれば、気づくのもまた早く。
アングイスは、家から私の元まで大切な要件を伝えたり、私の質問に答えてくれるフォーサイスの従者です。フォーサイスの成り立ちの知識は彼から得ていますが、少しだけ彼は嘘つきだから、少し信じる程度にしていました。そんなアングイスは、語ります。私は、イヴ・フォーサイスはイヴであると。その力を持っているものであると。すべてが金色の目をしているフォーサイスの家に時折生まれてくる深海のような青い目の子は、イヴとしての役割を持っています。その由来は、千年戦争後のフォーサイスの動き方にある。フォーサイスは千年戦争が後の残党狩りを主に務めた家であったようで、皆一様に物であれ命であれ壊すことに特化しているし、その技術もまた受け継がれています。残党狩りの中でも特に名を馳せたのは、残党狩りが開始された時期の当主。_それもまた、イヴ。妖精に好かれやすいのは、彼、あるいは彼女が妖精や精霊を使役していたのでしょう。その辺りのスキルを持っていたとか、魔術を行使していたのかもしれません。
そして恐らく、初めのイヴの時点で「イヴ」を「役割」とするための何かを吹き込まれています。イヴは世界を作り直し、正しいものとする。あまりにも間違いすぎた全部をぜろからやり直す。そして作り直した世界を治め、繁栄させていく_その役を、フォーサイスはイヴと名付けただけのことです。イヴに始まり、イヴに終わる。そして終わらせたイヴは新たに始まりのイヴとなる。きっと誰かに騙されそう信じられてきて、私は青い目を持って生まれた。故に、真っ先にイヴと名を与えられたのです。私は何人目かのイヴ・フォーサイス。私の知らぬイヴたちは次々と目的を果たせず潰えていったために、生まれた青い目の子に新たにイヴという役割を与えたのでしょう。だから、私には名前がありません。イヴというのは、私の役割の名ですから。イヴ・フォーサイスというのは、私でない誰かもまた与えられた、役割の名なのですから。
___ああ、そうだ。もしかしたら、初めのイヴは、蛇に騙されたのかもしれませんね。





どうしてこれがいけないの。わたしはそうと知らなかった、知らなかった、ただ差し出されたものを受け取っただけでわたしは罪となる。差し伸べられた手を取れば罪となったし、差し出された果実を言われた通りに食べたら罪となった。
ああ、おかしい、何もかも。世界はおかしい。ああ、腐ってる。芯のずいから、すべてがどろどろに。少しずつ増してくいたみ、消えてくいろ。次第に世界は白か黒かだけになりはじめて、わたしはそれが善悪なのだと知った。まっくろだ、こんな世界まっくろだ。檻は月と星の光が照らしていたけど、ここを照らすものなんてない。これが普通というのなら、私はそこから否定する。ゆるさず、ゆるさず、殺されたって許すものか。
やかれて、くだかれて、もっともっとひどくなる。ちぎって、きって、もっともっとぼろぼろに。

耳が丸いということは、禁断の果実を口にしたということ。元からであればそれは罪を逃れましょうが、生憎と私は毎日見知らぬ多くの人に見られている。元は耳が尖っていたというのも周知の事実でしょうし、そうでなくとも罪は着せられたはず。そして、罪に罪を重ね、また更に罪を重ねた_。そうなれば罰も更に重くなるのは当然です。いいえ、これは当然ではないのかもしれない。けれど、私の知る当然では、私の知る普通では普通だったのです。ひどく虐げる程度であった「反省を促す行為」はいつしか拷問へと変わり果てました。日に日にその傷つけ方は酷くなっていきましたが、最早「反省を促す行為」としてでは成立しないほどでしたが、それが一気に、更に悪化したともなれば。
もうその頃は、痛いなんて。痛いなんて、ただの感覚のひとつでしかないと思っていました。日常的に感じる感覚のひとつであり、痛みへの怯えさえも失ってしまった、忘れてしまった。殴打に怯まないのはそのせいです。痛くても全く平気そうな顔をしてしまうのはそのせいです。四六時中痛かったせいで、むしろ今の方が不思議に感じてしまうくらい。例として言うのであれば、いつも感じていたものがひとつ抜け落ちてしまった、といった風な。本来身体は危険な状態にあれば警鐘を鳴らすようにできていますが、私はもうそれすらない。危険であれど恐れない、恐れることが出来ないほどに、ずっと危険に晒されていました。___本能をさえ抑制する、度重なる暴力。それの恐ろしさ_いいえ、恐ろしくなさは、体験したものにしかわからない。
こうも暴力がひどくなる理由たる禁断の果実は、善悪の知識を与える実でした。それは直接、目に作用します。最も容易に善悪を認知する方法だったのでしょう、黒を悪、白を善とし、全ての物体、生命、風景、目に映る景色すべてを白黒に変えてしまった。少しずつ色が抜け落ち、あるいは黒へと染まりだし、ひと月ともたない内に世界は白黒になってしまった。私の目は、そんなふうになってしまったのです。だから、私の目にはすべてが黒く映った。夜の闇よりも深く、月明かりのない日の檻の床よりも暗い、黒。それを普通としている世界を、なおも私は_私に巣食う呪いは恨んだのです。_それを、恨んでいるというのを表現することはできなかったけど。
それから、私の名は変わりました。マルムの子は、マールムの子に。それもまた、私の名ではないけれど。





これは、初めてのいたみ。何だか観客をぞろぞろ引き連れて、檻の中に、いつものように入ってくる男一人。ふたり。今日は変だ、たくさんだ。見回していたら、後ろからおさえられる。いつもはおさえたりなんかしないのに、おかしい、おかしい。正面から手が伸びて、観客の方に目をやったら
___え?
目が、いたい、ちがう。爪が直に目のなかに、指が入って、目の奥で。ぐちゃぐちゃぶちぶち何かがちぎれる音がして、ぶつっと片方の視界が途切れて、ああ、あああ、痛い、痛い、痛い。右しか見えなくなって、その右だけであっちを見たら、なんだか嬉しそうに、___どうして。わたしはこんなに痛いのに。左から、たえず血があふれる。歓声。檻からでていって、わたしの目を地面に投げつけているのが見える。それは、うれし、そうに。みながみな、歓声を。___どうして?

七つ。八つまでに殺さなければ世界が朽ちてしまうというマールムの子。だから、八つになるまでに処刑すると決まっていました。具体的な処刑の期限は、七つと半分。その時は、六つと半分でした。恐らくは、処刑一年前を記念したものでしょう。あるいは、ただ暴力の一環だったのかも。私は、六つと半分の時、左目を失ったのです。大きな男の手で抉られ、くり抜かれ、尋常でない痛みをもって。ぼたぼたと血がずっと垂れ続けて、いつにも増して檻の床が赤く乾いていました。痛い、としか思えなかった。痛いで頭をいっぱいにされるほどに、それは痛かったのです。マールムの子の、予言の目。予言の、深海のような深い青の目。それは忌むべきもので、忌むべき目をくり抜いたことに歓声が。_そこからは白黒だけの世界が右側にしか映らなくなり、左は真っ暗。気味悪がられるのには拍車がかかっていきます。
そして、それに疑問を持ちました。どうして、と思いました。そうされるのは普通だった、虐げられるのは普通だった。何らおかしいことではなくて、こうあるべきなのだと思っていた、のに。何故かそれに、疑問を覚えてしまったのです。私だけ痛いなんておかしい、と。痛いのが当たり前で、痛くされるべきとしか私は知らなかったのに。皆が皆、私が痛めつけられて歓声をあげていることに、どうしてと思った。どうしてこんなに、私が痛く在らなければならないのか。ずっと痛くなければならない理由。それは、明確に教えられたことはありませんでした。だけど、それ以前に。それ以前に、何かが狂っていると思ったのです。反省させるために、こんな。_たとえ知っていても知らなくっても、同じように、疑問を抱いたことでしょう。そして、こんな世界を作ったのが神だというのなら。神が、こんな仕打ちを望んだというのなら。





死ぬ。わたしも同じように、彼と同じように死んでいく。憎悪のうちに死んでいく。風がふいて、髪が揺れて、罵声。七つと半分、わたしのいままでは痛い一色。嬉しいも、楽しいも、見たことはあってもわたしには与えられなかった。そんな罵声、もう嬲れないのかと悲しむ声も、すこしだけ。右しかない目で世界を見た。それは真っ黒で、真っ黒で。もうどうしようもないくらいの黒ばっかり。_ああ、終わるんだ。痛くなくなるんだ。最後も痛いけど、それが終わったら、もう。死んだ後に、すべてやり直そう。それができるのかはわからないけど、まだ全部を恨んでいる。呪いに恨んでいる。死ぬのは怖くない、身近に感じてきたものだから。
首を穴みたいなのに通して、誰かが綱みたいなのを握る音がする。それだけで歓声があがる。もう世界の終わりに怯えなくていいんだって、これで安全だって。所詮ちょっと痛いだけ、なんてことはない。でも死んだって、許さない。わたしはイヴの役目を果たさなきゃいけないんだ。

無情の音がした。綱を引く音。
歓声。
憎悪。
いたい。
ほんとうに、それだけだった。

されどその疑問は、解消されることなく潰えます。ずっと痛めつけられたのはなぜか?マールムの子と呼ばれていたのはなぜか?それすら知ることもなく、ただ淡々と処刑が執り行われました。刃の落ちてくる音は次第に大きくなり、すこし冷たい刃が首を掠めて、痛みが走る。一瞬だけではありますが、片方だけの目で、自分の血が見えたような気もしました。私はあの時、憎悪しか抱いていなかった。こんなことにした誰かと、あの街と、世界と、すべてに。私は彼を殺しましたが、彼もこんな風に、ただならぬ憎悪をもって死んでいったのだろうか、と思うと_少し、悲しくなります。彼にこれほど、いやな思いをさせていただなんて。
私はこれで終わるはずでした。死んだ後にすべてやり直すなんてできるはずもなく、死をよく知らなかった私は消え去るはずでした。無念のうちに、少年と同じように憎悪を抱いて死んでいくはずだったのです。静かに、黒の世界を正せずに、終わっていく。それが新たなイヴ・フォーサイスの終わりであり、マールムの子の終わりでもあった。誰もがそう、望んでいたはずなのです。
でも。





どう、して。
首が落ちた。
悲鳴。
歓声。
それが、目の前で見えた。
悲鳴。
悲鳴。
首は確かに落ちている。だけど、何でそれがはっきりみえるんだろう。それに、どうして左側がうつっているのだろう。
立ち上がる。
悲鳴。
悲鳴。
悲鳴。
立ち上がったときに、ふと影がさした。顔を上げると、見慣れた従者。ただ、なんにも言わずに背をおされた。悲鳴をあげる観客の方を見れば、穏やかにわらっている、しらない男と女。
いかなきゃ。

アングイスの魔術でしょう。落ちたはずの私の首はすぐさま治り、あろうことか死をなかったこととされた。たったの一度、蘇らせるだけのスキルを、彼は私に使ったのです。裁かなければ、神にならなければ。イヴとして、私の役目を遂行しなければ。常に誰かの望みに応えるように、望まれた姿であり、望まれたかたちであった私は、そう再認識しました。そう在れと望まれたから、マールムの子として在りました。望まれていると教えられたから、イヴになると決めました。死を望まれたから、大人しく処刑されました。それで誰かが笑顔になってくれるなら構わないと思っていたし、それで誰かが満足するのなら、それでいい。
_例え冤罪であろうとも、別人であろうとも。見知らぬ誰かがこんなにぼろぼろになるはずだったのに、全く関係のない私がそれを肩代わりしていたと知っても、それを恨まなかった。私の内にある憎悪の呪いはそれを恨みますが、私はそれを恨まない。だけど、恨まない私さえ、誰かの望みに応えるかたち。本当の私は、望まれたようにある多くの私という殻に押し潰されて、もうわからなくなってしまったのです。強いていうなら、一度だけ。一度だけ、自分の望みに応えています。多くのひとが神に祈りますが、確実に叶えてくれる存在はない。私は叶えられなかった側の人間だから、確実に叶えてくれる存在を願った。だけどそんなのいるわけなくて、無意識の内にそれを知って、自分が神になってやると。いくらかの人も、神を願ったことでしょう。同じように、神に祈りながらも叶えられなかった人たちは。
まだ、自分の望みにも応えるだけ、まともだったのかもしれません。





はしる、はしる。アングイスに手枷の鎖を切ってもらって、彼を背にはしる。殺さなきゃ、殺さなきゃ。アングイス、そうなんでしょう。あの子を殺さないといけないんでしょう。あの子が、あの子が、本当の。
「触れて、念じなさい。"壊したい"と。_それだけで、貴方の手はすべてを崩しうるのです。」
ねえ、教えてアングイス。
教えて、すべてを、知ってるんでしょう。
真っ黒が、ある。比にならないくらいの黒で、それはもう、すごく目にとまった。ああ、あの子だ。わたしとちがってきれいな身体の、傷のない、少女だった。同じ年で、きれいで、それで。ほとんど黒に近い、青のひとみ。本当の、深海のようないろをしてたんだろう。この子がほんとの、マールムの子。もう少し遅かったら、手遅れになっていた。私は妬まない。私は恨まない。ただ、よかったと。傷ついたのが私で、よかったと。
変なものでも見るような目。構わない。何か言われているけれど、気にしない。その少女に、ふれた。壊れて、と願った。崩れる、きえる。悲鳴。隣の大きい男と女にふれる。多分、仲のいいひとなんだろうから。3人、この建物の中にはまだ小さい男と女がいる。それにも全部ふれてまわると、たちまち家はしんとして。誰も、いなくなった。_死んだ先の世界で、仲良しとはなればなれは辛いだろうから。ぜんぶ、あっちに送ってあげただけ。
あとは、そう。アングイス、アングイス。わたし、にげなきゃいけないんでしょう。アングイスと、知らない大人の男と女が留めてくれるから、わたしは。_でも最後に、後始末はしなくちゃ。まちにふれて、皆の記憶を壊したいと願った。これで消えたのかはわからない、でも。彼らは、予言に振り回されただけだ。予言に翻弄されて、くろくなってしまってただけ。そうしたら、今度こそ背を向けて、歩きだした。やらなきゃいけないことがある。まずは神に、ならなくちゃ。

_ごめんなさい、大きな嘘をひとつついていました。私、マールムの子ではないのです。深海のような色の瞳、4年後に生まれてくる子ども。それに該当しただけの、恐らくはただのエルフ。だから私の瞳は、少し青が強いのです。深海というには浅いでしょう?_ですが、予言が外れていたという訳ではありません。本当に、隠されて育ってきていたその少女は、予言にある通りの子だった。命と引き換えに世界をも壊す力を持っていた。私にはそれが、途方もない黒に見えたのです。彼女の目に浮かぶ色とは比にならないほどに、黒、黒、黒に。だから、消しました。何ら躊躇うことはなく。世界をも滅ぼすのですから、八つになるまでに殺さなければならないのですから。そのマールムの子を、黒に僅かな青を含んだ、本当の深海の色の目の子を。実際に深海に行ったことはありませんが、彼女の方が深海の色をしているのでしょう。私の目は、青だから。ただ、私が痛い思いをしてでも幸せになってくれた赤の他人を自らの手で殺すというのは、少し悲しかったかな。_次に、少女の隣の大きい男と女を消しました。今思えば、あれは、そう_親、だったのでしょうか。そして兄弟、姉妹、それらしきものをすべて消し去りました。奈落の底まで、ただ迷うことなく、叩き落とした。そちらの方が、幸せだろうと思ったから。たった一人で奈落の底にいるよりも、自分と近い人間がいた方が気が楽でしょうと思ったから。家族まるごと、消し去りました_私は、たとえ如何に痛い思いをしたとて、如何に受けたこの生を台無しにされようとて、彼女を恨もうとは思わないのです。ただただ、傷つかなくて良かったと。こんなにも傷ついてしまわなくて良かったと。本当に、そう思った。耳を疑うかもしれません、そんなわけないと思うかも。だけど、心の底から、そう思っていたのです。そう思っているのです。
その後はただ歩いて、イヴ・フォーサイスの生まれた街を後にしました。私のことをすっかり忘れてしまったのか、自らの犯した冤罪の拷問という罪を忘れてしまったのか、次第に街は普段の活気と賑わいを取り戻していきました。そのときに_そのときに、強く。ああ、こんなものなのかと。忘れてしまえば、ただそれだけなのかと。終わっている、腐っている。だから、根底から作り直す必要があると。またも、確かな決意を抱いて、再び抱いて。
私が本当はマールムの子ではないというのも全て、アングイスが教えてくれたものです。彼に関してはあまり語れませんが、少なからず彼は私よりも知っている。私よりも、誰よりも。それは神の如くに……いえ、これ以上は。そういえば彼が鎖をちぎってくれる時、何か魔術をかけていたな。ペンダントもくれたっけ。
マールムの子として扱われたから、いずれ世界を破壊してしまう恐ろしいものとして在りました。これはそのときは知らなかったけれど、暴力に何の感情も抱きませんでした。寧ろ、感謝しろとさえ言われていたので、感謝すら。私は、誰かのかわりにそう在ります。望まれたように、罪の衣を羽織りましょう。





お前の望みを口にしなさい。望むのなら叶えてやる。私が神だ。お前たちの願いを叶えるものだ。乞え、望め。崇める必要はない、したいのならば好きにしろ。
___お前の一番の望みは、何だ。
お前の望みは何だ。
あの男を殺してほしいと。_承った、跡形もなく。
お前の望みは何だ。
その角がいらぬと。_動くな、消してやる。
お前の望みは何だ。
この生が気に食わぬと。_目を閉じろ、それだけでいい。
お前の望みは何だ。
すべてを消したいか。_暫く待て、いずれ作り直す。
お前の望みは何だ。
___全ての悪を、葬り去りたいか。
貴様は悪だ。お前は善だ。善であれば、そのまま生きているといい。悪ならば、壊すのみだ。お前は。お前は。お前は。お前は_

イヴ・フォーサイスは、感情なき冷徹な機械となりました。神に願えど叶わなかった故の、神などいないと知ったが故の。自らの手で感情という感情を壊し、願いに応じ続けた。ただ、ただひたすらに、可能な限り望まれたことを叶える機械。悪意をもって騙されたのなら騙したものへ罰を下します。個人的な望みであれば、神としての私にできる範囲で。ですが、私は壊すことしか知りません。直すなんてわからなくて、いのちがどんな風になっているのか知らなかった。だから、死者と話したい、もう一度会いたいと願う多くの者は、消しました。あちらに行けば会えるだろう、話せるだろう。そんな考えを、もって。_いかなる手法を使ったとて、私は願いに応え続けた。私は神で、神は確実に願いを叶えてくれるのだと、見知らぬ人たちに言い続けた。神という存在に裏切られて、心の底から恨んだ私のようになってほしくなかったから。私という新たな神を作り上げて、誰もの願いに応えたのです。
その中で、とある虚ろな目をした男が願いました。_悪を、葬り去りたい。しかし私には不可能だ、かわりに断じてくれと。その願いだって、私は叶えます。善を護ることこそなかれど、確かに悪と映るものは静かに消して行きました。何人も、何十人も、もう数え切れないくらい。私は、たった一人の男の願いによって、悪を葬ってきた。本当は、私のすべきことは、それではないのに。
中には私を崇拝する、神として祀る程の者達もいました。布を加工し、私に神としての衣装を捧げてきたような。私の住むところを作り、絶えず貢物を捧げてきたような。本当はそういったふうに神殿などは作って欲しくなかったのですが、彼らが私にそのようにあって欲しいと願ったのです。故に、私はその通りに。崇拝の強制こそしませんでしたが、そこを拠点として世界各地を回り、また捧げられた衣を纏ったのです。彼らは私の手の危険性を知っていましたし、神ならば神聖故に触れてはならないという考えから、直接は触れない衣を私にくれました。顔は黒いベールに覆われ、手には鎖を通せる手袋。肌こそ出ていましたが、その多くが薄く透ける素材の布で触れないようになっていたのです。彼らは、私に触れるのを躊躇った。
_ああ。あれも彼に仕込まれたものだったのかな。





_必要だ。必要ならば、出向くまで。

そうして神殿に留まり、願いを叶え続けて七十年近く。神としての私の元に届いた一通の手紙を巫女が持ってきました。それは、聞き慣れないものの名と、私を勧誘する文章。巫女に問うてみたところ、なるほど、これはイヴとして必要だ、と。フォーサイスはオドこそ多い家系でしたが、当時の私は魔術なんてほぼ知らなかった。だから、作り直す手段が必要だと思ったのです。壊すまではできますが、世界を作り直す方法まではなかった。作り直すために、私はアストランティアへの入学を決めたんです。神の座から立ち上がって、六年ほど席を空けるから守っていろと言い捨てて。私に仕えていた者達は勿論慌てふためいていましたが、ただの六年。_今、席を空けて二年になります。時折下に降りては神として望みを叶えたり悪を裁いたりしていましたが、私はここに来て良かった。悪を嫌いと思ってしまったことから始まり、過去の傷は浮かび上がって、お節介な治す者に直されて、ただ私に関わろうとしてきていただけの者に思い出させてもらった。
イヴとしての役割を果たすはずなのに、神としての使命が残っているのに、私はそれを放棄する。ここに、身勝手に地位を捨てる。





ここに来て、良かったのです。ああ、大切な、大切な貴方。
私に、触れようとした貴方。
私は、わたしは、ワタシは___
ねえ、どうか私に、新しい名をください。
イヴ・フォーサイスではないのです。イヴ・フォーサイスはもうやめなのです。
だからこの、くちてゆく前に。
最期に、新しい名をおくって?

その名で呼ぶということは、もう生きられなくなるということ。
それでも、後悔はしていないよ。
アングイス。お前はまた、どこかで嗤っているのね、こうなることを知っていたのね。こうなるように、仕向けたのね。
貴方にも、感謝をしましょう。だって私、幸せなんだもの。

ねえ、どうか、どうか。
どうか、私の首を絞めて。
そのまま、私の朽ちていくまで。
私はこのまま、くずれたい。
少しだけ幸せになった。なら、終わりにも終わりがおとずれます。

___。ああ。
もう少し、幸せでありたかったな。

最後に。最期にどうか、私のことを忘れて。
こんなに狂ってしまった、木偶人形のことを忘れて。
すべてすべて、私がなかったことにします。
イヴ・フォーサイスはいなかった。
フォーサイスという家はなかった。
すこし空虚になるけれど、それだけはどうか忘れずに。
さあ、これがおわりとなるでしょう。
私という存在を、私が葬るときです。

___ありがとう。

これは、自分で知ったの。

愛しています、……___。










語りましょう、騙りましょう。これは    のお話、     のお話です

唱えましょう、歌いましょう。これはとある予言の声、いずれ終わりが訪れる

終わりを、終わりを、どうか終わりを

逃げて、逃げて、どうか誰にも見つからず

成して、成して、貴方は  となるでしょう

もしも役目を果たせぬのなら





それはお前の死を以て___
返信
   @後朝さん (80uxxixw)2021/10/8 02:40削除
「さて、御伽噺はここまでにございます。神に祈った神さまのお話、楽しんでいただけましたでしょうか?」

「ところでこちらのお話、実話なのですよ。」

「貴方が忘れていらっしゃるだけなのです。」

「周りにいたはずの、ふたつのいのちを。」

「神の手のひらに乗せられて、あたかもいなかったかのように見せられているだけなのです。」

「そのふたつのいのちは、   と   と言いまして……おっと。」

「失礼、貴方がたには聞き取れない様子。」

「なァに、嘘、嘘ですとも。」

「___どうぞお忘れくださいませ。」





「私は、物語を正しい結末へと導く者。」

「お嬢様_ステラがイヴとしての装置なのであれば、私は物語の展開を知り、最期を知り、そうしてゆく者。」

「イヴの道を逸れ、奈落に自ら落ちてゆくという結末のため、私は山ほど彼女を騙しましたとも。」

「物語の行く末を知っていましたから、そうなるために必要なことはすべて私がしております。」

「お嬢様も薄々勘づいていらっしゃったのでしょう。」

「さて、これより私は少し奈落へ出向きます。お嬢様と顔を合わせなければなりませんからね。」



「_名前?」

「聞いても面白みはありませんよ。」

「アングイス・ドゥクス。

 導く者として物語を補助する蛇の一族に生まれた、いくつかめのアングイス・ドゥクスにございます。」





「ああ、そうそう。」

「このことはすぐに忘れてください。



 物語はひとりでに紡がれてゆくものなのですからね。」
返信1
Kite@Butterさん (806ifrxb)2021/8/2 21:46 (No.3602)削除
Q.あなたはKite Cross先生をどう思いますか?

「かわいいですよね!!! 学園の癒やし!!! 天使ですよあれは!!! もうとにかく尊いんです!!!」

「女ばっかに囲まれやがって気に入らねぇよなァ……うるっせぇし、何が良いんだよ。アイドル気取りが……」

「カーくん先生、この前手振ったら指ハートが返ってきたんですよね。そういうところほんとずるい~!」

「あぁ、人気者だね。誠実さで慕われているようだよ。……何人か、“本気”、な子が居る気もしなくもないが」

「研究室に行ったらもふもふのアイマスク付けて、ふわふわのアザラシのぬいぐるみ抱きながら寝てたので、抜かりないなと思いました」

「研究員と教員掛け持ってるの本当に凄いですよね。本職だって指折りの大手でしょう? お疲れのはずなのに学内では愛想良く振る舞ってるんですから、もうやってること殆どアイドルですよ。身体壊さないか心配です」

「ただのフェミニストだと思ってたけど、普通に男にも優しいよ。紳士、いや保育士だね。アレは」

「常勤の先生じゃないけど、とっても頼りになりますよね。皆さんからも慕われてそうですし。ただあの……出勤日はともかく、たまに出勤時間から退勤時間まで寸分違わず把握している子がいて……どこから情報仕入れてるんだろう……」

「珍しく怒られてる子を見たことあるんですけど『口だけの反省は不要なので、具体的な対策案をお願いします』って。ひえぇ……何したんだろう……」

「取り巻きのリアコがめちゃくちゃ怖い」

「補習受けたことあるけど、とてつもない効率主義だったんだよな。お陰で直ぐ帰れたけど、企業研究員ってシビアなんだろうなぁ」

「頼めば投げキッスしてくれるって本当ですか!?」


A.一部を省けば基本的に評価は宜しい様子。特に女学生から慕われているが、時折“ガチ”な子が混じっているとか、なんとか。刃物と背後には要注意、かもしれない。

******

涙に乗りました。良く書きすぎた気もしますがおおよそこうかな、と。
返信
Kite@Butterさん (806ifrxb)2021/10/6 00:05削除
『アルカディア製薬研究所 研究員』

「ご機嫌ようカイトセンセ。で、今日の手土産は何だ? 聞かせてくれよ。とびきりの不祥事で頼むぜ」
「ったく、お人好しがよ。人の心配を軽々しく越えてくるんじゃねぇーっつーの。死ぬんじゃねぇぞ、寝付きが悪い」

名前:Leiz Cranbely / レイズ・クランベリ
種族:ヒューマン
年齢:29歳
性別:男性

性格:飄々として軽薄。社交性に富み、陽気で活発。喜怒哀楽が豊かであり、よく笑う。但しただ能天気というわけでもなく、視野が広く気立てが良い。故に少年のような若々しさと、年齢相応以上の思慮を両立させている。尤も、若者然とした口振りは後者の印象を薄れさせ、取っつきやすさばかりを強調させるだろう。
特に悪戯心が強いため、カイトからアストランティアの不祥事を引き出してはからかうこともしばしば。ただ、危害があれば大事を取るように促すのはラインを弁えているということ。

容姿:つり上がっていながら、大きな瞳であるため眼光が極端に鋭いというわけでもない。色は宝石を嵌め込んだような輝かしいハニーゴールド。紺青から雄夕に移ろう奇抜で目に痛い髪色。短く整え、前髪は大胆にかき上げられる。キリっとした太めの眉に健康的な肌色、白い歯。面構えだけでも快活を通り過ぎて軽薄な雰囲気を演出する。
背丈は176cmだが、股下が長いため、威圧感を与えぬ程度にはそれ以上の長身に見えさせる。男性らしく程よく筋肉質な体格。
服装:研究所より支給された白ローブの裏地は青。ネクタイは着用してはいるものの、大体は緩められているため意味を成さない。
装飾品がやたらに多く、両耳にこれでもかと開けられたピアスに、両手の指に一本ずつ嵌められたらリング、右手首のブレスレット、首元のネックレスなど。それらがより彼の軽薄さを加速させている。

固有スキル:『Ready-Re:made』
人工物を分解し素材に戻す力。または分解した素材から人工物を再構成する力。薬品を素材に戻すことから、組み立てられた家具を部品に戻すことまでお手のもの。但しオドの関係から、建築物などの大きなものには適応されず、原子レベルの分解は不可能。
対象を視界に入れ、指を弾くのが合図。この際、彼はしばしば「Ready」を口にするが、これは集中するためのかけ声であるため無くても構わない。何ならフィンガースナップも手を打ち鳴らすことなどで代用できるらしいが、「こっちの方が映えるじゃん?」とのこと。
前者は人の手が加わっているあらゆるものに適応されるが、後者は自身で分解したものにしか適応されない。
また、これによって簡単なものであれば変化系の魔術を解除することも可能である。

保有スキル:
『精密動作』人間の限界を越えた極度の精密動作を可能とする。応用すれば物質に触れることなく動かせるとか。
『疾走感』一時的に自身にかかる空気抵抗を軽減し、移動速度を上げる。
『自動筆記』頭の中で文を念じながら、ペンなどでインクを一滴紙へと垂らせば文章が完成する。
ほか

魔術媒体:『リング』
両手の指に填められた10個のリング。ひとつ増やすごとに、より優れた精密性を発揮する。

備考:アルカディア製薬研究所に席を置く研究員。カイトの同期。
シレッツ生まれシレッツ育ち。聖都シレッツに学舎を構える「ルドベキア魔術アカデミー」の卒業生。調和と安寧を掲げる優雅な学舎にて、その心を育みながら平穏無事な学生生活を送ったという。外部からのアカデミーの講評は「上品で叱責を知らぬような子息令嬢の集う高潔な学校」といったところ。卒業記念品に名の刻まれたクラウンが贈呈されることで有名。
また、ルドベキアはミュール教系のアカデミーであるため、毎朝の祭儀が存在する。彼も(遅刻こそすれ)在籍中は真面目に祭儀に参加していたため、今でもそれが生活の一部に習慣として残っている。しかし、だからといって敬虔なミュール教徒かと問われれば別段そのようなこともないらしい。
クランベリは主に考古学を専門にしてきた学者家系であり、代々学会を率いてきた身であるため、お家柄としてはそれなりの地位がある良家。但し彼は三男坊であるため、後継者云々は深く考えず上二人に丸投げし、常識の範疇で好き勝手にやっている様子。軽薄そうな印象からおおよそイメージのかけ離れた華美なアカデミーの出身なのはそういうこと。
喫煙者であり、アップルミント系のフレーバーを好んでいる。時々カイトを巻き込むことこそあれ、アシュレイには気を使っているらしい。



「カイト先輩! ご機嫌よう、午前はお疲れさまでした。引き継ぎ内容はネロが配達した通りです。午後はお願いしますね」
「天空都市って、雲の上にあるんですよね? きっと景色も綺麗なんだろうなぁ……ふふ、いつか案内してくださいね? 私とレイズ先輩とでご挨拶に行きますので。例のあのお方に」

名前:Ashley Apricotta / アシュレイ・アプリコッタ
種族:魚人族
年齢:26歳
性別:女性

性格:年相応に落ち着きがあり、たおやかな雰囲気を纏った淑女。しっかり者で真面目、それでいて謙虚で腰が低い。お洒落を好み、魔術媒体も兼ねるマニキュアを毎朝丁寧に塗り上げている。
しかし、さっぱりと垢抜けているかと問われれば否であり、所々に幼げな愛らしさが残る。例えば、かわいいものに目がなく、目新しいものを見つけては購入しているらしい。その辺りにうら若き少女の性が垣間見える。

容姿:長い口腕を持つことが影響してか、背丈は165cmとやや高め。手足はすらりと伸び、それでいて女性らしいなよやかな身体。透き通るような白い肌に、波打つ美しき長髪。毛先に向かうにつれて桔梗色から純白に移り変わり、マリンスノウを思わせる細やかな輝きを放つ。鮮やかなオレンジをした瞳は太陽を彷彿とさせる。三白眼でありながらもぱっちりと大きく、極端に吊っても垂れてもいない楕円形。年齢を考慮すればやや幼さこそ残るものの、人魚のイメージから外れない清廉な顔立ちであることに間違いはない。
服装:研究所より支給された白ローブの裏地は橙。服装は日によりバラつきはあれど、殆ど毎日ローブの上からコルセットを締めている。また、首元はネクタイを通す代わりにベルトを通している。両耳朶にピアスが一つずつ、揺れるようなデザインのものがお気に入りらしい。頭にはカチューシャを付ける。

固有スキル:『蠱惑の猛毒』
動物の調教・隷属に長ける力。彼女の保有する特殊な毒によって対象を魅了する形で発動する。手で直接接触することにより気づかぬうちに毒を回らせ、徐々に魅了するというもの。発動時は指先からおおよそ手首にかけての皮膚が毒々しい青紫色に変色する。体格が小さいものほど効き目が早い。毒といっても致死性はなく、人型の生物には効果を示さない。
また、指先から毒を射出することも可能であるが、その後のコントロールは不可能であり、真っ直ぐにしか飛ばない上に射程は3mと、文字通り動く物である獣を捕らえるのは容易ではない。

保有スキル:
『精密動作』人間の限界を越えた極度の精密動作を可能とする。応用すれば物質に触れることなく動かせるとか。
『主たる手綱』自身に隷属している生物と五感を共有し、また現在地を把握することができる。
『歌姫の微睡み』歌を聞かせることによって対象に癒しの効果をもたらす。主に精神面に干渉するものだが、軽傷であれば治癒も可能。
ほか

魔術媒体:『マニキュア』
手の爪に塗られたマニキュア。カラーバリエーションが多く揃えられているが、爪ごとに塗り分けるよりも、全ての爪に同じ色を塗ることによって最大の効果を発揮する。また、この上から別途装飾を施しても特に媒体としての影響はないらしい。彼女は青を好んでいるようだ。

備考:アルカディア製薬研究所に席を置く研究員。カイトおよびレイズの後輩。
ウォール・ラヴェリナの辺境出身のクラゲの人魚。致死性はないとはいえ毒を保有する種であり、かつクラゲという珍しい種であるため、多少の偏見の目には晒されていたらしい。ウォール・ラヴェリナを追われることはなくとも質素にひっそりと生活していた。
現在は水中よりも陸地で生活する時間が長いため、変身薬によって人型を保っている。人魚時の容姿としては、傘の部分がスカートのようになって下半身から生え、脚は口腕に置き換わり泳ぐ度にゆらゆらと揺らぐ。透明感のあるシルエットは儚げな印象を与えること請け合いだろう。
狭いコミュニティに暮らしていた反動から多くの種に溢れる地上に憧れるようになり、シレッツからの輸入品を伝手に、水底に居た頃から有り余る知識欲を以て勉学に励んでいたという。特に自身も保有している「毒」に関しては力を入れていたようで、結果としてそれが現職に繋がっている。
愛称は「アシュ」、カイトやレイズにもそのように呼ばれている。
現在は固有スキルにより多くの使い魔を連れており、とりわけ仲がよいのは「Mocchy / モッチー」と名付けられた黒色の翼猫(背中から鳥類のそれに似た翼の生えた猫。簡単な浮遊を可能とすること以外には基本的に猫と変わらない)。名前の由来は「肉球がもちもちだから」とのこと。また、稀に伝書翼竜としてカイトの元に資料云々を郵送しているのも彼女の使い魔である翼竜の「Nero / ネロ」である。
Kite@Butterさん (806ifrxb)2021/9/30 01:18削除
『銀と青色』

 天高く広がる青空と、そこに浮かぶ眩い太陽を、ところどころ真っ白な雲が遮る。
 郊外に建つ研究所の一角で、アシュレイ・アプリコッタは近くの椅子が引かれる音を耳にした。それに続くのは足音で、つまりそれは席を立ったということ。
 その人__カイト・クロス先輩は、わたしの席まで歩み寄っては、申し訳なさに眉を垂れさせる。そうしてわたしの顔を覗き込んでは、苦くも微笑みかけてくるのだ。

「ごめんね。後、任せちゃって」
「いえいえ、お構いなく。午後は大学ですか?」

 わたしの問いに「そうだよ」と頷いたかれ。そのかんばせから急激に苦味を薄れゆく様をじいと眺めてしまったせいで、どうにも気を使わせてしまったらしい。「どうしたの」だなんて首を傾げさせてしまったから、思わず「あ、あぁいや……」だなんて間の抜けた文字の羅列が唇を滑ってしまった。
 ひとつ息を吸って吐いて、それから咳払いを。気にかかるのは、いつも同じことばかり。

「どんな方なんですか? その、クラウディオ?先生って」

 あぁ、と、ひとつ。納得したような、と形容するのが一番正しいような声は、他にどう表すべきか、少なくともわたしは明確な答えを持っていない。
 すっと伸びた背に、仄かな影が消える。息を吸う音と、言葉を吐く音の間は、ほとんど存在していない。

「器用なのに不器用で、賢いのに頭が悪い奴だよ。向こうがその気になってくれたら、いつか紹介するね」
「……はい。いつか、ですね」

 締めくくりはいつもこう。この話を指折り数えて、気付いたらもう指が足りない。「俺の知る限りずっとああだよ」これはかれと同期である、レイズ・クランベリ先輩の言葉である。講師を始めるよりも前から、かれはふとした瞬間にその人について口を滑らすことがあったらしい。
 「一度は拳を向けられた相手に愚直に寄り添えるのは、よほどのお人好しかアホか。もしくは両方だ」とも。それに関してはもう笑って流すに他無かったのだけれど、実はわたしもそれには賛同である。本当にその通りだ。その関係がそこらにありふれる小説よりも鮮やかあおいろをしていなければ、ふつうは身体に残る痣など許せやしない。

 あまり良い出会いをしなかった。というのは、酔いにかまけてかれが零していたことだ。初めて会ったその日に、とんでもない剣幕で胸ぐらを掴まれた、と。かれは酔うと思考が止まる上に、そのことを綺麗さっぱり忘れ去るから、それ以上のことは聞けない。だから話の末尾はいつもこうだ。「もう嫌いにはなれない」と。

 忙しくなれば「ほんと許さないぜったい絞めてくる」などさも平然と口走り、けれどそれでも、大学講師を辞めようという選択肢は眼中にもないらしい。ふたつの職場を行ったり来たり。急くような生活を、寧ろ楽しんでいるようにも見えた。
 足音がすこしだけ遠のく。ほんの少しだけ。数値にしてしまえば、僅かに数メートルだけの距離だ。

 かれの晴れやかな面は、いつだって青空よりも澄み渡っていた。あの輝かしいぎんいろでなにを見てきたのかは、わたしには到底わからない。わからないけれど。

「行ってらっしゃいませ」

 去りゆく姿に手を振っていれば、振り返された手がやがて転移魔法によってこまやかな光の粒に移ろう。
 魔法陣の奥に消えていくかれの瞳は、ただ真っ直ぐに前だけを見据えていた。そんな気がしていた。
返信2
E
Episode@R4さん (80gnvfnc)2021/10/5 22:58 (No.5578)削除
【一つの終わり。或いは一つの始まり】


爽やかな甘い香り。金木犀の香りだ。
秋の香りがする。それを運ぶ風も冷たくなり、夏にあったあの貼りつくような湿度も消えて、乾いた薫風が窓から滑り込んでカーテンの裾をひらひらと靡かせた。ふと、窓の外を見てみると半袖の生徒は少なくて、学園の木々も徐々に色をつけ始めている。あの激動の夏が終わったのだとエピソードに言い聞かせるように、世界は表情を涼しげにして微笑んだ。
さて、エピソードは自室の荷物を纏めている。学園を去るべく、一つずつ荷物を丁寧に纏めていた。もちろんこの四年で荷物もいくらか増えた。例えば街で見つけた絶版の呪文書だったり、一目惚れして買った白のカーディガンだったり、使い道も不明瞭な魔術道具だったり。そんなものを取捨選択しながら自分の手で鞄に詰め込んでいく。実際こんな荷物を纏める作業なんて魔術を使えば、杖を振れば一発で自動進行して、あとは終わるのを待つだけでいいのだが、やっぱり最後だけは自分の手で、噛み締めながらやりたかった。
ふと、使わなくなった教科書をしまいこんでいた戸棚の奥から入学式の写真が出てきた。褪せた色味の写真の中には新入生が並んでいて、その端に写るエピソードは困ったように笑っている。
あの日。この学校に初めて来た日に撮った写真。新たな世界への期待に胸を膨らませる反面、自分の価値というものがこの場所で見つからなかったらという不安があったのを覚えている。毎夜、授業やその日の出来事を振り返りながら最後には自分の価値を、存在意義を考えていた。思春期特有の旬ものの考えだと割り切れれば良かったけど、そんなことができる歳ではないし、何よりも不安だった。不安に沈みながら眠り、授業を受け、また不安に沈みながら眠る。何度も繰り返したその先に答えがないことに気づいて、いつしか自分の本当の価値を知るのが怖くなっていた。
だからそれを考えなくて良いように学校では明るく振る舞おうと思って、そうしている内にそれが自分になっていた。明るくて、人懐っこくて、自由な、誰にでも優しいエピソードという役が自分になっていた。それはそれで楽しかったから別に悔やんでないが、もしかしたら違う自分がいたかもしれないとは思う。
まぁでも、この夏にはこの四年以上に色々なことがあった。最愛の少女とすれ違ったりしながらも一つ関係を深められたのは喜ぶべきことだ。小さな獣人の少女には可哀想な役目を押し付けたけど、今もがんばっているだろうか。初めての呪文学の補習では敬愛する教師から小さなアドバイスを貰った。怪談ツアーでは岩塩を顔面に受けたっけ。どうか、サーリスとレモンレディーの行く末に幸せがあらんことを。氏族長を担う予定の後輩からは朗読を教えてくれって頼まれた。結局ちゃんと教えられなかったし、何なら迷惑もかけた、ごめんな。ちっちゃい先輩と飴降らしの魔術をやってしこたま怒られもした。無人島では呪詛のせいとは言えよくないこともしたし、ビーチバレーに勤しんだこともある。それからは激動だったけど。
……自分に発現した魔眼が制御できなくて暴走し、色んな人物に迷惑をかけた。
だからと学園を去るわけではない。ただこれが考える要因にはなった。
狂っている間、戦っている間のことも覚えている。自分を救うために得体の知れぬ恐ろしい存在に立ち向かい、それに啖呵を切ってくれたみんなの姿は、どうしたって忘れることなどないだろう。
最愛の少女は壁に吹き飛ばされても尚、知力を巡らせて「返して」と言った。
風を纏う男は「出ていって貰おうか」と、その神速の一閃で斬れぬはずのものを斬った。
渡鴉の男は「その体で誰かを害するなど許せない」と叫び、一つの奇跡を起こした。
それから奇跡が奇跡を呼び、エピソードは改めて世界を見ることができた。
そして目覚めて、最愛の少女を探して走っているときに思った。
自分に生きる価値や存在意義など不必要だと。
そもそも、それぞれの人間に生きる価値なんてないし、存在意義だってありはしない。
だってそうだろう? じゃあ価値がある人間は何が起きても死なないのか。存在意義のある人間はそこにポンと突然生まれたのか。
答えは否だ。そんな超自然現象が発生するのならこの世界に種族の垣根などいらないし、他者だって必要ない。
価値がなければ必要ないのか。
意義がなければ必要ないのか。
そんなことはない。誰だってそこに立って、そこで生きていることが重要で、何よりもかけがえのないことなのだ。
価値と意義がなくとも、ただこれまで歩いてきた足跡とそれが織り成す関係図と、それぞれの宝物がきっとある。なくてもいい。何もなくても、いつか今の自分を、きっと未来の自分が認めてくれる。結局死ななければ、どうとでもなるのだ。
価値も意義もなくたって、生きていいのだ。
迷惑をかけた分際で言うと自分自身を正当化しているように見えるかもしれない。もちろんしたことに対しての後悔もある。
それでも、この写真の中で困ったように笑う幼き自分を見ると、今の自分は、価値も意義もわからなくても間違ってなかったと断言できる。まぁ分かっていれば、もう少しやりようはあったかもしれないが。……大体そんなものだ、人生は。過ぎ去ってから理想を求める。常に後悔の連続が襲いかかってくる。なのに苦しんで悔やんで悩んでいる間にも世界は回る。
だからエピソードはこの学校を去るのだ。どうせ過ぎて後悔をするのなら、今をやりたいように生きてやろうと。後悔をしても、今の自分のように、いつかの自分が間違ってなかったと言えるように。
「生きるのに、価値も意義もいらないよ」
それに、目がなくなって、もう一度目を取り戻して思ったことも理由だった。
「世界はこんなにも綺麗なんだから」
高き天空で輝く雲は濃い青を背中に受け、どこからともなく吹く風に形を変えていく。時に雨を、時に雷を、時に雪を降らしては恵みを与える。
広き地に立つ自然は色彩豊かな表情を見せる。それは木々の色付きであり、数多の花の咲く光景であり、降り積もる雪が作る銀世界でもあった。
深き海には無数の生命が神秘を抱えながら生きる。太古の化石すら泳ぎ、神秘は時として壮大な夢を見せた。漣は押しては返し、その深い青をきらきらと輝かせる。
そして数多の種族はこの世界を生きている。想いい、考え、言い、動き、戦いながら生きている。
この世界が美しくないわけがなかった。
体を撫でる秋風に一人呟いて、また荷物を整理する作業に戻る。
……それにしてもいらないものが多い。七九八〇円(税込み)で購入したエビの着ぐるみだったり、左足に岩塩が当たって骨折したときの足のギプス(何故かサーリスから『お大事にンッ』が書かれている。本物か?)だったり、これは……本気でアイドルになろうとしたときのステージ衣装か。……持っていこう。行き先でアイドルに勧誘されたときにすぐにステージに出られるのは重要だ。
あれもこれもと思い出があるものだから、中々荷物整理が捗ってくれない。とはいえそれはそれで思い出の振り返りになるから特に嫌でもない。
結局、荷物を纏めるのはその日の夜中までかかった。その頃には寮で点いている灯りはエピソードの部屋だけだった。



少し大きめのトランクを持って、学園の正門を出る。結局あれだけあった荷物のうち、持っていくのは全てこのトランクに入りきってしまった。寂しいような、ありがたいような複雑な気持ちだった。まぁどうしても持っていけないものは貸倉庫に送りつけたので大丈夫だろう。
街はまだ寝静まっており、歓楽街の声が遠くに聞こえるだけだ。朝焼けにはまだ早い。だがそれでも空の端は確かに白んで朝日が上ることを予感させる。
街を歩きながらこれからを想う。
とりあえずアストランティアを出たならまずはウェストニアに戻るつもりだ。一旦家族のもとに戻り、家族との関係と自分の心に区切りをつけてから、ウェストニアを一通り巡り、次は宛もなく世界を放浪したい。桜羅に行って工芸品に振れたり、アライヤに行ってしばらくバカンスもしたいし、シレッツにて聖なる信仰に触れるのも悪くない。ああそうだ、ウォール・ラベリナで人魚の文化を知るのもいいな。
色んな国に行きたい。色んな文化に触れたい。色んな人に会いたい。それら全ての経験は、きっと良いものも悪いものも、きっと今の自分なら大事なものになるはずだ。
自分が出会う全てに期待しながら、エピソードは翼竜船の駅舎に入った。駅舎の切符売場を抜けていくと、待合室と発着場へ向かう場所には時間帯が早いからか駅員はたった一人しかいなかった。
「切符を拝見します」
一人だけの痩せ老いた駅員が言う。エピソードが懐から取り出した事前発見の切符を見せると、皺の刻まれた顔から微笑みを見せて、軽い会釈をしてくれた。
「良い旅を」
「ありがとうございます」
エピソードも微笑みと礼を返して、駅舎の待合室に行く。
待合室はソファやセルフサービスのコーヒーなどの飲み物が用意されている。ただ早朝ということもあって待合室にいる人はエピソード以外にいなかった。こりゃあいい、こんな広い場所を独占できる。なんて考えながら、乗船までの時間を待つ。
これで、アストランティアとはしばらくおさらばか。そう思うとやはりエピソードにも感慨深いものがある。思い入れの強い場所ではあるし、名残惜しい部分も少なくはない。それこそ友人や恋人を残すわけだから、それを考えるとまだ残っていてもいいんじゃないか、と思う。
ただ。それ以上に、今は世界を見たかった。改めて得られたこの目で。例え、何を失くしても、後悔しても、それは間違いではなかったと言えると信じているから。
ああでも、無言で行くのも後味が悪いので──
──エピソードは懐から幾つかの折鶴を取り出した。色鮮やかな鶴たちを広げ、言葉を一つかけてやる。
「『ウインドサーフ』。みんなに届いてくれよー、頼むぜ」
浮遊の魔術をかけられた鶴たちは少しずつ明けていく空をぱたぱたと泳ぎ、ふわふわと頼りなくも魔術大学に向けて飛んでいく。それぞれの鶴には呪紋も刻んであるから、あとは宛先の人へ自動で届いてくれる。
きっとそれらを貰った人々が読む頃にはエピソードはアストランティアを出て、空の旅を満喫している最中だろう。
なので、これがエピソードからの最後の言葉だ。……とは言ってもポストカードとかが後々送られ来ることもあるので完全な最後ではないが。
さて。乗船の時間まで少し眠るとしよう。流石に用意に手間取って眠いんだ。


眠るエピソードを、折鶴は振り返ることもなく行く。

────────

黒い折鶴は一人の呪文学教師のもとへ届いた。
鶴を開いたならそこには文字があろう。
『Claudio・Serpent様

先生の授業、俺は大好きだったぜ。

Episode・Flowerdot』

────────

白い折鶴は優しき眼鏡の教師の机に置かれる。
鶴を開いたならそこには文字があろう。
『Kite Cross様

怒るならちゃんと怒れよなー!
あのときはごめんなさい。

Episode・Flowerdot』

────────

銀色の折鶴は鬼の教師の酒瓶の隣にあるだろう。
鶴を開いたならそこには文字があろう。

『紅梅雨様

無人島では悪かったな。

Episode・Flowerdot』

────────

黄色い折鶴はハープを奏でる人魚の頭に。
鶴を開いたならそこには文字があろう。
『Aoife・O'Toole様

朗読、褒めてくれてありがとう。
お菓子食べすぎるなよー!

Episode・Flowerdot』

────────

桃色の折鶴は小さな獣人の生徒に落ちる。
鶴を開いたならそこには文字があろう。
『Ermun=Coccidiasina Eimeriorina様

色々ごめんな。
でも、俺は元気だよ。
大丈夫だよ。

Episode・Flowerdot』

────────

紫色の折鶴は渡鴉の獣人の生徒へと。
鶴を開いたならそこには文字があろう。
『Sigurður "Hrafnnar" Sölvivsson様

①ちゃんと読み物を読み込んで自分なりに解釈する!
②その上で大事な部分は強調!大事な部分がいっぱいあるならゆっくりと!
③自分を信じて最後まで!

Episode・Flowerdot』

────────

水色の折鶴は空を飛ぶ生徒に舞い降りる。
鶴を開いたならそこには文字があろう。
『Visgar・Orphen様

戦ってくれてありがとう。
でも落ちるのは気をつけて!

Episode・Flowerdot』

────────

翡翠色の折鶴は小さな緑髪の生徒の肩へ。
鶴を開いたならそこには文字があろう。
『Geoffrey Gilbert Gideon様

パイセンとのビーチバレー楽しかったぜ!

Episode・Flowerdot』

────────

赤色の折鶴は竜と共にある生徒の隣に。
鶴を開いたならそこには文字があろう。
『Serena・Silvestri様

マドレーヌの作り方!
(レシピが事細かに書かれている)

Episode・Flowerdot』

────────

そして。最後の一つは、もちろん貴女へ。
『Tierne・Klingelrich様

貴女になにも言わず、この学園を去ることをお許しください。
そして、手紙で別れを告げることも、どうか。
俺は旅に出ます。自分が知らない物語に出会うために、知らない経験をするために、改めてこの目で世界を見るために。
これが、今の俺にはどうしても必要なのです。
ですが、俺は貴女を置いていく。それがどうしても心残りで仕方がない。
だから、卒業式の日に俺はもう一度ここに来ます。その時、まだ俺のことを好きでいてくれるなら、俺と一緒に行きましょう。
もしそうではないのなら、いくらでも罵ってください。いくらでも殴ってください。
もし新しい彼氏がいたなら、そいつを一発殴らせてください。全力のグーでいきます。
最愛の貴女への、今の俺からの最後のお願いです。
だからどうか、それまで元気でいてください。必ず、卒業式に行きます。
だから、必ず、そこにいてください。
貴女を愛しています。誰よりも。

Episode・Flowerdotより』

────────


空を下る。翼竜船は乗客が少ないからだろうか、思っていたよりも揺れなくて快適で、椅子のふかふかさにまたも眠くなりそうだ。
ふと、斜め上を見上げれば今まで自分がいた空中都市が落ちることもなくそこに座している。下から見るとやはりあの巨体が浮かんでいるのは中々壮観であるものだ。
風が吹く。秋の匂いがする風がゆるりと吹いて、エピソードの髪を靡かせた。
さあ、行こう。
俺ならきっと大丈夫だから。


「元気でなー!」


それでは。また会う日まで。
返信
返信0
K
Kiteさん (806ifrxb)2021/7/26 22:44 (No.3417)削除
掲示板開設おめでとうございます!
早速ですがイラストを、カイトです。参考までに!
返信
Kite@Butterさん (806ifrxb)2021/10/4 00:59削除
愛も変わらず後悔なんてない
Kite@Butterさん (806ifrxb)2021/8/27 22:07削除
クラウディオ先生お借りしました。
Kite@Butterさん (806ifrxb)2021/8/17 22:12削除
14歳くらいです
返信3
T
Tierne@A4さん (807p948r)2021/7/31 23:41 (No.3559)削除
Q...貴方はティアーネ・クリンゲルリッヒをどう思いますか?



「クリンゲルリッヒ先輩ですか?はい、知ってますよ。同じ寮ですし…。でも、あの人あんまりアースラントって感じしないんですよね………。体育苦手っておっしゃってましたし。」

「ティアーネさんすっごくいい人なんですよ!私が図書室で問題が分からなくて困ってたら近くで本を読んでらっしゃった先輩が助けてくださったんです。教えてもらったところびっくりするくらいスラスラ解けたんです!」

「え、誰?四年?確かに同学年だけど…。んー特に印象はないんだよなあ。確か真面目な生徒って感じだったような………。」

「あー、あいつかぁ……。ん?いや、悪いやつではないんだけど………。古代呪文学受けてるときのあいつ見たことある?いつも他の授業と比べてめっちゃ元気なんだよ………。ちょっと引くレベルで」

「あの子いっつもすごい真面目ちゃんなんだけどさぁ。古代呪文学の後?センセイのことわざわざ追いかけてまで聞きに行ってたんだよね。普通そこまでする?何かちょっと変な子だよねぇ。」

「あの子いつも腕も足も隠してるのよね。すっごく暑い日に「暑くないの?」って聞いたら「小さい頃から家にこもってたせいで太陽光に強くなくて…」って言ってたのよ。でも日焼け止めとか塗れば良いわよねぇ………。何かコンプレックスでもあるのかしら。」

「え?あー……あいつか。いやあ…オレ入学してすぐくらいの頃にあいつにちょっかいかけてさあ。好奇心でちょっとからかってみたんだけど怒りも泣きもしなかったんだよなあ。ずっと無表情で急にニコッとしたと思ったら逃げられて………。え?怖くね?」

「はい、クリンゲルリッヒさんですね。とてもいい生徒ですよ。授業態度もいいですし、提出物等もしっかりと出しています。ただ…興味があることのときはいつも以上に熱心で………いい生徒なんですよ?いい生徒なんですけどね………。」



A...彼女をよく知らない者たちは彼女を真面目な人と形容する。接点が少しでもある者の中で二年以下の下級生、または古代呪文学を選択していない生徒たちは彼女を優しい人、接しやすい人などと形容する。そして古代呪文学を選択しているものは彼女をよく言えば熱心。悪く言えば変人と形容する。基本的には接すれば接するほどよく分からなくなるし印象も定期的に微妙になる、ちょっとおかしな生徒なのである。まあ言い方によっては外面が良いとも言えるだろう。


ーーーーーーーーーーーーーーー
ビックウェーブに乗らせて頂きました。
ちょっと良く書きすぎたような気も………。
返信
T
Tierne@A4さん (807p948r)2021/10/1 02:53削除
添削などできていないのでおかしなところがあるかもしれませんが、ご容赦ください。
T
Tierne@A4さん (807p948r)2021/10/1 02:53削除
幼い頃の私にとっては、外の世界なんて殆ど本の中の空想と同じようなものだった。見れなくて、触れなくて、行ことができないなのだもの。同じでしょうと、そう思っていた。違う世界のことだと、そう思っていた。

外からの光の一切入らない無機質で暗い部屋、3人の侍女、そして母。それが14歳までの私にとって、世界の全てだった。



…………………………



朝、目を覚ますと目に入るのは真っ暗な天蓋。なんてことないいつも通りの視界。朝と言えども光が入り込むことはなく、地下にあると思われるこの部屋には鳥の囀りさえも聞こえない。覚醒しきってない頭でベットから降りる。裸足のまま、少しひんやりとした床を歩き2つあるうちの1つの扉を開けては、洗面所で身支度をする。『お嬢様。起きておられますか?』「起きてるよ。メイデン。」ガチャ、と鍵の開く音がしてから重そうな扉が開く。そちらへと歩いていけば天井に吊るされたランタンに日を灯す、背の低い女性の姿が見えた。『髪を結いましょうお嬢様。座ってくださいね。』「髪結いくらい自分でできるって言ってるじゃない、もう…」そう言いながらも部屋の中央にある椅子に座り、お行儀よく背筋を伸ばす。『これくらいしか私にはできないんです。させてください。』そう言ってその女性は何かの言葉を詠唱し始めた。

『『糸を紡ぎましょう。それは貴方を守るでしょう。糸を紡ぎましょう。それは貴方に祝福を与えるでしょう。糸を紡ぎましょう。それは貴方の肉体を守るでしょう。糸を紡ぎましょう。それは貴方を死から遠ざけるでしょう。糸を紡ぎましょう。私達のようにならないように。』』

最後に赤いリボンが結ばれて完成。いつも髪を結うときに唱えている詠唱。私へ三人が与えてくれる祝福。それは、


『ティアーネっ!起きていますかティアーネ!!』
よく響く、それほど高くない女の声。それが高らかなヒールの音と共にどんどん階段を降りては力を余らせて、思いっきり扉を開いた。『お、奥方様…』『そこをお退きなさい、』『ですが、まだ…』『いいから早く!』『は、はいっ』
目の前でされる会話を他人事のように眺める。叫ぶように命令されたメイデンが部屋の外へ出て、上の方へパタパタ上がる音が聞こえた。今日のお母様、随分気が立ってるのね。お母様の手にあるのは、今日は鞭のようだ。鞭は嫌だなあ。力のないお母様でも結構な威力が出るもの。お母様と、視線が交差する。椅子から降りて、お母様に背を向けて床に座り込んだ。

ヒュ!バチンッッッ!!!!!「ゔぁっっ!!!……あ、ゔ…っあぁ…ぁ……」背中が焼けるように痛くて、じわじわじわじわと痛むのがいつまで経っても途切れなくて、耐えきれなくなる。痛い。痛いなあ。鞭は目立たないけれどずっと痛いから嫌い。何をしていても痛む。失血も少なくて骨も背中くらいしか折れないから、動きには支障がなくて、嫌い。鞭では死ねない。殴られても死ねない。蹴られても死ねない。そもそも、私は簡単に死ねない。3人に与えられた祝福。それは祝福であり、呪いであった。傷つき、死にそうだった私のために3人がかけてくれた魔法。自殺と老衰以外で死ねないように、あの祝福はそんな呪い。


『お嬢様、大丈夫ですか?』「大丈夫よラック。メイデンも、心配しないで。」『お嬢様、せめて手当を…』「変に治したらだめよ?なにか冷やすものを頂戴」『はい!』私が床で蹲っている間にお母様は上に行ってしまったようだった。入れ代わり立ち代わりラックとメイデンが入ってくる。『お嬢様、何かしら食べなければなりません。何をご所望ですか?』「ありがとう、ラック。事前に準備してあるならそれでいいわ。」『わかりました。』そうして、運ばれてきた遅めの朝食を食べる。あんまり良い食材を得ることができないとラックは言っているけれど、ラックの料理は美味しいもの。その日を生きる糧を得られればいいだけの料理を美味しくしてくれただけで十分なのに。

『……………。』食事を終えて本を読んでいると、コツコツと言う音と扉の開く音がしてそちらを向いた。ぺこりとジベットがお辞儀をしてから部屋に入ってくる。「ジベット、お仕事持ってきてくれたの?ありがとう。」こく、と頷くジベット。「何処の国の言葉かしら……聖都シレッツのほうの方言ね。ありがとう。頑張るわね。」そう言って笑いかけると、ジベットは控えめに微笑んでから、礼をして、上へと帰っていった。

そうしてまた食事をして、歯を磨いて、お風呂に入って、眠る。そうしてまた、外の光の入らないそこで目を覚ますのだ。昔よりは良い生活をしていると思う。時々の暴力は辛いけれど、死ぬことはないし。翻訳の仕事があることで、自分でお金を稼げるし。最初は蝋燭だけだったこの部屋にも、ランタンがついたし。夢を見るのは諦めてきた。今日が昨日よりいいことだけを希望に生きてきた。そんな少女が外の世界への、別世界への切符を手に入れるのは、少しあとのお話。
T
Tierne@A4さん (807p948r)2021/10/1 02:52削除
Tierne's familiar
・父
ティアーネが7歳になる頃に亡くなった。頭がよく、商家を仕切るほどの優秀な人だったけれど、それと同時にとても愚かな人。
・義母
お母様。時期当主である体の弱い実の娘の障壁であるティアーネが邪魔。それでも人殺しはしたくない臆病な人。
・実母
お母さん。仕事は娼婦。ティアーネの実父が亡くなったタイミングで行方を眩ませた。実の娘を利用できるだけ利用して逃げた、残酷で賢い人。

・ジベット
ティアーネの仕事を仲介している。いつもは地上でティアーネの義母の仕事を手伝っている。口がきけない。
・ラック
ティアーネのために家事をしている。いつもは厨房で魔術を使って働いている。片腕が不自由。
・メイデン
ティアーネの肉体に魔術をかけ、またティアーネに魔術を教えている。一番ティアーネと一緒にいる。片脚が不自由。


Tierne's item
・靴
赤いヒール。入学が決まった頃に義母から贈られた(押し付けられた)靴。一定時間離れると追いかけてくる足かせのようなもの。持ち主を不幸な運命に連れこむ魔道具。
・羽ペン
小さな頃から使っている羽ペン。聞くところによると実母の出身地のものらしい。持ち主を殺した者を殺す呪いが込められている。まだ発動したことはない。
・本
ティアーネがずっと愛読していた一冊の本。メイデンによって、漏れ出したオドの逃げ場のなかった部屋から抽出されたティアーネの『負の感情』で作られた。本の魔法陣が正常に発動すれば、目の前の人物を精神だけ生まれ育った部屋の服製ようなところに閉じ込めることができる。因みにその複製部屋に光は一切ない。
・赤いリボン
侍女たち特製の大事なリボン。ティアーネが生きることを諦めない限り、このリボンがお守りになり、長年紡いできた祝福を固定する。このリボンと髪型によってティアーネは簡単には死なない。
返信3
E
Eve@後朝さん (80uxxixw)2021/10/1 01:52 (No.5419)削除
ぴかちう
返信
E
Eve@後朝さん (80uxxixw)2021/10/1 02:22削除
かぷかけこ
E
Eve@後朝さん (80uxxixw)2021/10/1 02:11削除
ぽけもん
返信2
T
Tierne@A4さん (807p948r)2021/10/1 01:59 (No.5422)削除
ピカチュウ
返信
返信0
alga@R1さん (81diij7m)2021/10/1 01:54 (No.5420)削除
制作時間一分
返信
alga@R1さん (81diij7m)2021/10/1 01:55削除
猫?
返信1
Serena@乖離さん (809e8ghh)2021/7/28 23:10 (No.3490)削除
Q…貴方はセレーナ・シルヴェストリをどう思っていますか?



「セレーナ?誰それ。ねぇー、セレーナって先輩誰か知ってるー?………知らないってさ」

「セレーナって、あのいつも小竜を連れてる人?さあ、よく知らないわ。あの人、いつも無表情で何考えてるか分かんないし、話し掛けても反応薄いのよね。悪い人では無いと思うけど、ノリは悪いかも」

「6年のシルヴェストリか。授業は真面目に聞いているよ。私の授業もそうだが、他の授業もきちんと聞いて内容も理解しているから、我々教師陣ではそれなりに好印象なのではないかな。実に模範的な生徒だろう」

「シルヴェストリィ?あぁ、あの防衛術を防衛として使わない奴でしょ……何って、前に騎竜に八つ当たりしてたら、あの女が防衛術で空気すら遮断する防護壁に閉じ込めたのよ!しかも私をそのままにして、のんびり竜の手当てし出したのよ!?お陰で窒息死するところだったわ!」

「どう思うなんて言われても……いや、噂程度に聞いた事はありますけど、全く知りませんし。え、同じ寮なんですか?」

「第一印象は綺麗で大人しい子、だったなぁ。あぁいや、同級生だからさ。1年の頃から知ってはいるけど、全然変わらないよ。変に儚げで、三年前にやっと顔を覚えたばかりなんだけど……いつも竜を第一に考えているし、僕らと居るより竜と居る方が断然楽しそうだ。でも、竜が関わらないと途端に無頓着だから、時折嫌がらせを受けていて心配になる……竜が関わると、凄いアグレッシブなんだけどね…(取材に答えた男子生徒は何故か遠い目をしていた)」

「せ、セレーナ…シルヴェストリ……!!?やめろ、アイツの名前を出すんじゃない!!悪い事は言わない、彼女には近付かない方がいい。周りの竜にもだ!……何があったって?嫌だ、思い出したくもない。ただ一つ言えるなら、彼女は正真正銘、竜の寵愛を受ける守護者だ。竜にも、彼女にも、手を出さない方がいい」

「先輩には、以前防衛術の相談に乗ってもらった事があります!先輩の防衛術、本当に硬くって……アレ壊せる人居るんですかね?」

「キュイ〜!キュキュエキュイキュイ、キュゥ〜!キュッキュッキュ〜!」

「こら、エウロス。室内で飛ぶなとあれほど……はい?はあ、取材…………それ、本人に聞きます?」



A...純粋に彼女を知らない者が七割、彼女の怒りを買った者が二割、何かしら世話になった者が一割といった結果だった。
基本、学校生活は大人しく過ごしているようで、授業態度は優等生とも言えるらしいが、竜の事となると途端に大胆な行動を取る。交友関係も広くは無く、一方的に彼女を知る者の方が多いようだ。
取材結果を鑑みるに話題になっていてもおかしくは無い筈だが……妙に存在感が薄く、平凡とは言えない容姿であった筈なのに、記憶にある姿が何故だか朧気である。


***
蛇輪様のQ&Aをお借りしました。
これは乗るべきものだと思って……
返信
Serena@乖離さん (808dko3x)2021/10/1 00:18削除
《其れは、過去に囚われた者の結末》



「…………あぁ、なんてこと」

“彼女”は嘆く。これではもう、アレは器としての意味を成さない。器が無ければ、“彼女”は愛しい彼を探す事も出来ない。会う事も出来ない。
“彼女”は絶望する。もう、これで最後のチャンスだったのに。最後の最後で、器が勝手な意思を持ってしまった。魂だけである“彼女”には、もう此方の言葉に耳を貸さない器に、何も出来やしない。

「ぁ…あぁ………そんな、そんな」

どうして、こうも上手くいかないのだろうか。
親に捨てられ、愛したものも殺され、人の戦争に巻き込まれ我が子と呼び愛した竜達も殺された。怒りに任せ人を殺し、哀しみに明け暮れ輪廻の禁呪まで使って、ただもう一度、“彼”に会えたらと願ってここまで来たのに。どうして、どうして、どうして__

器が叫んでいる。全力で、心から、それこそ魂の叫びとも言えるような声で。
恨めしい。私の最愛を殺した人間達と同類のくせに。私から全てを奪った奴等の同類のくせに。大人しくしていれば、今までのようにその体を私の物に出来たのに。
ああ、もうどうしようも無い。廻る事が出来るのは、10回まで。もう、廻れない。これで最後。

「ただ、会いたかっただけなのに……」

自分の名前すら忘れて、子供達の名前すら忘れても、ただ一つだけ“アレス”という愛しい黒竜の名だけは忘れなかった。アレスの姿と、アレスと生きた日々は、朧気でもまだ覚えている。楽しくて幸せだった、あの谷で過ごした日々。私はあの谷で、アレスと子供達が居れば、それで良かった。

「アレス……アレス……」

どれだけ呼んでも、いくら探しても、もう居ない事は、知っていた。けれど、もしかしたら、と。
悲しい、悔しい。もう何も出来ずに、ただ器の人生を眺めるだけの私には、もう過去を振り返る事しか出来ないのだ。あの時、もし私がアレスと共に戦地に出ていれば。もう少し私が、強ければ。そんな後悔が募るばかり。なんて虚しい。なんて寂しい。

「お願い、アレスに会わせて。お願いよ、セレーナ……」

震え混じりのその声は、きっともう届く事は無いのだろう。あの器に、Serena Silvestriには、もう私の声は聞こえない。

「あいたい…あいたいの、アレス……ぅ、あぁ……ぁああ……!」

どれだけ泣き喚こうと、もう私にこれ以上の未来は無かった。
Serena@乖離さん (808dko3x)2021/9/30 23:18削除
《其れは、己を見つけた者の結末》



とても、とても長い間、暗闇に堕ちていたように思う。私はきっと、何時まで経っても、どう足掻いても、ただの器であるのだと。そう思って、思い込んで、今まで生きてきた。けれど、きっと違ったのだろう。あの老竜が言った通り、私は“彼女”では無い。私は、ただの“私”であるのだ。

「嗚呼、愚かしい。結局、その認識さえ確固たるものであれば、私は私で在れたんだ」

渇いた笑い。内から湧き出るような、“違う”と私の考えを否定するような意思。それはきっと、この身に宿る“彼女”の魂の叫び。器は器であれと、喚いている。私は今まで、この声に従って生きてきた。でも_

「_残念ながら、もう、私が貴女に惑わされる事は無いでしょうね。やっと、あの時の竜の問いに、大声で、高らかに、自信を持って答える事が出来るもの」

群青の空を仰ぐ。あの老竜はもう、寿命で逝ってしまったけれど。最期まで私を気にかけてくれた、親に似た愛情を注いでくれたあの老竜へ。今こそ、あの問いの答えを返そう。

「私は器であるセレーナでも、魔女と恐れられた竜の母ディアナでも無い!ただの竜を愛する魔術師Serena Silvestri !!未練タラタラのメンヘラ女なんかクソ喰らえ!!私を見ない竜は嫌い!ついでに過去の器達の意気地無しぃ!!ばぁか!!全部、全部、求めれば良かったのよ!家族も、友人も、恋人も、願いも、未来も、全部!人として当たり前の人生を、個としての当たり前の権利を、私はずっと持っていた!!」

一通り叫び終えて、荒れた息を整える。普段ここまで大声を出す事は無い上に、興奮気味で少し体が熱い。俯けば視界に入る長い髪が、どうも鬱陶しかった。
……これももう、要らないか。

「……あー、もう。色々思い出したら腹立っちゃう。大体、たかが10回で見つからないわよ。世界どれだけ広いと思ってるの。馬鹿な女ね」

息が整えば、またポロポロと不満が零れ始める。約14年分の不満だ、きっとまだまだ出てくるだろう。けど流石に、そこまで長々と文句を言うのも疲れてしまう。だから今は、バッサリやってしまおう。短剣で切り落とせるのは、髪だけじゃないと思うから。
ついでにまぁ、心機一転という事で。

「さあ、帰ろう。エウロス」

ずっと、私を私として見ていてくれた家族へ手を伸ばす。その愛らしく小さな体躯は、嬉しそうに羽ばたいた。
Serena@乖離さん (808dko3x)2021/9/22 15:23削除
《セレーナ・シルヴェストリについて》



 セレーナ・シルヴェストリは、この身に巣食う執念の存在を知っている。
 己が“彼女”の生まれ変わりである事も、既に薄れている執念でも、“彼女”は虎視眈々と己の身体を狙っている事も。セレーナはよく知っている。それはいつの日か理解を得たものでは無く、幼い頃から本能的に理解していた事だった。自分の身に覚えの無い記憶や知識、出会う竜達でさえ、セレーナを“Serena Silvestri”として見る事は無く、出会う竜によって呼ばれる名前も異なった。

「ただその事実さえも、私には無縁のものの様に思えた」

 誰も、“Serena Silvestri”を見てくれない。それは確かに、哀しく、寂しく、虚しい事なのだと思う。けれどもセレーナには数多の人生の記憶の、その一部がある。故に、どうも、年齢にそぐわぬ落ち着きと人生観を持っていた。だからだろうか。セレーナは初めて水竜と会ったその時から、既に己が“Serena Silvestri”で在る事を諦めているのだ。そして同時に、唯一己が“Serena Silvestri”である証の両親を失ってしまっている。だから、その後のセレーナは、きっと“Serena Silvestri”では無かったのだろう。

 仔竜を拾った。“彼女”の意志をなぞるように。
 竜を愛した。彼等がこの魂を愛し、“彼女”が愛していたから。
 竜を傷付ける者を嫌った。それは紛れもない“彼女”の憎悪だった。

「不思議。私、こんなに空っぽだったのね」

 セレーナが空である事は、“彼女”には好都合だ。いずれその時が来たら、きっと“彼女”がその身を得るのだから。
 けれど、ある時出会った老竜は言った。

「憐れな子。お前はお前以外の、何者でも無いんだよ」

 _であれば、一体どうすれば良かったと言うのか。
 幼くして両親を亡くし、ろくな生き方も分からないまま各国を転々として、時には奴隷として売られた事もあった。幼い身体目当てに近付く者も、暴力を振るう者も居た。そして何時だって、そんな人達から救ってくれたのは、セレーナを“彼女”として慕う竜達だった。
 全ての竜がそうという訳では無い。“彼女”の事すら知らない竜も、老竜のようにセレーナを“Serena Silvestri”として見てくれる竜も片手で足りる数だが居た。だがそれでも、セレーナを庇護する竜達が愛しているのは、“Serena Silvestri”では無く“彼女”だったのだ。求められているのは“Serena Silvestri”では無く、“彼女”だったのだ。

 セレーナは叫んだ。“彼女”に身体を渡すのは本意じゃない。セレーナ自身、何も好きでこんな生き方をしているわけじゃない。好きで己を捨てた訳じゃない。嘗て両親が愛してくれた“Serena Silvestri”を、出来るならば捨てたくは無い。けれど、己は確かに無力なのだ。竜が居なければ、今生きていない。己とて人間、死にたくは無いのだから。

 それに、“彼女”を模したのが始まりとはいえ、彼等を、竜を愛していない訳じゃないのだ。

「でも貴方達はただの一度として私の名を問わなかった!呼ばれるのは身に覚えが無くとも聞き覚えのある名前ばかり!私は私であると訴えても、哀れなものを見るような目を向けたのは貴方達!……それでも私は、貴方達が愛おしかった。例え“彼女”の影響だとしても、確かに私は竜を愛した。だから、貴方達の望むように、“彼女”の望むように…私は……私は……」

 ならば、と老竜に名を問われた。

 もう、答えられなかった。



「捨てるの?」

 桃色髪の幼い少女が問う。
 だって、生きるにはこうしないと。弱いものはすぐに死んでしまう。今までの“彼女達”のように。

「じゃあ、貴女はだぁれ?」

 沈黙。

「貴女はだぁれ?」

 静寂。

「あなたは、だぁれ?」

 無音。

「ねぇ、だぁれ?」
「……セレーナ・シルヴェストリ」

桃色髪の幼い少女はその答えを聞いて、苦しげに泣き出していた。
Serena@乖離さん (809e8ghh)2021/8/7 14:02削除
《竜と生贄の少女》


それは遠い昔、勇者様が魔王を倒すよりも前のお話。

とある村の外れには、それは深い谷があり、谷の奥底には一匹の黒竜が住んでいました。黒竜の翼はとても大きく、その身体は硬く艶のある鱗で覆われ、剣も槍も弾くほど強靭です。
そんな黒竜は、村に住む人々を護る代わりに、度々村に生贄を求めていました。


「生贄を、生贄を。新たなる供物を、我に捧げよ。此度の供物は、若い人の子が良い」


黒竜の言葉に、村の者は青ざめます。今までは村の家畜で満足していた筈の黒竜が、突然人を求め始めたのですから、それはもう大騒ぎでした。


「年寄りばかりのこの村で、若い者など限られている。どうしよう、どうするべきだ。生贄を捧げなければ、この村は竜に滅ぼされてしまうかもしれない」


村人達は長い間じっくりと考え、そうして結局、親を亡くし身寄りの無かった少女を生贄に捧げる事にしたのです。
黒竜は生贄の少女を谷の底へ連れ去り、その身を喰らって……

…しまうかに思われました。けれども黒竜は、何故か生贄の少女に出来うる限りのおもてなしをし始めたのです。


「腹は減っていないか?村人の貢ぎ物を食べると良い」

「体は平気か?人の子に治癒魔法は効くのか?」

「退屈か?散歩にでも行くか?咥えて連れてってやろう」


妙に的外れな気遣いばかりするおかしな黒竜に、生贄の少女は大笑い。一頻り笑った後に、少女はそっと黒竜の顔へと手を伸ばし、優しく撫でて言いました。


「可愛い子。食べられてしまうのかと思っていたけれど、寂しかっただけかしら」


黒竜はフイ、とそっぽを向きます。図星でした。少女の言う通り、黒竜はただ寂しかったのです。ただ、少しだけで良いから、人と触れ合ってみたかった。そんな黒竜の心を読み取った生贄の少女は、それからはずっと黒竜と共に谷の底で暮らしました。谷に住む他の竜と戯れたり、時折訪れる旅人と話をしたりしながら、ずっとずっと、仲睦まじく。

けれども、生贄の少女が綺麗な女性になった頃、突如村が魔族と魔物の大軍に襲われしまいます。村を守護する黒竜は、古き盟約により、その命をもって、村を護らなくてはいけません。然し、村へ駆け付けようとする黒竜を、彼女は必死に止めます。


「いくら貴方でも、死んでしまうわ。お願い、行かないで」

「いいや、行かなくては。大丈夫、必ず戻ると約束するよ。愛しい人の子」


黒竜の言葉に、彼女は悲しげな顔をして、それでもそっと、引き止めていた手を離しました。黒竜は彼女に一度顔を擦り寄せて、谷から飛び立ちます。村を救う為、再び彼女の元へ帰る為。

黒竜が去ってから、とても長い時間が経ちました。谷の底で帰りを待つ彼女の周りには、慰めるように谷に住む竜達が寄り添って居ます。
未だに、黒竜は帰って来ません。

更に長い時間が経ちました。夜を何度越えたでしょう。まだ、黒竜は帰って来ません。このまま帰って来ないままなのだろうか、黒竜は無事なのだろうか。そんな考えばかりが頭を過ぎります。けれど、ついに居ても立っても居られず、谷を出ようとした時でした。
不意に頭上を影が覆い、翼の羽ばたく音が聞こえました。見上げれば、そこには彼女の愛した黒竜が、ボロボロな体で帰って来ていたのです。


「ああ、ああ。良かった、生きていた。ちゃんと約束を守ってくれたのね」

「勿論だとも。ただいま、可愛い人の子」

「ええ、おかえりなさい。私の愛しい竜」


黒竜の帰還に、谷に住む竜達も大喜び。その日は谷の住民全員で楽しくお祭り騒ぎです。村も護られ、黒竜によって脅威は退けられ、そうしてやっと取り戻した平和。戦いは終わったのです。
彼女と黒竜は、今まで通りその平和を謳歌し、今度こそずっと仲睦まじく、幸せに幸せに暮らしました。

め でた し、 め で  た







びり、と紙が破られた音が響く。
それは童話の本だった。

破られたページには、真っ黒な体躯に赤い瞳の竜と、薄桃色の髪に金色の瞳の少女が描かれていた。けれど、ページはそんな竜と少女を引き裂くように破かれている。


「めでたし、めでたし。これで、ハッピーエンド。竜と少女は何時までも仲良く、何時までも共に、何時までも何時までも何時までも何時までも」


彼女は語る。そのハッピーエンドを嘲笑う。


「子供向けだものね。ええ、そりゃハッピーエンドでしょうね。幸せが一番だもの」


彼女は嗤う。その喜劇を糾弾する。


「現実なんて、そんな甘く無いのよ。ええ、そう。黒竜は帰らなかった。だって、待ちくたびれた少女が谷から出て真っ先に目にしたのは、黒竜の亡骸だったのだから。彼は、帰ろうとして、帰れずに力尽きてしまったのよ」


彼女は喚く。そして事実を否定した。


「彼が居ない?死んでしまった?もう会えない?嫌よ、そんなもの私は信じたくない!だって、彼が言っていたんだもの。“魂は廻るものだ”と。だからきっと、またいつかは会えると、そう信じて……」


彼女は巡る。唯一を求め続けて只管に。


「私の愛した黒竜。私の大事な大事なアレス。ただ貴方に会いたくて、貴方を愛したくて」


彼女はめぐる。廻る。廻って、廻って、廻って廻って廻って廻って廻って廻って廻って廻って


「アレス、アレス。何処に居るの?お願い、返事をして。私を見つけて。私を呼んで……もう、“最初”の名前も覚えていない。どうしてこんな事を続けるのかも、何も。もう、貴方の名前しか……探さなきゃ…アレス」


そうして未だ、彼女は廻る。それは、誰に知られる事も無かった少女の話。都合の良い捏造に隠れた、今尚続く彼らの話。
少女は未だ、歩いた道にポロポロと記憶を落としながら、黒竜を探し続けている。


_いつまで?_
返信4
v
visgarさん (808ucuvw)2021/7/30 22:23 (No.3525)削除
Q…貴方はヴィズガル・オーフェンをどう思いますか?



「勇気と無謀をはき違えた馬鹿。そのうち死ぬんじゃないの?」

「ちょっと話した限りはその、普通というか、まともな人なんですけど、学園の屋根から飛び立ったのを見た時は正気を疑いましたね。」

「ヴィズガル……誰……?え、あぁあの羽生やして飛んでる人のこと?たまに空飛んでるのを見はするけど……あ、ほらあそこ、墜落してる。」

「風の魔法以外はロクに扱えん阿呆か。それにしては成績は悪くないんだがな、少々ケガによる欠席が目立ちすぎている。」

「「箒に乗れば飛べるんじゃないの?」って聞いたことがあるけど「ロマンがない」って返されたことがあるよ、うん。自分の力で飛ぶことにしか興味のない真正の馬鹿なんだろうね」

「アイツゥ……?一回戦ったことあるけど、飛び上がったと思ったら刀を振り下ろしながら降ってきたり、よくわからない三次元軌道で魔法避けてきたりしやがったなぁ……魔法使いの戦い方じゃねぇんだよなぁ、アレ。じゃぁ何だって聞かれると、答えに困るんだがよ。」

「あの人人間なの?竜人とかじゃなくて?」

「多分一番の顔馴染みですね。何せ1週間に二回は医務室に来るので。怪我の回数はもっと多いって言ってましたけど。……え?死なないかどうか心配じゃないのかって?ハハハ、1年目で死にかけて医務室に運ばれてきた後1か月位で完治したあたりで杞憂だと分かりましたね。」

「ロクに魔法を飛ばせないからって自分が吹っ飛んでくとか馬鹿のやることだろって笑ってたらローブの端の方ぶった切られたことあるぜ、事故だったらしいが。俺ァあいつに近づくのをやめたね。次は首が飛びかねねぇ。」

「技術力は光るものがあると思うんですけどねー、なんであれを減速に使わないのかは不思議ですねー。使えば事故も減るのに。まぁでも多分、使わないのは多分加速にしか興味がない馬鹿だからだと思いますよ。」




A…多くの人が「空を飛んでいる人間」という答えを返し、名前を知らなかった人達も、空を飛んでいる人間であるという説明をすると「見たことはある」と返した。
一部の関わりのある人々の意見は基本的に「馬鹿」で統一されており、その愚直とも呼べる向こう見ずな飛翔を一同に指しているようだ。



蛇輪様のQ&Aをお借りさせていただきました!
大体こんな感じなんじゃないかなぁと。
返信
v
visgarさん (808ucuvw)2021/9/30 02:20削除
──ずっと、空を飛ぶのが夢だった。いや、目標だったのかもしれない、或いは自分が達成すべき課題でもあったのかもしれないが。
地上より一万メートル離れたこの地であったとしても、空を飛ぶものは少ない。もとより背中に携えた翼のある竜人や、鳥などの獣人、竜にまたがって飛ぶ者はいれども、人の力、魔法の力だけで飛ぼうとするものはほとんどいない。

そもそもが空を飛行するには魔力がかかりすぎる。そんなことをして高速で移動するくらいならば走った方がマシだし、魔法陣等の用意を用いれば転移魔術であっても実現可能だ。何よりも魔法使いは箒に乗って空を飛べる。
それでも俺が空を飛ぶことを、ただ己の背に携えた風の翼をもって飛ぶことを夢に見たのは、竜への憧れからか、それとも自分の体に住む者からきた帰巣本能か。何れにしても俺は空を駆けることを、空を羽ばたくことを夢想し、恐怖を振り切り死を顧みずに幾度となく飛び立った。

だがその行く末は、きっと見なくても分かることだ。人は本来空など飛べない。たとえ翼があっても、それが永劫続くわけでもないのだからたどり着く先は地面だ。だから本当に空を飛びたいならばやり方を変える必要があった。
幸いなことにそれを為すための要素はほとんどがクリアされていた。ある種の先祖返りを引き起こすことによる肉体の変化を用いて自分の内に住む竜と相容れないそれを無理やり出ない方法を以て共存させる。

だれよりも一番、何よりも自分が理解していたことだ。

「人は人のままで空を飛ぶことなんて出来ない。」

自分にできる範疇の、ありとあらゆる方法は模索した。その努力の上で出した結論を、天空に浮かぶ島から見下ろす、綺麗な青の海に向かってひとり呟く。
風は良好。天候も変わりそうにはない。後は一歩勇気をもって踏み出すだけだ。地上から空に向けての一歩を。空中に向けての一歩を。人から外れるための一歩を。

『目覚めよ/call』

僅か一節に込めた思いは、一言では語りつくすことが出来ないようで、その実一言で完結してしまうような、万感を込めては居れどきわめて単純な、そんな矛盾だ。
夢がかなうのだという嬉しさが、達成感がある。踏み出せば最後最早戻れぬのだという僅かな悲しみが未練の様な何かがある。

竜の瞳は淡く緑に光り、ゆっくりと鞘から引き抜いた竜骨の刀も、共鳴するがごとく、刻まれた魔法陣には魔力が、光がともっていく。
踏み出せば戻れない、だが今なら戻れる。止めてしまっても、逃げてしまってもきっとよかったのだ。夢は夢だと割り切って、諦めて、それで───。

「結局まだ、子供のままだ。」

苦笑いを、一つ。ため息とともに目を伏せて、少しばかり物思いにふけってしまうのは許してほしい。
そうだ、今でも俺はきっと子供のままだ。何も知らない無知で純粋なあの頃描いた夢のかけらを、こりもせずずっと追いかけ続ける。諦めて割り切ってしまうことは苦手ではない。執念深いわけでもなければ、多大なる熱量を以て何かを成し遂げられるわけではない。

それでも心にずっと残った。切り捨てることは容易だったのに、ずっと大切に持ち続けた。だから。

「たとえその先に何があるか分かっていても。止まったりはしない。」

瞼を開ける。差し込む日の光は少しばかり強いようで、どこか優しい。さぁ、風が吹き始めた。もう行くべきだと背を押す風に、少しだけ感謝しながら、右手に持つ刀をいつかと同じように、いつかと同じ場所へと突き刺す。
痛みが奔る。けれど鮮血は走らない。されど竜骨の刀から溢れ出る赤い光が自分の体を満たしていって、どうしようもない程に肉体そのものを変えていく。

竜を殺すために竜の力を取り込んだという、自分の遠い先祖の英雄譚。その時もこんな感じだったのだろうかと、ゆっくりと回る思考の内で問うてみる。
あっという間に変わってしまった肉体は、表面上は何の問題もないように見えて、その実ひしひしと痛みがする。けれど動けない程ではない。

だから、前へ。前へ。ただひたすらに動けとそう念じる。一歩踏み出せと、地より離れて空へと、前へと。
肉体の変動によってもたらされたもう一つの変化。己の根底でありながら己のすべてを為すそれさえもが変わって、変わったからこそ多分、空へと受け入れられるんだろう。

「風を追う竜/ウィブガルズ」

ついぞ一度もその名前を口にしたことはなかったのだと思いながらに、腹に刺さる刀の銘を、何よりも、自分は目にしたことはないが自分が焦がれた竜の名前を、ただ一度そこに表し示す。
風が巻く。ゆっくりと動く体を覆うようにして、自分の内から外に出ていくオドがすべて風へと書き換わり、それらは竜の形を成す。俺は彼の風の竜を見たことはない、だからこれはウィブガルズではなくてヴィズガルなのだろうけど。

肉体を中核に、胴が解かれる、腕が、足が、首が、尾が。頭が作られて、それで最後に、失って久しい、けれど大きさはずいぶんと変わった竜の翼が風によって展開する。
けれどもそれは肉体への負荷をも意味する。ひび割れるような音が幾度か響く。けれどもう、五感はそれを認識してはいない。

あぁ、7、8m程度はあるだろうか。いまだに両足を空に浮かぶこの島については居れど、すでに翼は羽ばたき始め、辺りの風はそれを感じ取るように振動している。
ゆっくりと首を上げて、空を眺める。青い空はどこまでも、悠久の彼方から変わらずに広がっていて、それにどこか安堵を覚えた。

あぁ、もう飛び立つ時だ。大きく翼をはためかせれば、その体はたやすく宙に浮かび、徐々に徐々に、地面から距離を離していく。
しばしの間浮かんでいたが、きっともう飛べると、大丈夫だと分かったのだろう。


人より離れた風追いし竜は、大いなる空へと、果てを飲み込む蒼へと、飛び立つ。
v
visgarさん (808ucuvw)2021/8/26 02:10
想像よりソロルが長くなったので上げどころを見失いました。



「聖より落ちるは7から6へ。生より下るは13より6へ。死より出でたるは4より6へ。聖者は獣に、獣は骸に。左方より来たれよ竜の骨手。」(平常保ちてつらつらと詠唱を並べ立て、右手に握りしめた竜の爪の骨を真正面に掲げれば、爪に刻んだ魔法陣が白き光を放ち始めれば、転輪するようにして爪が宙に浮き──。)「ッ」(爆裂音と眩い閃光を伴えば、何かが落下したような音を区切りに閃光は失せ、爪は地面に力なく転がっていた。大きなため息を一つ、誰もいないこの場に寝転がり一言。)「やっぱ風の魔法じゃないと駄目かぁ……。」(落胆でもないが、やや残念そうにそう呟けば、左手で落下した竜の爪を手に取り、それをそのまま天に翳そう。眩しすぎるくらいの日差しを遮って視界に映るその爪は、お守りにでもと実家から送られてきたものだ。おそらく刀の元となった竜の物であろうそれを媒体として、何か魔術の一つでもできないかと試行錯誤を行いはじめてはや数日。その集大成ともいえる結果がこれである。やはり自分は風の魔術以外はまともに扱えないらしいなと、再度ため息を吐く。けれどもまだどうすればいいか考えている自分に、どうにもあきらめが悪いのも生来の性だなと苦笑いを一つ。心持ちそのままに起き上がれば、今度は無理に試すのではなく、失敗の原因を探ることとした。)「オドの量に関してはおそらく足りているし、魔法陣を刻んでいる時点で詠唱は補助程度に、つまりは直接的な原因にはならない。疑似的な召喚魔法じみているのが悪いか……?そうなると足りないのは……媒体……?」(だが竜をベースに魔術を組むのなら、竜の遺骨などこれ以上ないほどの媒体のはずだ。いや、媒体の質は良くてもこちらの技量が足りていないならば意味はない。技量は一朝一夕で飛ぶように向上したりはしないのだから、後は媒体の質を──。)「……あぁ、そうか、此処にあるか。」(一人でに呟いたその様子を、他の誰かが見ていればきっとひどく不気味に映るだろう。虚ろなままに呟き、無感情に軽く微笑を作り上げる。無意識に、無感動に。思考は無く、思索は無く。確証はなく、保証もない。ただ体が動いたという理由だけで俺はその爪を───。)「痛え」(深く己に突き立てた。靄のかかったような意識は居たい身によってわずかに晴れるものの、それでも何が起きたのかを正確に把握しきっていない。ゆっくりと爪と手の行く先を見据えれば、爪は当然ながら深く腹の部分に食い込んでおり、其処から血も流れ出している。──いや、流れ出してはいる、流れ出してはいるのだが、肝心の血は服にもつかず地面に落ちず、ただ吸い込まれるように竜の爪の骨に吸い込まれていく。首と目は動けと蛇にでも睨まれたように動かない体は、引き抜くことも動いて医務室に向かおうとすることも許しはしない。もはや自分の意思では動いていないかのように、脳裏に不意によぎった言葉を、口は勝手に読み上げる。)《ネロカ・オーソ・パルマ》(ぐしゃりと嫌な音が響いて、僅かに加速した痛みに顔をしかめて。耐えかねるように崩れて倒れたその後の、記憶はない。
v
visgarさん (808ucuvw)2021/8/8 12:54削除
《空に掛ける思い》

この学校で過ごした3年間という月日を通して、学べたことは無数にある。魔法、魔法史、世界史、錬金術。それ以外にも様々な授業と、常に刺激の絶えないこの学校では、実に多くの情報を得ることだろう。
だが、俺が何よりも、ひどく深く痛感したのはただ一つ。空を駆け、風に乗り、竜を追うという夢物語を実践するにおいて、どうあがいても直面する問題点。すなわちそれは──。

……『人は空を飛ぶことに向いている生き物ではない』、という至極単純で、すべての枷となる問題だ。


「場所よし、天気よし。」

校舎の屋根の上から眺めるは、まだ夕方というには早く、天に浮かびて輝く星が頂点近くをさまよう様子と、人の往来激しい街の様子。

空の色は真っ青で、それもそのはず、この学校はどうにも地上から一万メートル離れた場所にあるらしく、つまりは雲の上、ということになる。偶に大きな雲に突っ込んでは大雨が来ることもあるが、それでも普段は気持ちがよすぎるくらいの晴天だ。

空に思いをはせるのはここ等へんで止めにして、校舎の上までわざわざ上ってきた目的を果たすべきなのだろう。早打つ心臓を鎮めるように大きく息を吸い込んで吐き、死へと向かう覚悟を決める。

背中から突き出るように、或いは食い破るようにと出は一対の翼。翼竜の持つそれに近く、髪色と同じ薄いエメラルドグリーンに光り輝いており、僅かな風が翼全体を覆っているようにも見えるそれを、ひとたび羽ばたかせる。

続いて刀の柄だけを握り、刀身に刻んだ魔法陣を用いて、身体能力の強化をなし、初速をつけるための風を、足元に待機させておこう。

正直この高さから飛ぶのは初めての試みで、実をいうとちょっと怖い。何せあえなく頭から墜落でもしてみれば容易く命が失われるだろう。

それでも飛ぶ、それでも踏み出す。全てはあの日心に抱いた憧憬が故に。空の景色を、ただ眺めるだけではなくその身で駆けるために。


「……フゥ……そろそろ行こうか。」


覚悟を決め、屋根についていた足を一歩空へと踏み出す。本来であればそのまま落ちていくだけの足が、しかしながら事前に待機させておいた風を踏み込み、その風を開放することで、体は翼なくとも宙へと躍り出る。

さぁ、此処からは翼の出番だ。大きく一度翼を羽ばたかせれば、体は瞬く間に加速する。かかる圧力も、落ちた時の被害も、何一つ考慮されていない正真正銘の全速力。

加速はそのままに、風をつかみ、それをかき分けるようにして強く雄々しく羽ばたいていく。その速度はさらに上乗せされて、視界の端に島の端が捉えられるといったところだ。

順調に、快速に、空を駆けていた。が、自分の魔法はいまだ未熟。長時間の飛行を可能とするほど、この翼は便利なものではない。

急激に翼を覆っていた風が消え、翼は光と輝きを失っていく。だが翼の展開自体は効力が切れても可能で、風をつかめば問題はない、と踏んでいたのだが。


「あっ」


驚くほど間抜けな声が出て、しかし状況は最悪の方向に転んだ。翼は先の方から形を失って行き、1秒と足らずに影も形もなかったように消え去った。

──あぁ、翼を失ったイカロスの結末は、誰もが知るところだろう。唯の人は元来、そして本来空を飛べる生き物ではない。魔法からなる外部機関を経て飛行能力を得ていただけであり、本質、生物の肉体から翼が生えていたわけではない。

だが、たとえ翼を失ったとしても、それまでの加速力は微塵も失われない。それどころか重力にひかれることによって、更にその加速は増していく。

まぁ、これが並みの魔術師であれば、成程水で受け止めるだとか、地面を柔らかくして被害を減らすだとか、解決方法はいくらだって見つかっただろう。それが魔法使いというものだ。

だがしかし、自分にまともに扱えるのは風の魔法だけだ。空を飛ぶための最適手段であると考えてからは、人一倍多くの修練をつんだと思っている。思っているのだが。

自分はまだ1年生。怪物もひしめくこの学校では、ひよっこもひよっこだ。そこまで高等な魔術も魔法も扱えず、この速度で落下する物体を受け止めるのは不可能だ。

打つ手なし。この速度の落下であれば、最早詰みにも等しいだろう。もはや走馬灯を浮かべる時間すらなく、地面との接触が間近に迫る。

せめてもの抵抗をと、体を翻し、頭からの直撃を避けるような形、背中の部分が最初に接触するようにして、俺は地面と痛烈なハグを経験した。

なおこの時の痛みは、痛みが神経に届くよりも先に気絶したらしく、記憶の中にはない。



俺が目を覚ましたのは墜落事故の半月後だった。全身複雑骨折レベルでヤバかったらしいが、何とか致命傷は避け、魔法による治癒である程度は回復したんだとか。

何をしたのかと、医務室の先生に問い詰められたが、この時の俺は正直体を動かすどころか瞬きで精いっぱいだったので、答えることは出来なかったのだけれど。

そこから1週間たってどうにか動けなくもないレベルにまで回復。最低限の授業に出つつ、リハビリと治療の日々を過ごしたのは今でも思い出に残っている。治癒魔法の痛みとか。

体質、なのか、それとも別の何かなのかは知らないが、そもそも半月で意識を取り戻したのが驚異的であったらしく、事故から1か月後には完治して、自由に体を動かせるようになった。

それでも大事を取ってそこから一か月はロクな運動もさせてもらえなかったのだが、当然の処置だろうなと今であれば思い返せる。


アレが始まりでアレが最初。多分あの事故がなかったら、あの事故を経験して生き延びていなかったら。俺は等の昔に死んでいるんだろうなと、医務室で治療を受けるたびに思う。

医務室の先生には感謝と謝罪の意しか表明できない。迷惑をかけ続け命を救われ続けたまさに命の恩人だ。

俺が飛ぶのをやめれば怪我も年に数回で済むのだろう。そんなことは物理的にも痛いほどわかってきているし、感じている。

でも俺は飛ぶことをやめない。何年経とうと、大人になっても、その夢だけは消えない、と思いたい。

何時か俺は、あの空を自由に、飛び回れる日が来るのだろうか。
返信3
E
Episode@R4さん (80gnvfnc)2021/9/27 03:55 (No.5332)削除
「ちまちますんのも面倒だ、世界ごと終わらせよう」

「んー!視たことないものを視るためには多少の犠牲もつきものだよなあ?」

名前:Foreigner(暫定)
読み:フォーリナー
種族:
『魔眼の悪魔』
人が認識する魔眼というイメージそのもののことであり、種族というにはあまりにも曖昧なものである。
加えてエピソードに憑いているのはその一部の因子であるため『本来の概念』には程遠く、現在までの中で本当ならば出会うはずのない感情などに出会う。それゆえに概念というよりも、エピソードの中で育った『オリジナルの悪魔』に近い。


年齢:0歳
性別:体は男であるが、精神には性別がない。

性格:自由。己を試すため世界に牙を剥く。またエピソードの体内で成長したこともあり、どことなくエピソードの言動がみられることもある。

容姿:
基本的にはエピソードの容姿であるが、双眸は白目や黒目がなく青紫になっている。また魔眼は虹彩が安定せず、常に流動している液体のようにも見えるだろう。
ヴィズガル戦を経て、両手と首の近くにも魔眼が生まれたため、全方位を見ることが可能となった。(9/26追記)

服装:
病衣。

固有スキル:
『魔眼』
エピソードの中で成長した因子が生んだ4つの固有能力。両目とも同種の魔眼ならば出力はあがり、片目ずつならば隙のない状態にできる。またそれぞれの魔眼になる場合、目の色が変化する。

①歪曲(わいきょく)
視界に入ったものを歪ませ、ねじ曲げる魔眼。またこの能力は見えないものを曲げられず、概念的なものには干渉できない。尚且つ、物体が大きくなればなるほど直視する時間が長くなる。変化する目の色は、紫。

②吸収(きゅうしゅう)
魔術を吸収し、自身のオドに変換する魔眼。魔術であればありとあらゆるものを吸収可能であるが、固有スキルは吸収できない。これによって吸収した魔力をオドに変換して傷などに流すことで急速治癒も可能とする。変化する目の色は、緑。

③圧力(あつりょく)
視認した物体に不可視の力をかける魔眼。複雑な力のかけ方はできないものの、弾き飛ばす、押さえつけるなどの単純な力であれば強力な威力で行うことができる。変化する目の色は、赤。

④投射(とうしゃ)
オドを爆炎や雷電、斬撃や打撃などといった攻撃特性をもつ呪的紋様に変換し、魔眼に刻印。その上で魔眼の出力のリミッターを外して、魔眼を使い潰す形で凄まじい威力の魔術を放つ魔眼。いわば使い捨て魔眼。変化する目の色は、黄金。

⑤呪詛(じゅそ)
見た相手の部位に呪いをかける魔眼。呪いの内容はいたってシンプルであり、ただその部位に激痛が走って使い物にならなくなるというもの。激痛を乗り越えれば使えるだろうが、それには相当な精神力も必要。変化する目の色は、黒。(9/26追記)

⑥真剣(しんけん)
見たいものを見る魔眼。例え何に阻まれようとそれを見ることができる魔眼。変化する目の色は、白。(9/26追記)



保有スキル:
『略式詠唱』
呪文の詠唱を簡略化することができる。

『高速詠唱』
呪文の詠唱を高速で行うことができる。

『生命力吸収』
魔力を消費して自分以外の生物から生命力を吸い取り、治癒力を上げる。接近して手を翳す等でも微量に吸えるが、しっかりとした効果を発揮するには接触が必要。合意の有無によって吸収量が変わる。

魔術媒体:
『チョーカー』
黒い革に銀の『文字のような装飾』が施されたもの。魔力を込めることで喉への軽い治癒効果が得られる。

武器:
保健室からくすねたメス。

来歴:
エルムンとの出来事の直後、エピソードは突如としてその場から消える。一時的に自身に瞬間移動に近い魔法をかけたのだが、それは突発的にやるには不完全すぎた。エピソードは数時間ほど『空間の狭間』を彷徨い、果たして『魔眼の概念』と目があったことによって魔眼の因子が付着する。そして因子はエピソードの記憶と固有スキルに触れ、実感する。
『知らない』
ということに、まだ見ぬ場所があり、まだ見ぬ人がおり、まだ見ぬ世界がある。それが因子を駆り立て、思考を得る。
『おれは、見てみたい』
まだ知らないものを。
エピソードの記憶や感情や魔力などを見ながら成長する。その過程でエピソードの目に歪曲の魔眼が発現。しかしエピソードの体がその強い出力に耐えきれず、眼球ごと魔眼は自壊し、エピソードは視力を永久に失う。
かに思われた。だがエピソードに付着したのは『概念の因子』であり、それは例え目がなくなろうと失われることのない概念なのだ。魔眼は視界を失いつつも、更に、精神の安定しないエピソードの中で成長したこともあり歪んだものではあるが『人格』を得る。
『見たい。新しいものを。誰も見たことがないものを』
そして。
『誰も知らない。世界の終わりを、俺は見たい』

備考:
身体能力はエピソードのそれである。ということは肉弾戦には滅法弱く、またスタミナについてもそれほど多くはないだろう。
ただし魔眼は決して失われず、何度潰されても再生する。彼の魔眼を完全に消失させるには彼から魔眼の因子──現在は魔眼の悪魔を取り外さなければならないが、それは叶うのだろうか。



【対処法】(9/26追記)
・エピソードの体を乗っ取っていたりするため、かなりエピソードに依存しているため、エピソードを殺すことで魔眼の因子は消失する。

・別の魔眼で切り離す。

・一度フォーリナーを気絶させ、拘束したあとに儀式などでエピソードのイメージ空間に入り、因子(悪魔)を直接叩く。
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G
Geoffrey Gilbert Gideonさん (80a9lie1)2021/9/26 11:23 (No.5312)削除
寝起きジェフリー
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alga@R1さん (81diij7m)2021/9/25 01:25 (No.5288)削除
新容姿の経緯

…ふふっ…あはは!!!遂に!遂に!!完成した!!やっと…これで脱出が出来る!!(自室で何やらそんな事を言っているその足元にはグツグツと音を立て、形容し難い謎の液体が入っていた、色は真緑色で到底人が口にしても良いか疑うが、材料は本に載っていた植物と少女が入れても大丈夫だろうと判断した材料が入っている。決して毒と言うべきものは入っていな筈だがどう見ても毒のようにしか見えない。
さて、この少女が何故こんなにも狂気じみた事をしたのかを簡単に話そうか、答えは単純で少女は自身の身長を伸ばそうとし、自作で身長薬なる物を作り出そうとしたらしい、。少女は小鍋に入っているものをコップに移した後にそれを見ながら「この薬を飲めば…"チビ"から脱出する事が出来る筈!!いただきまーす」そう言って彼女はそれを飲み込んだ。その直後に「…マッズイ!!イギャァア!!」そう言ってあまりの苦さと辛味が口全体に広がった事でその場でのたうち回る、自作の薬と言ってもただ単に植物をすり潰し、煮込んだけだから当たり前の結果といえよう。さて、地獄のような苦さと辛さを味わった後に鏡の前に立ってみようか。少女は呆然とした顔で「貴女だ、誰ですか?!いや、待って…鏡だから写ってるのはわわ私…なの??え…」以前の少女とは異なる姿であった。髪は翡翠に変わり、毛先もクリーム色に変わっていて何より、瞳の色が青色ではなく、緋色に変わっていた。だが、彼女は嬉しそうに笑って「確実に…身長が伸びてる…!やったー!成功だ!!」そんな事を言った。自身の容姿よりも身長の方が少女にとっては大事だったらしい。はてさて、全く異なった姿の少女を誰か分かる人物は出てくるのだろうか?
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alga@R1さん (81diij7m)2021/9/2 21:32 (No.4442)削除
Q…貴方はアルガ・マリーノをどう思いますか?

「ア、アルガ・マリーノだぁ〜あ??誰なんだよ、そいつ?…お、思い出したぜ!そうだな〜確か…彼奴は昼休みの時に俺が廊下を歩いてたら突然壁から出てきた彼奴だ!!あ?あいつのことをどう思うかだ?俺にとっちゃあ嫌いな奴だよ!何かと廊下で固有スキルで誰か待ち伏せしては驚いた顔の写真を集めているやっべぇ奴だって噂話で聞くだろ?んな奴と関わった所でいい事なんかなーんもねぇんだよ!ってか、別の噂によると彼奴、疫病神やら幽霊なんじゃねぇのかって言う話聞いたことあるぞ」

「ん〜アルガちゃんの事ね〜私、その子とクラス同じなんだけどね?ん〜世間知らずというか、天然ボケがすぎるという所があるから少し話が通じなさそうなのよねぇ…あの子。いやまぁ、悪い子では無いと思うのよ?明るいし、可愛らしいからね?でも、女子からは余り好かれているイメージはないわね……その理由がお胸のサイズで僻まれている事が原因らしいのよ…後、他の子は起きてるのに一人だけ授業中に居眠りしてた事があるし、何かと失敗を良くしてるからかもしれないわね〜」

「あぁ、アルガの事?ん〜気さくで明るい奴って事は分かったけど?あ〜1回話したことあんだけどな?よーく聞いてみるとな?ぜってぇこっちの方じゃない言語を話し始めたりしたし、アイツの声は高くて大きいから話す時には気をつけろよ〜ケケッ!」

「あの子の事ですか?んー噂によると一緒に居ると不幸になるとか言われてるね〜疫病神だっけ?しかも、あの子ってヒョウモンダコの魚人族だったよね?それに毒持ちで猛毒が体内にあるとか…自分から痛い目には会いたくないから近付かないね。」

「アルガちゃんはね〜話せば話すほど面白い子だと私は思うよ〜其れに、力持ちだしね〜まぁ、世間知らずな所はあるとは思うけど」

A…知らない人からは、噂話で何故か悪評の方が多く固有スキルのせいなのか、幽霊やら存在自体が覚えられていない事と、体型で一部の女子から不人気である事が
仲が良い人物によりと彼女は気さくで明るい学園長天然ボケしていて、世間知らず過ぎるのか、失敗続きで疫病神とまで言われているようです。
これを見たアルガの言葉
「いやまぁ、確かにそんな感じの話は聞いた事あったけども…色々と酷いぃー!!私、毒持ちですけど、私の毒は強くない方ですよ?他にも強いひと結構居たし…あと、居眠りをしたのは三回だけですぅーもう寝てませんから!!あと私は、幽霊じゃなくて魚人族ですよ!確かに固有スキルで姿消せますけども!悪戯してる事実は本当だし、驚いた人の反応を見て面白ーいと思っていますけど…ね?写真を撮っている事実はありませぇーん!!というかぁ…疫病神呼ばわりはいくら何でも酷いでしょうガァア!!」
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
どうも、中の人こと海藻です。
今回、アルガちゃんのA&Qを作ってみました。ほぼお巫山戯です笑
見て楽しんで貰えれば幸いです。
返信
alga@R1さん (81diij7m)2021/9/24 02:23削除
こんな感じの髪と水着を着させたい
2021/9/2 00:15
alga@R1さん (81diij7m)2021/9/24 02:22削除
ヴィラン化したアルガちゃん
「どう?新しい私は!あはは!!」
Picrewの「뒤를 보는 픽크루」でつくったよ!
返信2
E
Eve@後朝さん (80uxxixw)2021/9/16 23:05 (No.4944)削除
いろいろ!
返信
E
Eve@後朝さん (80uxxixw)2021/9/23 23:11削除
上手くなったのでは……?
返信1
A
Aoife@細波さん (80hyllyt)2021/8/3 23:02 (No.3636)削除
Q…あなたはAoife・O'Tooleをどう思いますか?


「物腰の柔らかい子だよね。喋り方も丁寧で、私は結構すきかもな。いつも優しいし、笑顔だし。」

「動物言語が達者らしいね。この前、中庭で小鳥と話してるのを見たよ。楽しそうにしてたなあ。」

「魚人族ってみんな歌ったり、楽器弾いたりするのが上手なのかなぁ。エーファちゃんも上手だよね。」
「あー、空き教室とか、寮とかでよくハープ弾いてるよね。人が近くにいるのに気がつくとすぐやめちゃうけど。恥ずかしがり屋なのかな?」

「あーはいはい。エーファ・オトゥールね。おれ一年の時にたまに話してたんだけど、アイツまじで馬鹿だよな。読み書きもまともにできねえの。そんなんでよく入学出来たよな。」

「購買で焼き菓子いっぱい買ってるよね。甘いものが好きなのかなって思って、チョコレートあげたらすごい喜んでくれたよ。」

「あの子、すんごいよく食べるよね。いつも二、三人前くらいぺろっといってる感じ。小柄なあの身体のどこに入っていくんだろう。」

「オトゥールか。実技は悪くないんだが、座学の成績が芳しくないな。意欲はあるように見えるし、今後に期待だな。」

「僕はちょっと彼女が苦手。だっていっつも笑ってるし、どんな酷いことをされてもみんなに親切なんだもん。それって本心?みたいな……。なんか薄気味悪くない?」

「エーファって魚人族なんでしょ?人魚の姿、見てみたいなあ。可愛いし、きっと人魚になっても素敵なんだろうなぁ。見せてくれないかなぁ。」

「彼女、飛行術が本当の本当に致命的にダメだよね。この前なんて箒に片足引っ掛けて逆さにぶら下がって、“誰か助けて……。”ってプルプル震えてたんだよ?普通、そうはならなくない?ならないよね?」


A…穏やかな表情と物腰の柔らかさのお陰で、多くの人に悪くない印象を与えている。
  一部の生徒には敬遠されているようだが、全ての人に好かれる人間などこの世には存在しない。別におかしなことではないだろう。
返信
A
Aoife@細波さん (82eo446q)2021/9/21 01:05削除
遠い東の国に“死児の齢を数う”という諺があるらしい。

なんとなく興味を持ち、本で調べてみたところ、過ぎて取り返しのつかない物事を悔やむことの例えとして用いられるらしかった。
その言葉の意味を初めて知った時、私は「東の国の人々は上手いことを言うものだなあ」と酷く感心したのを覚えている。それこそ息を吐き、思わず天を仰ぐ程度には。
──初めて姉を失ってから十数年、ひとりぼっちになってから数年。
毎晩、彼女らの、或いは彼らのことを思い、その齢を指折り数える行為は私の習慣として生活に染みつき、すっかり切り離させないものになっていた。
少女は唇を薄く開き、つぶやいてみる。

「……死児の齢を数う。」

全ては過ぎたことだった。彼らの時はそこで打ち止め、動き出すことはない。
だというのに何故。ベッドに潜り込み、天井を見上げながら指を折り畳むこの儀式めいた習慣を繰り返すのか。
……そうして少女は濃く影が立ち込める机の下に視線を投げた。
暗く揺らぐそれは今日も、少女を誘うように静かに佇んでいる。

「私、夢をみてるの。」

ぽつり、少女は歌うように呟く。
結んでいた指を空気を撫でるように、そっと開いて“そちら”へと差し出してみせた。
そう、夢をみている。ずっと瞼を開けながら、覚めることのない夢を見ている。
“夢?”声がする。私はウン、と頷き返した。

「みんながいる夢。私、なんで“こんなの”見続けているんだろう。」

“どうしてだろう。” ”なんでだろう。”
「私もわからない、変なの。」

もしかしたらこれが後悔の“形”というものだったりするのだろうか。ふと、私は思った。
そうして目を伏せ、暫く考えを巡らせて、そして思考を打ち切るように首をゆるゆると横に振る。
結局今日も、何もかもわからないままだ。

───夢を見ている。

指に触れた熱を撫でながら、私は影に視線を向けた。
光の揺らぐ海を切り取ったような双眸に、光を帯びると赤く揺らぐ黒髪。そしてまるで腕利きの職人があつらえたような揃いの顔立ち。

ここまで何もかも同じならば、私たち、初めから
「───……みんなで一つだったら良かったのにね。」

あなたたちの全てが、私だったらきっと、こんな夢を見続けることもなかっただろうから。
影に身体を預けて、今日も私は目を瞑る。みんなは楽しげに笑い声をあげた。

"うん、うん。"
"そうだね、そうだよ”。

───今日も覚めることのない、夢を見ている。
返信1
E
Eve@後朝さん (80uxxixw)2021/9/16 22:48 (No.4941)削除
可愛い動物です。
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C
Claudio@蛇輪さん (806nji0q)2021/9/1 23:58 (No.4415)削除
キャラのイメージCVを教えてください!!!(土下座)
返信
A
Acatuyu@十字さん (81d7nool)2021/9/15 22:17削除
紅梅雨のCVは『金/田/朋/子』様です。
alga@R1さん (81diij7m)2021/9/4 22:17削除
『小原好美』様です。
G
Geoffrey Gilbert Gideonさん (80a9lie1)2021/9/4 05:34削除
「子安武人」様
Rickard@ラウミルさん (80oubmkr)2021/9/2 01:21削除
リキャルド/「津Ⅰ田Ⅰ健Ⅰ次Ⅰ郎」様
????/「高Ⅰ橋Ⅰ英Ⅰ則」様
adsgald@サブレさん (81nhs2s1)2021/9/2 00:38削除
アズガルド・パスのCVは「浜/田/賢/二」様です。
k
Claudio@蛇輪さん (806nji0q)2021/9/2 00:03削除
クラウディオ・サーペントのイメージCVは「真/殿/光/昭」様です
返信6